原文入力:2011/06/29 21:06(3287字)
キム・ミンギョン記者、イ・ジェフン記者
[企画連載] 授業料 大学公共性強化で解決しよう
私立大に通うカン・ジヨン氏
2年間で借金 1200万ウォン
家庭教師にビヤホール バイトまで
平均成績 3.75、奨学金は期待できず
結局、休学届けを出し工場へ
3ケ月間の工場生活は慣れずに大変だった。午前9時から午後6時まで、残業がある時は夜9時まで12時間、ご飯を食べる時間だけ除いて携帯電話に入れるキーボード フィルムを機械で印刷し続けた。肩が抜けそうに痛かった。初めての月給は100万ウォンだった。‘韓国で最も大きな携帯電話製造会社なのに、あまりに少ないのではないか?’と思ったが、学費準備が切迫していたので不満は心の中にしまった。初めての月給で大学に通った4学期の内 3学期間に借りた授業料と生活費貸出金の滞納した利子80万ウォンを返した。
二ヶ月目から2週ずつ交替で夜勤をする作業組に入った。月給が145万ウォンになった。また50万ウォンの滞納利子を返した。夜間勤務をして朝 家に帰れば、からだは水にぬれた綿のように重く疲れていてもなかなか眠れなかった。工場の人々は「大学生がなぜこんなところに来たのか。勉強しなくていいのか」と尋ねた。その時、初めて‘アー、私が大学生だったんだ’ということを自覚した。
忠南のある私立大に通うカン・ジヨン(21・女・仮名)氏が高等学校の時に描いた大学生活はこのようなことではなかった。シチュエーションコメディに出てくる俳優たちの姿のように何の心配もなく勉強だけすれば良いと思った。ヨーロッパ旅行にも行き、公演も見て歩きたかった。自分にどれほど分別がなかったかを悟るには、さほど多くの時間を要しなかった。1学年の時、父親の事業が傾いた。入学時には両親が入学金100万ウォンと授業料350万ウォンを渡してくれたたが、その先はもらうわけにはいかなかった。
その上、カン氏は家がソウル近郊なので寄宿舎に入らなければならなかった。学校の寮費は最も安い4人部屋が月に17万5000ウォンだった。学校寄宿舎はカン氏が入学した2009年当時、在学生7092人の内 2614人(36.9%)を受け入れることができた。新入生は全員入ることができるが、2学年からは成績基準で志願者を選抜した。学生たちの間に出回る成績‘カットライン’は平均A(4.0)だった。
カン氏は1学年1学期の時から家庭教師アルバイトをし二科目で月40万ウォンを受け取った。時々学校で募集する日当6万ウォンのアルバイトもした。1学年2学期の授業料312万ウォンは学資金貸し出しで借りた。据え置き期間は最大10年だが、借金は早く返すのが良いと考え、2年後の2011年から償還する条件を選択した。利子が積もって今考えれば最も後悔した決定だった。アルバイトで稼いだ金を寮費と生活費に使えば月に1万~2万ウォンの利子さえ負担になる。学期が始まる度に新しい教材も買わなければならなかった。10万ウォン程度かかる。利子は毎月積もっていった。
低所得層奨学金を申請したが、家もあり車もあるのでだめだった。事業の失敗などで突然経済的に窮乏した家庭は普通、低所得層福祉の死角地帯に入り込むのが常だ。成績奨学金を申請しようとしたが、友人は「3.75点(4.5点満点)では到底望めない」と言った。授業料の心配をせずに小遣いをたくさんもらう友人が成績奨学金を受け取った。
2学年になり友人2人と自炊の部屋に移った。大きな部屋一つを分けて使うが一人当り月11万ウォン程を出さなければならなかった。また1学期の学資金貸し出し350万ウォンを受け、生活費も100万ウォンの貸し出しを受けた。夕方7時から翌1時までビヤホールのアルバイトをした。日当は3万ウォン程度だった。家賃と公共料金を払い生活費として使えば残るお金はなかった。2学期の学資金358万ウォンと生活費100万ウォンを追加で借りた。そのようにして1022万ウォンの学資金と200万ウォンの生活費貸し出しが借金として積もった。その間に学校は新しい建物を一つ作り、建物一つをリモデリングした。
今年3学年になり元金償還時期が迫ってきた。韓国奨学財団に「償還期間を遅らせられるか」と尋ねた。「できない」との答だった。だが、これ以上は授業料を借りられなかった。休学届けを出し、2月から携帯電話工場で仕事を始めた。2学期も休学を考えている。「たまに学校に行けば授業を聞きたくて、盗講をしようかとも考えた。大学が私たちに信用不良者の烙印を捺し社会に送りだすようです。」
ドイツでは大学教育も無償
“国家の重要な責務と認識 個人も社会に恩恵還元”
カン氏がもしドイツで大学に通っていたらどうだったのだろうか。13年間ドイツで暮らしている<ドイツ教育の話>の著者パク・ソンスク氏とのEメール インタビューとゲッティンゲン大学で博士学位を受けたチョ・サンシク東国大教授(教育学)の説明を総合しドイツの大学生たちの状況を調べてみた。
ドイツは今年現在、バイエルン州とニーダーザクセン州を除く14の州で大学無償教育を行っている。バイエルン州とニーダーザクセン州も年間授業料は154万7000ウォンにしかならない。ドイツの寄宿舎は1人1室で月に38万ウォン水準であり、大部分の在学生を寄宿舎に受け入れることができる。学生たちは教材を買う必要がない。 ゲッティンゲン大学の図書館蔵書数は700万冊に及ぶ。カン氏の学校蔵書数は2010年基準で45万冊であり、ソウル大は409万冊だ。ドイツの大学生は大部分が図書館で教材を借り、複写をして授業に入るという。
ドイツの大学生は20万ウォンを払い‘学生カード’を購入すれば、寮費と映画館・体育施設・博物館入場料などの割引を受けられ、バスと近距離列車は無料だ。授業料が完全にないか安いため、学資金貸し出しは受ける必要が殆どなく、‘パプェク’という生活費貸し出しは月103万ウォンまで受けることができる。貸し出し金の内50%は無利子だ。
パク・ソンスク氏は彼女のブログにあげた文で「ドイツで教育は国家の最も重要な責務であり、個人の問題ではなく社会が共に連帯して解決する共同課題」とし「国民の税金で大学を無償運営し、大学で成長した人材は後から自身が受けた恩恵をまた社会に還元しなければなければならないと認識する」と明らかにした。
キム・ミンギョン、イ・ジェフン記者 salmat@hani.co.kr
就職後学資金償還制にも‘受益者負担原則’
政府が財政投入せず、奨学財団が債権発行
政府が授業料負担軽減のために昨年から導入した‘就職後学資金償還制’も受益者負担原則を基盤としている。教育科学技術部もやはり導入当時の発表資料で「学資金貸し出しは受恵者本人が受益者負担原則により負担すること」と明示した。
実際、就職後学資金償還制財源は政府ではなく韓国奨学財団が発行した債権で作られ、政府は債権発行にともなう利子などだけを支援している。貸し出し金の利子が高いのもこれと無関係ではない。
反面、オーストラリアとニュージーランド、オランダなど公共性の強い教育体系を整えた国だけでなく、米国、英国、日本など市場主義指向が強い国々も学資金貸し出しの主要財源は政府の一般会計から支出している。オランダは既存の大学生対象基本補助金を減らし学資金貸し出しを増やす方向に政策を切り替えているものの、代わりに一定期間内に教育過程を終えれば貸し出し金を償還しなくても良い。貸し出しというよりは無償奨学金に近いわけだ。
キム・ミンギョン記者 salmat@hani.co.kr
原文: https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/485129.html 訳J.S