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[社説]「ひたすら米国」掲げた尹大統領の国賓訪米、リスクへの対策考えるべき

登録:2023-05-01 06:26 修正:2023-05-08 00:40
27日、米ワシントンDCの議事堂で尹錫悦大統領が米上院・下院合同演説を行っている間、出席者たちが立ち上がって拍手を送っている=ワシントン/聯合ニュース

 30日に帰国した尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の5泊7日の米国国賓訪問は、韓国外交を米国と一体化させた舞台だった。朝鮮戦争参戦勇士記念碑の訪問から始まり、ハーバード大学での演説で終わった訪米の間、「韓米価値観同盟」をグローバル同盟に拡張するというメッセージを重ねて強調した。尹大統領の一方的な外交路線は、米国と対立する朝中ロが韓国を圧迫する安保リスクをむしろ増大させた。

 尹大統領は今回の訪米の最大の成果として「韓国型拡大抑止」案を盛り込んだ韓米の「ワシントン宣言」を掲げている。韓米首脳は「核協議グループ」(NCG)を新設し、米国の拡大抑止計画を共有・議論するとともに、戦略原子力潜水艦(SSBN)など米国の戦略兵器を定例的に朝鮮半島に展開する一方、韓国が独自の核兵器開発を行わないことで合意した。韓米が北朝鮮の核問題の悪化に対応し、拡大抑止の強化措置を文書化したのは以前より進展した内容だが、今回の措置の実効性については議論が続いている。韓米が「事実上の核共有」をすることになったというキム・テヒョ国家安保室第1次長の発言に対し、エドガー・ケーガン米国家安保会議(NSC)上級部長は「事実上の核共有とは考えていない」と直接的に反論し、韓米間の隔たりが露呈した。

 朝鮮半島における米戦略原子力潜水艦の展開について、中国は事実上自国を狙ったものと判断し、北朝鮮も核武力増強の口実にする可能性が高い。北朝鮮は29日、キム・ヨジョン労働党副部長の談話を通じて「ワシントン宣言」を非難し、「より決定的な行動に移るべき環境」が作られたとして、挑発を予告した。尹大統領は「安保」の強化に訪米の焦点を合わせたが、「強対強」の対峙で安保状況がむしろ不安になった側面がある。

 訪米期間中、尹大統領は「韓米同盟は利害に応じてくっついたり離れたりする便宜的契約関係ではなく、自由民主主義という普遍的価値に基づいた『価値観同盟』」だとし、韓米同盟を絶対化した。米国と対立する中国を狙ったメッセージも随所で明らかになった。ロシアと戦争中のウクライナに対する政治・安保・人道・経済的支援に言及し、中国が敏感に反応する台湾問題も繰り返し取り上げた。韓米首脳宣言の台湾に関する表現と関連し、中国外交部が27日に駐中韓国大使館公使を呼んで抗議するなど、韓中関係に危険信号が灯っている。尹大統領は中ロとの関係でリスクを管理する案は全く示さず、「米国への全賭け」を突き進めている。

 今回の訪米を通じて必ず解決しなければならない課題に挙げられた経済分野では、具体的な成果が見られない。米国にきちんと要求したのかさえも分からない。韓国政府は「インフレ抑制法」(IRA)と半導体関連協議に対しても「韓国企業の負担と不確実性を減らす方向で明確に合意した」という発言ばかりを繰り返している。韓国経済が四面楚歌に置かれているのに、大統領は経済も「アメリカファースト」に同調しただけではないのか。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1089984.html韓国語原文入力: 2023-05-01 02:08
訳H.J

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