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[寄稿]拡大する新しい戦争の脅威

登録:2021-11-22 06:37 修正:2021-11-28 07:30

 「新たな軍事紛争の脅威が高まっている」

 最近、ニューヨーク・タイムズ紙のアントン・トロヤノフスキー記者が警告した。心配する必要はない。朝鮮半島の話ではないから。かと言って、ほっとするのはまだ早い。朝鮮半島の話でもあるから。

 トロヤノフスキーが注目した地域は欧州だ。彼は記事で、バルト海から黒海に至る広大な欧州で、ロシアと西欧の競争が激しくなっており、これは新たな軍事的衝突の火種になりかねないと警告した。彼が注目したのはロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「好戦的」な動きだ。

 トロヤノフスキーによると、ロシアはウクライナ周辺に「不気味に」軍事力を増大させている。最近、ロシアがウクライナと隣接した西南部地域のブリャンスクとクルスクで大規模な軍事演習を行う様子が衛星写真に撮られた。その後、国境地域に残っているロシア軍は約9万人にのぼるとウクライナ国防省が発表した。米国と欧州の情報関係者は、このような軍事力の増強はロシアによるウクライナ侵攻の準備作業かもしれないと警告している。ウクライナのハンナ・マリャール国防次官が率直に明らかにした。「今冬、ロシアがウクライナを不安定にする可能性が非常に高いという警告を西側の情報機関から受けた」。最近は、ロシアの長距離戦略爆撃機がポーランド領空の周囲に繰り返し出没しており、このような警告が説得力を増している。

 さらに、最近ベラルーシで起きた難民問題の裏に、プーチン大統領の影が見え隠れしているという指摘が多い。ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相はこの難民危機について、「指揮者はプーチン大統領」だとし、「人々を人間の盾に使った新しい形の戦争で欧州連合(EU)を不安にさせようとするもの」だと主張した。ロシアが新しい形の戦争「ハイブリッド戦争」を繰り広げているという指摘だ。さらに英国の日刊紙のタイムズは、この事態が西側とロシアの激突につながる可能性があると警告した。

 ロシアはなぜこのような動きを見せているのか。プーチン大統領の「好戦性」のためか。今月初め、米国はトルコやウクライナ、ルーマニアなどと共に黒海の公海上で合同海上演習を実施した。ポーランドの援護に乗り出した北大西洋条約機構(NATO)軍も類似の海上演習を行った。ポーランドは国境に1万5千の兵力と戦車を配置するなど軍事力を増強している。ロシアは西側のこのような軍事的な動きに敏感に反応しており、特にウクライナ近隣の黒海で行われた海上演習に激怒したという。

 その背景には、脱冷戦後に起きた戦略的不均衡がある。ソ連にとって脱冷戦は、米国と西欧をこれ以上敵視せず、欧州の一員として共同安保を建設しようというものだった。しかし返ってきたのはむしろ冷戦の拡大だった。ロシアは欧州連合の経済制裁を受けるなど依然として排斥されているばかりでなく、米国と西欧中心の軍事同盟NATOは引き続き東方に拡張してきた。過去東欧圏だったチェコやハンガリー、ポーランドが1999年にNATO加盟国になった。2004年には、ルーマニアとブルガリアに続き、過去ソ連の一部だったラトビアやリトアニア、エストニアまでもNATOに加盟した。こうした状況でウクライナもNATO加盟に乗り出し、NATOの軍事訓練および兵器支援を受けている。ベラルーシまで親西欧化するなら、NATOはバルト海から黒海まで強力なロシア封鎖網を完結することになる。

 ロシアが西欧戦線について安全保障上の深い懸念を持つのは、昨日今日の話ではない。ナポレオンの侵攻を受けており、ヒトラーの攻撃も受けた経験がある。ベラルーシとポーランドはモスクワに進攻する戦略的要衝である。過去、ソ連が東欧圏に衛星国家を建て、緩衝地帯を構築しようとした理由でもある。 2014年にウクライナ事態が発生した理由でもあり、プーチン政権が「ウクライナ領土におけるNATOの軍事的基盤が拡大すること」を「レッドライン」に設定している理由でもある。

 19日、ロシアと中国の軍用機が独島付近の韓国防空識別圏に進入して退却した事件も、欧州の状況と切り離して見ることはできない。ロシアと中国は今回、アジア太平洋地域で第3次合同空中哨戒活動を行い、先月には中国とロシアの軍艦それぞれ5隻ずつ計10隻が日本列島周辺を一周し、史上初めて「海上連合2021」を実施した。

 その理由はなにか。朝日新聞の分析はニューヨーク・タイムズより率直である。日本と米国に対する「対応かもしれない」。日本は最近、米国や英国、オーストラリアなどとともに日本周辺海域で海上訓練を実施した。このような軍事的圧迫に対する警告と牽制ではなかろうか。

//ハンギョレ新聞社
ソ・ジェジョンㅣ日本国際基督教大学政治・国際関係学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1020171.html韓国語原文入力:2021-11-22 02:34
訳H.J

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