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[リレー寄稿] あなたにはキム・ジンスクに対する責任がある

原文入力:2011/07/0219:03(2315字)

塩の花 あなた/イ・チャングン

←頑張って下さい。 韓進重工業釜山影島造船所第85号クレーンで158日間にわたり籠城中のキム・ジンスク民主労総指導委員(右上の両手を上げている人)が12日午前、自身を応援しに‘希望バス’に乗って全国各地から集まった1000人余りの市民・労働者が人間の帯を作り風車をクレーンに付ける間、手を振って答礼をしている。 釜山/イ・ジョンウ先任記者 woo@hani.co.kr

2011年6月27日朝からツイッター上には大騷ぎが起こっていた。希望列車85号に乗り釜山まで行ってきた旅の疲れが抜けないまま事務室へ向かうところだった。韓進重工業のチェ・キリョン支会長が韓進社長イ・ジェヨンと合意書に署名直後に手をあげ万歳を叫ぶ写真一枚がツイッターを熱くしていた。

韓進重工業整理解雇の戦いが173日目をむかえる日、金属労組韓進重工業支会は労使合意書に署名した。闘争する同志たちの説得と引き止めを振り切り、解雇者家族らの泣き叫ぶ声をあえて無視してのことだ。キム・ジンスクの絶叫に耳をきつく塞ぎながらだ。その日以後、チェ支会長は公共の敵になってしまった。いわゆる‘身上’もすぐに奪われた。

写真を几帳面に覗いて見た。彼の姿は凍っていたし表情は憔悴しているように見えた。私は彼の顔から あろうことか戦争捕虜を思い浮かべた。 私の目にはチェ支会長の頭の後に銃口が見えた。

2011年韓国社会で整理解雇というモノの実体は何か! 個人がうまく持ちこたえ堅く決断すれば無力化させられる甘いモノか。そうではない。暴力的解雇による苦痛の津波がすでに韓半島を覆っているではないか。 韓進の経営陣が特別に悪辣だとか、あるいは労組執行部があまりにも利己的なためにこうしたことが起きたのか。

今この国で整理解雇はすでに構造化されている。そのような状況で個人に非難の矢を放つことで相次ぐ解雇を防げるのか。いや、韓進事態だけでも少しでも解決できるのか。公共の敵に対する怒りの他には、本当に今しなければならないことはないのか。この地点が私たちが握りしめ解決しなければならない課題ではないのか。

この事件以後、多くの電話を受けた。多くの人々が「支会長が組合員とキム・ジンスクを裏切った」としながら声を荒らげた。しばらくの間、共に糾弾して彼らに尋ねた。「兄さん、それでも希望のバス2次には一緒に行くんだろう?」受話器の向こう側の声が突然だんだん小さくなる。「ウン...。それが…。」

人々は韓進がもう終わったと言う。それは全てチェ支会長のせいだと、その格好を見るのもいやで、希望バス2次に乗るのもいやだと、もう韓進には希望も見えず退屈な怒りだけだと話す。私もやはりその言葉が全く違うとは反論しにくい。韓進を見ながら感じる無力感と怒りをなぜ分からないのだろうか。目まいのするような欄干に自らを縛り付けた同志たちや、電気までが遮断されたクレーンに残ったキム・ジンスクを見ながら、私にも前が見えない時がある。

しかし私たちは、もう正直になろう。チェ支会長にすべての非難の矢を浴びせることとキム・ジンスクだけに整理解雇の十字架を背負わせることとはコインの裏表だ。本当にそれほど怒っているのなら じっとしていることができるのか。より一層、韓進に再び集まらなければならないことではないのか。すべての怒りをチェ支会長に排出することはとても容易いことだ。それだけで終わるならば、結局キム・ジンスクに整理解雇の十字架を負わせることだ。崖っぷちに立たされたその心情を見て見ぬフリをすることだ。私はあえて、生意気にもそのように考える。

<他人の苦痛>という本を読んだ。「憐憫は移ろいやすい感情だ。行動につながらないならば、そういう感情はまもなく弱まる」、「苦痛を受けている人々に憐憫を感じる限り、私たちは我ら自らがそのような苦痛を持たらした原因に関与してはいないと感じること」という句が目についた。キム・ジンスクの苦痛を見ながら、私は‘憐憫’を‘苦痛を与える者に対する怒り'に変えて考えた。

しかし、まだ整理解雇されていない私たちの日常は、キム・ジンスクの苦痛と深くかかわっている。私たちが怒っているだけの間に整理解雇はその次の労働者に襲いかかるだろう。イエスは人類の罪の代わりに十字架を背負った。ローマ軍使の刑罰のためではなかった。

本はこのように続く。「私たちの特権が(私たちが想像したくない形で、たとえば私たちの富が他人の窮乏を伴う形で)彼らの苦痛と連結されているかも知れないという事実を熟考してみること、そして戦争と悪辣な政治に囲まれたまま他人に憐憫を施すことだけを止めるということ、まさにそれこそが私たちの課題だ。」

さあ、今や私たちが本当に整理解雇を終わらせる方法を作り出さなければならない。キム・ジンスクが私たちにインスピレーションを与え、希望バスが希望の根拠を作っているではないか。キム・ジンスクの85号クレーンは私たちに問う。いつまで私達は声を張り上げるだけでいるのか。ローマ軍使をののしってばかりいるのだろうか。十字架を分かち合えるか。豪雨の中でも安楽な家に留まっている私たちは、今 正直に答える義務がある。

イ・チャングン民主労総金属労組 双龍自動車支部企画室長

原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/485550.html 訳J.S