原文入力:2011/12/06 21:43(2559字)
リュ・イグン記者
インタビュー/フランス高等社会科学研究院 サフィール教授
生活水準を維持するために借金をし始め…
モーゲージ危機に始まり銀行危機…流動性危機へ…
結局、国家債務を増加させ
ユーロ貨は現在の形態では持続できないだろう…
国家財政危機は福祉のためでなく税金減少から始まった
←ザック サフィール フランス高等社会科学研究院教授
ザック サフィール フランス高等社会科学研究院教授はこの頃ヨーロッパで最も多忙な経済学者の一人だ。 経済危機に陥ったヨーロッパ各国の政府と議会が彼の意見を聞くために連絡をしてくる。フランスとドイツ首脳が救済金融支援条件を巡りギリシャ総理と3者談判を行った日には結果を待っていて翌日明け方2時30分にようやく眠りについた。夜中に彼の助言を求める大統領経済諮問家 スージャン ジャビエ ムスカーの電話が続いた。ギリシャ議会からも彼に諮問を求めてきた。先月3日、パリ13区にある研究所で彼に会いインタビューをする途中にもフランス議会とマスコミの電話が鳴り響いた。
-世界経済危機がどんな経路を踏んでいると見るか?
"危機は‘変種ウイルス’のように継続的に新しい形態を取っている。モーゲージ(住宅担保貸出)危機から出発し銀行危機へ、また流動性危機に変わった。結局、政府次元の対策を要求する総体的な金融危機を呼び起こし国家債務を増加させた。今、私たちは国家の負債危機を体験している。要するに危機が絶えず新しい形態を取っているが、結局は一つの危機と見ることができる。"
-今後も危機が継続的に形態を変えていくと見るか?
"そうだ。 今回の危機が実物経済の危機へ転移している。深刻な景気低迷あるいは不況の兆しまで見える。 ヨーロッパが1930年代ドイツの前てつを踏むことにならないだろうか、というのが最も大きな心配事だ。当時、銀行を救うために緊縮政策を展開したが失業率が13%から40%に増加する結果を持たらした。 ヨーロッパがこういう緊縮的な財政政策と収縮的な貨幣・信用政策を再び使うかもしれないという点が恐ろしい。こういう結合は途方もない災難として迫るだろう。"
-なぜ危機が解消されずに、より一層悪化するのか?
"危機の根源を治癒できなかったためだ。 病気ではなく症状だけを治療してきたのだ。危機の根源は実物経済の側面から見れば、大多数国民の所得停滞だ。 彼らが生活水準を維持するために借金をし始めたのもまさにそのためだ。 金融経済の観点で見れば1980年代中盤から2000年代初期まで持続した金融市場に対する規制緩和および撤廃が金融の不安定性を招いた。したがって実物と金融部門のこういう病気を治癒できなければ、危機は引き続き悪化するだろう。"
-ユーロゾーンの危機が深刻だ。どんな改革が必要なのか?
"ヨーロッパが米国のように真の連邦体制を構築できないならば、ユーロ貨を今のように単一貨幣として‘共同貨幣’(ユーロ貨幣を対外決済手段だけに保有し国内では自国貨幤復活)に転換させなければならない。各国家に貨幣主権を返すということだ。根本的に制度が異なる国家間で単一の貨幣政策を施行することは事実上不可能だ。"
-ユーロ地域内の国家間の競争力差も危機の一つの要因と見るか?
"多くのヨーロッパの政治家たちはユーロ貨幣導入以後、地域内国家間の競争力が同等になると期待した。だが、約10年前からその間隙がより広がった。例えば実質賃金費用(賃金費用/生産性)指数を見れば、ドイツとギリシャあるいはスペインの競争力格差は現在40%水準だ。その格差はユーロ スタート前の1990年代中盤には32~35%であった。"
-国家財政危機が過度な福祉費支出から始まったという指摘もある。
“去る30年間、福祉は経済成長にいかなる制限も加えなかった。むしろフランスでは2007年以後、財政赤字の3分の2以上が税金減免のために発生した。2007年に通過した減税さえなかったならば、現在のフランスの財政赤字は非常に小さかっただろう。もちろん福祉国家の経営上の非効率性は確かめて行く必要がある。しかし長期的な観点で見れば福祉費が財政赤字の主な要素ではない。財政赤字は税金の減少から始まったと見る方がはるかに正確だ。”
-危機が持続する中で金持ちと貧しい人々の所得格差が大きくなって行く。
“金持ちと貧者ではなく、金持ちと残りの階層(中産層を含む)の所得格差が拡大していると見るのが正しい。この格差は危機とともに絶えず拡大している。一番の理由は家計所得と労働所得が生産力増加率に達し得なくなっているためだ。フランスの場合、1980年代中盤以後、年間単位の生産性増加率が2.5%~3%である反面、家計および労働所得増加率は1%に留まった。その不均衡は今も続いている。2番目の原因は租税構造に起因する。ますます租税減免規模が大きくなっている。フランスの場合、昨年夏に大統領が資本税と所得税を含むすべての直接税が所得の50%を越えられないように上限線を設定した。これは結局、課税者など中上位圏にいる人々に対する減税につながった。 それこそ金持ちのための措置だ。”
-ユーロ貨幣の運命はどうなると見るか?
“ユーロ貨幣には確かに問題がある。ユーロ貨幣は現在の形態では持続できないものと見られる。ギリシャやポルトガルなど数カ国がユーロ地域から脱退する方案が解決法になりうる。可能なもう一つの解決策は、ドイツが絆関係が厚いオーストリアとフィンランドなどと共にユーロ地帯の外に出て行くことだ。これら国家の脱退はユーロ貨幣の崩壊とも言えるが、また別の形態への変化と表現することもできる。3番目の方案はユーロ貨幣自体が単一通貨から共同通貨へ変化することだ。”
パリ/文・写真リュ・イグン記者 ryuyigeun@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/508926.html 訳J.S