尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の国政支持率がまたしても下落している。韓国ギャラップの調査では、5月第3週の37%から6月第1週目には35%に下落。2週間連続で1ポイントの下落だ。6月第2週のリアルメーターの調査も38.3%で、2週連続の下落。両調査とも、与党「国民の力」の支持率も下落している(詳細内容は中央選挙世論調査審議委員会のウェブサイト参照)。
このところの下落は、野党「共に民主党」に悪材料が相次いだ中で起きているというのが特徴だ。民主党革新委員長の辞任、ケイ海明駐韓中国大使の舌禍などがあったにもかかわらず、与党は反射利益を享受するどころか支持率がさらに下がった。相手側の失策による反射利益を享受できていないというのは、これまで野党に対する批判の定番素材だったが、境遇が入れ替わったかたちだ。それだけ大統領の国政遂行、与党の態度に対する国民の不満が絶対的に高まっていることを物語っている。「野党もイマイチだが、政府与党はもっと嫌いだ」という国民が増えているのだ。
なぜだろうか。韓国ギャラップ(6月第1週)の調査を見ると、国政遂行を「支持しない」理由としては「外交」(29%)、「経済/民生/物価」、「独断的/一方的」、「日本との関係/福島第一原発の汚染水放出問題」(以上8%)、「経験・資質不足/無能さ」、「コミュニケーション不足」(以上5%)、「全般的に誤っている」(3%)などがあがっている。無能と独断が全体を貫くキーワードと言える。
実は、これは昨日今日にはじまった問題ではない。尹錫悦政権の発足前も、尹大統領の国政ビジョン、能力、コミュニケーションの意志には常に疑問符がついていた。大統領候補時代には「福島第一原発は爆発したのではないため、放射能流出は基本的になかった」と述べ、無知だとの評価を受けた。「週120時間であろうとしっかり働け」だとか「持たざる人は不正食品よりも質が低くても安く食べられるようにしなければならない」のような暴言を乱発する発言によって、一般国民の暮らしに対する無神経さをあらわにした。
就任後は無能やコミュニケーション不在に加え、怠惰だとの認識も深めた。昨年6月20日には出勤途上での略式会見で「全世界的な景気低迷が懸念されるが、対策はあるのか」と問われ、次のように答えた。「さあ。これに根本的に対処する方法はない」。「民生物価を抑えるために努力している」と付け加えはしたものの、大統領としての責任意識のみられない安易な対応そのものだった。
何よりもインパクトが大きかったのは、昨年8月8日。100年ぶりの豪雨がソウルを襲ったにもかかわらず、知ったことではないとでも言うように定時退勤したことだ。江南(カンナム)駅が浸水し、新林洞(シルリムドン)の半地下で一家が死亡した日だ。国民をなおいっそう当惑させたのは、翌日に新林洞の惨事現場を訪れた尹大統領が発した、まさに次の言葉だった。「(昨日)退勤途中に見たところ他の複数のアパートですでに浸水が始まっていた」。アパートが水に浸かるのを自らの目で見ていたにもかかわらず、車を戻さずに帰宅したということを、何の申し訳なさも恥ずかしさも感じることなく武勇談のように言い放ったのだ。大統領室のカン・スンギュ市民社会首席秘書官は、それに対する問題提起に次のように答えた。「雨が降っているからといって大統領が退勤してはいけないのか」。この時、国政支持率は底を突き抜けて20%台に落ちた。
「福島第一原発の汚染水」を扱う政権の今の態度は、これらすべての問題点を集約的にあらわにしている。リサーチビューが環境運動連合の委託を受けて先月19日から22日にかけて行った調査によれば、国民の85.4%が汚染水の海洋放出に反対している。汚染水が放出された時の水産物消費に対する意向を問うと、「減るだろう」という答えが72%だった。7日には、福島沖で獲れたクロソイから基準値の180倍のセシウムが検出されたと発表されている。他でもない東京電力による発表だ。
にもかかわらず、政権の態度は一貫している。国民の力の「韓国の海を守る検証タスクフォース」のソン・イルチョン委員長は「セシウムは水より重い。下に沈む。韓国の海に来る可能性はない」と一蹴した。南と北の間には休戦ラインがあるが、海には何の境界線もない。福島の海流が1~4年の間に韓国沿海にやって来るというのは科学だ。
このような現実を前にしても、政権はひたすら「怪談」、「処罰」などと言っている。ハン・ドクス首相は12日の「国会対政府質問」で、汚染水放出を懸念する声について「度を越した虚偽事実流布などで水産業従事者が被害を受けるケースが発生すれば、司法当局が適切な措置を取るだろう」と語った。口のきき方に気をつけなければただではおかないという脅しだ。国民生活の問題には関心もなく無能極まりないにもかかわらず、批判勢力を捕えることにはたけている「検察政権」の弾圧という本性をあらわにしたのだ。このような人々であふれているというのが現政権の不幸であり、国の大きな不運だ。
ソン・ウォンジェ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )