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「尹大統領まで乗り出したことで収拾つかなくなった」…反中感情に便乗との指摘も

登録:2023-06-14 06:39 修正:2024-05-08 07:49
尹錫悦大統領が13日、ソウル龍山の大統領室で国務会議を主宰している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の対外政策を公に批判した中国のケイ海明駐韓大使の発言をめぐり、韓中政府が連日激しい言葉の応酬を繰り返す中、13日には尹大統領が直接乗り出した。両国の外交当局や政界における攻防を越え、最高指導者まで一国の大使に狙いを定めた発言を行ったことで、両国の対立がさらに深まっている。

 中国大使に向けられた尹大統領の発言は、同日午前、ソウル龍山(ヨンサン)大統領室にて非公開で行われた国務会議で、懸案について話し合う過程で出たという。尹大統領は「両国関係は相互尊重と友好増進、共同利益の追求という大原則に基づき行われてきた。しかし、駐韓中国大使の不適切な言動に国民がかなり不快感を覚えている」と述べた。ケイ海明大使が8日、野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表を大使官邸に招待した席で「中国の敗北に賭ける人々は後で必ず後悔するだろう」とし、尹錫悦政権の米国傾倒政策を批判したことに向けられた発言だ。

 尹大統領はまた、「ケイ海明大使を『袁世凱』と評する人が多い。大使に会うために、韓国の企業家たちが先を争って大使との面会を希望しているという」としたうえで、「しかし(8日の)そのような発言は適切ではなかった」と語ったと出席者たちが伝えた。尹大統領は「国民のプライド」や相互主義、相互尊重原則などを強調し、このように述べたと言う。清の袁世凱は壬午軍乱(朝鮮王朝の閔氏政権とそれを支えた日本に対する兵士の反乱)の時、軍隊を率いて朝鮮に駐在し内政干渉を行った人物だが、尹大統領はケイ大使を袁世凱に喩える巷評を取り上げたのだ。

 大統領室は、中国大使が駐在国の野党代表に会い、駐在国政府を露骨かつ公に批判したことに非常に激昂しているようだ。大統領室関係者はハンギョレに対し「どのような大使も自分が駐在する国の政府に対してこんなふうには言えない」とし、「隠喩や比喩でもなく、露骨な発言で(駐在国の)国益と主権を侵害しており、大統領はそれが主権にかかわる内容であるため言及した」と述べた。

 外交界では、高圧的な発言をした中国大使を外交部が9日に「呼び出し」、中国も10日、「召見(呼び出して会う)」に比べてレベルの低い「約見(前もって約束してから会う)」で対抗したのは、互いに一線を越えないための措置だったとみている。

 しかし、尹大統領がその一線を越え、直接駐韓大使を批判したことについて、専門家たちは「ふさわしくもなく、両国関係の悪化を招くだけ」だと指摘した。慶南大学極東問題研究所のイ・サンマン教授は、「大統領がケイ大使について直接発言したことで、収拾がつかなくなった」とし、「中国はこれから明らかに批判的な言及をするだろう」と見通した。中国が反発のレベルを上げる理由をつくったということだ。

 尹大統領が外交を国内政治のように扱っているという指摘もある。チェ・ジョンゴン元外交部第1次官は、「このような事案は、通常次官レベルで話し合いながら外交的に幕引きを図るのが一般的だ。大統領まで乗り出して発言するのは『過ぎたるは及ばざるがごとし』だ」とし、「与党まで乗り出して『好ましからざる人物(ペルソナ・ノン・グラタ)』について言及するのは国内政治のため」だと指摘した。韓国国内の反中感情に便乗しようとする態度だということだ。

 与党の「国民の力」からケイ大使をペルソナ・ノン・グラタに指定すべきだという声があがるのも危険だという指摘が多い。相手国の大使をペルソナ・ノン・グラタに指定することは、事実上両国関係の破綻を意味するからだ。ウィーン条約が発効した1971年以降、駐韓外交団をペルソナ・ノン・グラタに指定した事例は1件のみ。1998年、韓国とロシアが互いの外交官の追放した事件だ。当時、ロシアは韓国大使館に勤める韓国側外交官がロシアの情報を持ち出そうとしたとして、韓国外交官を追放した。これに対抗し、韓国も韓国在住のロシア外交官を追放しており、ロシアはさらに反発を強め韓国外交官5人を追放した。

シン・ヒョンチョル、キム・ミナ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1095815.html韓国語原文入力:2023-06-14 01:14
訳H.J

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