原文入力:2011/10/03 22:08(1910字)
住民意見を十分聞かず
官主導で事業 強行
賛否 意見分かれ深刻な葛藤
里長 "申し訳ない" 農薬飲む
先月30日、忠南(チュンナム)、公州市(コンジュシ)、鶏龍面(ケリョンミョン)、琴垈里(クムデリ)で会ったイム・ヨンナン(52)氏は栗を拾っていた。痩せた体つきで目に力がなく時おり涙を流していた。 イム氏は先月15日に夫を失った。夫が除草剤を飲み苦しそうな声で残した言葉は「申し訳ない」だけだった。
夫のチョン・ピルグク(56)氏は5年前この村の里長に選ばれた。任期は2年だったが3選する程に信任が厚かった。しかし去る5月、琴垈里が緑色マウル造成地に選ばれてから全てがひっくり返った。仲むつまじく過ごした住民たちは賛否両極に分かれ、事業を主導したチョン氏は反対する住民たちと辛い争いを行った。そして彼はついに自ら命を絶った。
政府が大仰に推進する緑色マウル事業の実状はたいしたものではない。家畜の糞尿と残飯で電気と熱を自ら生産するバイオガス プラントを建設することがほとんど全て。住民たちには観光客が集まり、住民便宜施設が造成されるという点が強調された。そのため初期には住民たちの拒否反応は強くなかった。
しかし当面のエネルギー需給に問題のない住民たちにバイオガス施設は切実なものではなかった。むしろ他地域の家畜の糞尿と残飯が押し寄せてくることにより、村に悪臭が蔓延するだろうという話が出回りこの事業に反対する住民たちが増えた。バイオガス プラントができる位置が村の南側にある既存家畜糞尿処理施設付近から北に変更されたことも反対の声に力を与えた。さらに重要なことは事業推進過程で住民の意見がほとんど反映されなかったという点だ。住民の同意が不足した中で、事業が急速に推進され住民43世帯の内 35世帯が反対に転じた。近隣6ヶ村では‘6ヶ里(緑色マウル造成)反対推進委員会’が結成された。
賛否がくっきり分かれ住民どうしの葛藤も頻繁になった。琴垈里はチャンギ鄭氏の集姓村だ。里長が属するチャンギ鄭氏宗親会も公開的に事業に反対し始めた。ある住民は「自身の門中と葛藤を生じさせながら里長がとても困っているといった」と話した。夫人イム氏は 「夫が心理的圧迫を強く受け一ヶ月前から眠れない日が続いていた」と話した。
チョン氏の死が知らされるや住民たちは政府と公州市(コンジュシ)のゴリ押し式事業推進に対する不満があちこちから溢れでた。(緑色マウル造成事業)反対推進委員長の住民ヤン・インチョル(56)氏は「住民たちの間に十分な合意がなされる前に行政安全部と市が無理に事業を展開したために住民の葛藤だけが大きくなった」と話した。賛成推進委員長のチョン・テソン(59)氏も「短期的成果に汲々としたあまり十分な説明と長期的な計画もなく官主導で事業を進行したためにこうしたことが発生した」と話した。
事実、今回の事態は予告されたことだった。政府が琴垈里に先立ち事業を推進した近隣の月岩里の場合、行政安全部が候補地を公募し、候補地を選定するまでに3ケ月しかかからなかった。もちろん深刻な葛藤を誘発し、住民の反対で事業が失敗に終わった。月岩里事業が失敗に終わるや行政安全部はまた2ヶ月後に追われるように琴垈里を事業候補地に決めた。
最近は政府内部ですら批判が出てきている。大統領直属の緑色成長委員会は先月7日に開かれた緑色成長履行点検会議で「低炭素緑色マウルは準備が不充分で運営管理と地方自治体の協力体系が不十分だ」と指摘した。国会予算政策処も去る8月に出した決算資料で緑色マウルに対して「住民同意書要求など事前行政手続きを履行しなかった」と指摘した。緑色産業育成という現政権の政治功績のために無理に事業を急いだ結果、村の里長をはじめ琴垈里住民たちだけが犠牲になったのだ。
政府が緑色マウルのモデルとしているドイツのウォンデ村では村の造成までに7年という歳月がかかり、5年余りの時間を住民参加を引き出すために使った。 それだけの情熱と根気があって初めて成功できる事業だ。それでも政府は今年中に工事に入る方針だ。住民たちは今月初めに再び反対集会を開く計画だ。暮れ行く秋の気配の中で‘緑色マウル’は黄金色に染まっていきつつある。
公州/キム・ギョンウク記者 dash@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/499090.html 訳J.S