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サムスン、9千億円以上の相続税調達の3つのシナリオ…意外な対策講じる可能性も

登録:2020-10-27 06:24 修正:2020-10-27 09:00
現代自動車グループのチョン・ウィソン会長(左から2番目)が今月26日午前、ソウル江南区のサムスンソウル病院に設けられた故イ・ゴンヒ・サムスン電子会長の葬儀場を後にしている=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 10兆ウォン(約9300億円)相当の相続税の財源はどのように調達するのか。今月25日、サムスン電子のイ・ゴンヒ会長が死去した後、遺族が受け継ぐ財産と相続による税金問題が財界内外で関心を集めている。相続税の処理方式によってはグループに対するトップ一家の支配力や支配構造(コーポレートガバナンス)にも変化が生じかねないからだ。

 故イ・ゴンヒ会長の正確な財産規模は知られていない。ただし、イ会長が保有している系列会社4社(サムスン電子、サムスン生命、サムスン物産、サムスンSDS)の株式の価値だけでも18兆ウォン(約1兆7千億円)水準だ。これらの相続にかかる税金はおよそ10兆~11兆ウォンと金融界は推算する。史上最大規模だ。この相続をめぐり、市場では3つのシナリオが取りざたされている。これらは実現の可能性よりも場合の数を考えた側面が強い。サムスンが予想外の手段に出る可能性もあるとみているからだ。

 まず、イ副会長ら家族が株式を多く保有している系列会社の配当政策が強化されるというのが大方の見通しだ。2018年にトップが死亡してから(株)LGの配当性向が高まったのと似た現象がサムスンでも現れると予想される。このような期待感があいまって、26日、サムスン物産やサムスン生命などの株価が高騰した。ただ、配当だけで相続費用を全額払うのは難しい。韓国投資証券のユ・ジョンウ研究員が同日まとめた報告書によると、昨年、サムスンのトップ一家の配当所得は7246億ウォン(約670億円)だ。相続税を5年に分割払いしても足りない金額だ。

  保有株の売却の可能性がささやかされるのも、そのためだ。特に、サムスン電子の株式を売却するかどうかに対する市場の注目度は高い。サムスンSDSは株価が比較的低く、保有した株式を売却しても市場に及ぼす影響は少ない。またサムスン物産は事実上、グループ持株会社であるため、売却の可能性が低いからだ。未来アセット証券のチョン・デロ研究員は同日発表した報告書で、「サムスン電子の株式を売却するだけで、相続税財源調達の負担が大きく減る。サムスン電子株式の売却は避けられないだろう」と見通した。イ会長が保有したサムスン電子株(4.2%)の価値は約15兆ウォン(約1兆4千億円)だ。

 チョン研究員がサムスン電子株の売却可能性を高く見ているもう一つの理由もある。チョン研究員は「遺族がイ会長保有のサムスン電子株をすべて売却しても、サムスン電子に対する実質的な支配力は維持できる」と指摘した。6月末現在、系列会社の保有株を含めたサムスン電子に対するサムスン支配株主の株式保有率は20.9%だが、このうち議決権を行使できるのは15%だけだ。「独占規制および公正取引に関する法律」は、金融系列会社を含む支配株主と特殊関係人の株式保有率が15%を超える場合、金融系列会社への議決権の行使を制限している。現在、サムスン生命とサムスン火災はサムスン電子の株式を10%保有しているうちの4.1%の議決権しか行使していない。約6%の株式は実質的な支配力とは関係がないわけだ。

 このほか、イ会長のサムスン生命保有株(約20%)の売却説も、証券街でささやかれている。ただし、この場合は系列会社間の株式取引を伴う支配構造の再編と金融持株会社法・公正取引法上の規制を回避しなければならないなど、複雑な状況につながりかねない。NH証券のアナリスト、キム・ドンヤン氏は「サムスン物産とサムスン電子の保有株を除いた支配株主のグループ支配力に影響の低いサムスン生命、S&Sなどの株式売却は避けられないだろう。サムスン物産も筆頭株主の支配力に影響を与えなければ、株式の一部が売りに出される可能性がある」と述べた。

 3つ目の案は、相続財産を公益法人に拠出することだ。サムスンのみならず、国内財閥の多くは公益法人をグループでの支配力の維持の手段として活用したり、税金回避の道具として使ってきた。サムスンはサムスン生命公益財団やサムスン福祉財団、サムスン文化財団、湖巖財団の4つの公益法人を持っている。相続財産を公益法人に拠出する場合、この財産は相続税の課税対象から除かれるが、公益財団は持株の議決権を行使できる。ただし、この場合は脱法による支配力の維持や税金回避という批判世論が形成されるというのが負担になるとみられる。

ソンチェ・ギョンファ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/967301.html韓国語原文入力:2020-10-26 19:47
訳H.J

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