ケイ海明駐韓中国大使が8日夕方、野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表を大使官邸に招待した席で「米国が全力で中国を圧迫する状況の中で、一部では米国が勝利し中国が敗北するという賭けをしている」とし、「中国の敗北に賭ける人々は後で必ず後悔するだろう」と述べた。ケイ大使は「韓国が中国との関係を扱う際、外部要素の妨害から抜け出すことを望んでいる」と述べ、自身の発言が韓国を狙ったものであることを明確にした。
ケイ大使の発言は、まず米国に偏った尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の外交行動に対して強い不満を示したものとみられる。外交官が自国の国益の観点から相手国の政府に対し立場を明らかにするのはあり得ることだ。しかし、実際の交渉の場でもなく、公の場で発言をする際には守らなければならない線がある。今回の発言は公の発言としては異例といえるほど高圧的だ。韓国が中国側に立たなければ報復するという脅しに聞こえる。福島原発汚染水問題に対する両国の協力案を話し合うために官邸を訪れた野党代表をそばに座らせ、10分以上にわたり一方的に駐在国政府を糾弾したのも外交慣例に反する。駐在国政府に言いたいことがあれば、まず外交チャンネルを通じて直接緊密に議論すべきだ。大きな欠礼と言わざるを得ない。このような態度は、尹錫悦政権の外交政策に批判的な韓国国民からも反感を買う恐れがある。当該国の国民と良好な関係を維持すべき大使が、むしろ善隣友好関係を損ねた格好だ。そのため、同日のケイ大使の発言は(韓国政府に向けたものというより)習近平国家主席に見せるためのものではないかと思えるほどだ。
イ代表も外交行動にはより緻密で慎重なアプローチが必要だという点を認識しなければならない。国会で多数党の代表として活発な外交協議を拒む理由はない。特に福島原発汚染水に対して与党が日本の立場に同調しているため、野党が国益のために韓中協力に乗り出す必要があったかもしれない。しかし、野党代表が一国の大使官邸を直接訪れたのは格が合わない。今のような敏感な局面ではなおさらだ。特に、これを党のユーチューブチャンネルで生中継したのは、外交を政治的に活用しようとしたという批判を免れない。大国を相手にする外交であればあるほど、プロトコル(外交儀礼)に基づいて形式も内容もきちんと整えなければならない。
国民の力も「バックダンサー」(キム・ギヒョン代表)や「中華事大主義」(シン・ウォンシク議員)などの発言で、野党に対する攻勢に外交を巻き込むことはやめるべきだ。与野党いずれも外交を国内政治に活用しようとする考えは、そもそも捨てなければならない。国益と国格を最優先にして冷徹にアプローチしてほしい。