韓国の統一地方選挙の投票用紙不足事態をきっかけに始まった蚕室(チャムシル)開票所封鎖デモが4日目を迎えた8日、一時は「再選挙(選挙やりなおし)」のスローガンに集中し、支持層の拡大を図っていた集会の雰囲気が、わずか1日で「不正選挙陰謀論」へと急激に傾いた。
デモ隊の間で「不正選挙のスローガンを阻止するのは外部勢力の陰謀だ」という出所の分からない噂が急速に広まり、不正選挙論が集会を再び支配している。参加者たちがハンドボールの女子ユース韓国代表選手団たちの出入りを阻んだり、所持品を捜索したりするなど、度を越した過激な行動も再び頭をもたげている。
■「再選挙」のポスターの上に貼られた「不正選挙」
この日午前、ソウル松坡区(ソンパグ)のオリンピック公園ハンドボール競技場の前では、約1600人(警察の非公式推計)の参加者が3泊4日にわたり出入り口を封鎖したまま集会を続けた。政治的性格を排除するとして「不正選挙」のスローガンや星条旗の持参などを控えていた前日の集会とは異なり、この日の集会参加者たちは星条旗を振りながら「不正選挙・再選挙」のスローガンを叫び続けた。
太極旗と星条旗を共に掲げた30代の女性参加者は、「(与党の)共に民主党が望んでいるであろう『再選挙』を訴えるのはもどかしい。不正選挙(を主張すること)でいくべきだ」と語った。また別の参加者は、「どうせメディアは私たちに『極右』というレッテルを貼るのだから、中道に迎合する必要はあるのか。『ストップ・ザ・スティール(Stop the Steal)』のスローガンも止めさせない」と声を高めた。
前日にハンドボール競技場の至る所に貼られていた「スローガンを『再選挙』に統一しよう」という趣旨が書かれたポスターの上には、「不正選挙」という文言が追加された。「他国の国旗を振ることは誤解を招く恐れがある」という「自制を求める文言」の上には、これを消すための黒い線が何度も引かれていた。その上には「大進連(韓国大学生進歩連合)が扇動中」「不正選挙の口封じ指令、大進連の扇動に注意!」など、別のビラがいくつも貼り付けられていた。
前日の夕方からグループチャットを通じて、「再選挙のスローガンや星条旗排除の動きは、反米学生団体である大進連の指令によるもの」という噂が急速に広まり、「外部勢力の摘発論」が集会現場を覆った影響だ。
■同じ集会、異なる声…分裂するデモ隊
この過程で、参加者同士の間で激しい舌戦が繰り広げられる一幕もあった。ある参加者は「分裂は相手側が望んでいることだ。今回の集会は左右が統合される機会なのだから、大進連を摘発するようなことはやめよう」と語り、「ただし、政治的目的を持つ人は排除すべきだが、不正選挙論を叫ぶ方々は政治的目的があるようだ」と発言した。
すると、別の男性参加者が、この日李在明(イ・ジェミョン)大統領が就任1年の記者会見で「(投票用紙不足に対する問題提起は)不正選挙論と混ざり合ってはいるが、少し異なる」と発言した記事を見せながら、「これを見ろ。左派が作った(再選挙の)フレームを受け入れてはならない」と反論した。
デモの様相が不正選挙陰謀論に傾くにつれ、現場の雰囲気も再び過激化している。同日午前10時頃、世界女子ジュニア選手権大会(U20)出場に向けた練習のため、トレーニング用品を取りにきたハンドボール女子ユース韓国代表チームの選手6人が、デモ参加者らに建物への出入りを阻まれる事態も起きた。選手が手を合わせて懇願した末、ようやく道をあけた彼らは、選手たちが練習用具を持って建物の外へ出てくると、投票用紙を隠していないか確認するとして、「所持品検査」を行った。
当時の状況を目撃した市民のキム・ヒョンミン氏は、「(デモ参加者が所持品検査に乗り出した際)選手たちの顔が真っ青になり、震えていた」とし、「その時、選手たちをエスコートしていた(集会参加の)ボランティアの大学生が、選手たちのカバンを漁ろうとする人を押しのけるなどして制止すると、誰かが『大進連だ!』と叫んだ」と伝えた。キム氏は「(周囲の)人々が『この方はここ数日間、ここでボランティアをされている方だ』と必死に説得して(状況は)一応収まったが、まだ怒りが収まらない人たちが『スパイが多い』『大進連を追放しろ』と叫んだ」と語った。
この過程で、ある男性参加者が20歳前後の選手たちに向かって「靴下も脱がせるべきじゃないか」と発言し、現場の警察から「性的羞恥心を誘発する発言だ」と警告を受けたという。