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韓国保守野党の「名ばかり代表」…政治経験よりも足りない2つのこと

登録:2026-02-02 02:10 修正:2026-02-02 08:26
[ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏] 
改革保守を追い出し、民正党や自由韓国党に回帰 
党内の統合や野党との連帯も不可能に
国民の力のチャン・ドンヒョク代表(左)とハン・ドンフン前代表/聯合ニュース、ユン・ウンシク先任記者

 「団結すれば生き、ばらばらになれば死ぬ」というスローガンは、政治においても不変の真理です。民主主義は選挙で公職者を選出し、国政運営を任せる制度です。選挙で多くの票を確保した方が権力を握ります。政治家にとって統合と連帯は善であり、分裂と排除は悪です。

 保守野党「国民の力」のハン・ドンフン前代表の除名騒動が大きな波紋を呼んでいます。野党分裂や保守全体の没落に至る兆しまで見えるような気がします。

 ハン・ドンフン前代表は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の法務部長官から「国民の力」の非常対策委員長に選ばれ、政治に足を踏み入れました。2024年4月10日の第22代総選挙で敗北して退きましたが、2024年の7月の党大会で代表選に挑戦して当選したことで、華やかに復活しました。ウォン・ヒリョン、ナ・ギョンウォン、ユン・サンヒョンの各候補と競いましたが、第1次投票で62.84%の得票率で圧勝しました。

 12・3非常戒厳直後に代表を退きましたが、2025年4月4日の尹錫悦大統領の罷免後、国民の力の大統領候補を選ぶ予備選挙に出馬しました。5月3日に集計された最終得票率は、キム・ムンス候補56.53%、ハン・ドンフン候補43.47%でした。候補には選ばれませんでしたが、なかなかの競争力を示したのです。

 このようなハン・ドンフン前代表を国民の力が除名したことは、従来の政治の文法では説明のつかない非常識なものです。国民の力が荒波に飲み込まれているのは極めて当然です。

 ソウル市のオ・セフン市長はチャン・ドンヒョク代表の辞任を求めています。

 「チャン・ドンヒョク代表は辞任してください。絶体絶命の危機の中、大韓民国の野党第一党の代表の座にいる資格はありません。さもないと、すべてをやり直すことはできません」

 親ハン・ドンフン派の16人の議員もチャン・ドンヒョク代表の辞任を求めています。

 「選挙は負けてもいいから党の主導権だけは守るということでないなら、今回の決定はいかなる論理によっても説明することはできない。個人的利益のために党を反憲法的、非民主的に追い立てたチャン・ドンヒョク指導部は、今回の事態の責任を取って直ちに辞任すべきだ」

(キム・ソンウォン、キム・イェジ、キム・ヒョンドン、パク・チョンハ、ペ・ヒョンジン、ソ・ボムス、コ・ドンジン、キム・ゴン、パク・チョンフン、アン・サンフン、ウ・ジェジュン、ユ・ヨンウォン、チョン・ソングク、チョン・ヨヌク、チン・ジョンオ、ハン・ジア)

 首都圏の党協委員長級の非国会議員24人も、チャン・ドンヒョク代表の辞任要求に加わりました。

 「チャン・ドンヒョク代表体制下で行われている排除と粛清は、政党民主主義の根幹を否定する明白な退行だ。分裂の頂点に立っているチャン・ドンヒョク代表は、今や党の未来のために決断すべきだ。辞任せよ」

(キム・ギョンジン(東大門乙:選挙区名)、キム・ヨンウ(元東大門甲)、キム・ユンシク(始興乙)、キム・ジョンヒョク(高陽丙)、キム・ジュンホ(元蘆原乙)、キム・ジンモ(清州西原)、ナ・テグン(九里)、リュ・ジェファ(元世宗甲)、パク・サンス(元仁川西区甲)、ソ・ジョンヒョン(安山乙)、ソン・ヨンフン(元報道担当)、シン・ジホ(元戦略企画部総長)、イ・ヨンチャン(元仁川西区甲代行)、イ・ジョンチョル(城北甲)、イ・ヒョヌン(仁川富平乙)、チャン・ジニョン(銅雀甲)、チョン・ヘリム(比例代表候補)、チョ・スヨン(大田西甲)チェ・ジヌン(龍仁乙)、チェ・ドニク(安養万安)、チェ・ヨングン(華城丙)、チェ・ウォンシク(仁川桂陽乙)、ハム・ギョンウ(元組織部総長)、ハム・ウンギョン(麻浦乙))

 「代案と未来」に所属する16人の議員は、チャン・ドンヒョク指導部を批判する声明を発表しました。「代案と未来」は、12・3非常戒厳1周年に際して国民に謝罪した議員たちの集まりです。

 「特定の人物に対する好き嫌いを離れて、今日の国民の力指導部によるハン・ドンフン前代表に対する除名決定は、政党民主主義の破壊であることはもちろん、統合が切実に求められるいま党の分裂を招くとともに、外延拡張の障壁となることは自明であるため、強い遺憾を表明する」

(クォン・ヨンジン、キム・ソヒ、キム・ヨンテ、キム・ジェソプ、キム・ヒョンドン、パク・チョンハ、ペ・ジュニョン、ソ・ボムス、ソン・ソクチュン、シン・ソンボム、オム・テヨン、ウ・ジェジュン、ユ・ヨンウォン、イ・ソングォン、チョン・ヨヌク、チョ・ウンヒ)

 メディアもチャン・ドンヒョク代表と国民の力を強く批判しました。朝鮮日報は「戒厳自爆で政権上納したかと思えば、今度は党も自爆するのか」と題する社説を書きました。東亜日報の社説のタイトルは「チャン・ドンヒョク、ハン・ドンフン除名…共倒れ、あるいは自滅の道」でした。

1月30日付東亜日報社説//ハンギョレ新聞社

 チャン・ドンヒョク代表は党内の反発やメディアの批判を努めて無視し、30日のイ・ヘチャン元首相の弔問を皮切りに対外活動に乗り出しました。除名事態の波紋を最小化しようとするものです。2月4日には国会で交渉団体代表演説をします。その後は党名を変更したうえで、地方選挙の準備に取りかかるとみられます。

 しかし、波紋はそう簡単には収まりそうにありません。親ハン・ドンフン派の議員は議員総会の招集を求めています。中央倫理委による除名決定直後の1月15日の議員総会で発言に立った議員は、全員が指導部に除名撤回を要求しています。したがって今週中に議員総会が開かれれば、指導部に対する糾弾があふれると思われます。

 メディアは当面、与野党の対立よりも国民の力の内部対立を集中的に報道せざるを得ません。この世に内輪もめほど面白いものはないからです。

 かといって、親ハン・ドンフン派の議員や「代案と未来」の議員が集団離党する可能性はほとんどありません。国民の力の議員には、朴槿恵(パク・クネ)政権末期の「『正しい政党』トラウマ」があります。比例代表議員は離党すると議員職を失います。

 党が割れないのは、チャン・ドンヒョク代表にとって良いことなのでしょうか。そうではありません。むしろ党が分裂すれば、各自が勢力を拡大して対与党闘争で役割分担したり、総選挙や大統領選挙を前に改めて合併したり、選挙連帯することもできます。しかし、今のように両勢力が内部で銃の撃ち合いを続けていると、東亜日報の社説のタイトルのように「共倒れ、あるいは自滅」する可能性が高まります。

チャン・ドンヒョク代表、ソン・オンソク院内代表ら、国民の力の指導部が1月30日、ソウル鍾路区のソウル大学病院斎場で営まれた民主平和統一諮問会議のイ・ヘチャン首席副議長の葬儀を弔問している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 にもかかわらず、チャン・ドンヒョク代表がハン・ドンフン前代表を除名したのは、なぜなのでしょうか。チャン・ドンヒョク代表とハン・ドンフン前代表の政治経験不足を原因にあげる分析があります。一理あります。しかし、より根本的な理由は別にあると思います。2つです。

 1つ目、党内の権力の移動です。

 みなさんは、チャン・ドンヒョク代表によるハン・ドンフン前代表の除名はチャン・ドンヒョク代表の「決断」によるものだとお考えですか。違います。チャン・ドンヒョク代表は「すべて計画があって」ハン・ドンフン前代表を除名したのでしょうか。違います。

 今、国民の力の主はチャン・ドンヒョク代表ではありません。強硬党員たちです。チャン・ドンヒョク代表は強硬党員によって振り回されている「名ばかり代表」に過ぎません。民主党がそうであるように、国民の力も権力は強硬党員に渡ってしまいました。お飾りにすぎない代表に「なんであんなことをしたのか」、「これからどうするのか」と問うのは愚かなことです。言いすぎでしょうか。

 強硬党員の最大の問題点は、何の計画もなく即興的な感情と怒りで動くことです。チャン・ドンヒョク代表は、これまでそうだったように、強硬党員に言われた通りにやっていくでしょう。これからも引き続き非常識に判断し、行動していく可能性が高いと思います。

 2つ目、保守の歴史に対する無理解です。

 国民の力は、1990年の3党合同で作られた民自党の後身です。民自党は全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)の民正党と金泳三(キム・ヨンサム)の統一民主党が合わさって作られた政党でした。大邱(テグ)・慶尚北道中心の強硬保守と釜山(プサン)・慶尚南道中心の改革保守の統合でした。

 強硬保守と改革保守の結合は、1995年の金泳三大統領による全斗煥、盧泰愚の処罰で破綻しました。これこそ、1997年と2002年の大統領選挙で民主党が政権を握れた背景です。保守が再び勢力を伸ばしたのは、「実用保守」李明博(イ・ミョンバク)と「正統保守」朴槿恵(パク・クネ)の結合によってでした。2人は競争と協力で順に政権を獲得しました。

 強硬党員やチャン・ドンヒョク代表をはじめとする国民の力の指導部は、こうした歴史についてどれほど知っているのでしょうか。よく知らないのではないかと思います。今回の除名事態の悲劇はまさにそこから生じています。

 これからチャン・ドンヒョク代表の運命はどうなっていくのでしょうか。国民の力の将来はどうなるのでしょうか。チャン・ドンヒョク代表は、ハン・ドンフン前代表だけをきれいに排除し、オ・セフン、ユ・スンミン、イ・ジュンソクらとは党内統合と野党連帯を推進しようとしているようです。うまくいくでしょうか。うまくいかないでしょう。

 まず、オ・セフン市長とは当面、提携が難しいでしょう。オ・セフン市長がチャン・ドンヒョク代表の辞任を求めているからです。しかも強硬党員たちは、ソウル市長選の党内候補を選ぶ予備選挙でオ・セフン市長ではなくナ・ギョンウォン議員を選ぶべきだと声を強めています。

 チャン・ドンヒョク代表は、ユ・スンミン元議員を京畿道知事候補に立てられるでしょうか。それも難しいと思います。ユ・スンミン元議員は今も、朴槿恵元大統領に裏切り者のレッテルを貼られたままです。チャン・ドンヒョク代表が断食(ハンスト)を中止したのは、朴槿恵元大統領にやめるよう言われたからです。

 イ・ジュンソク代表の改革新党との選挙連帯は可能でしょうか。不可能です。イ・ジュンソク代表は「(国民の力とは)選挙連帯する要素がない」とはっきりと否定しています。

国民の力から除名されたハン・ドンフン前代表が1月29日、除名についての記者会見の終了後、国会疎通館を後にしている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 ハン・ドンフン前代表はこれからどうなるのでしょうか。当面はブックコンサートやユーチューブで活動しながら活路を模索していくでしょうが、政治的将来はあまり明るくはありません。イ・ジュンソク代表の勧告どおり、ソウル市長選に無所属で出馬するか、国会議員の再・補欠選挙に出馬するという選択が可能です。例えば、ナ・ギョンウォン議員(ソウル銅雀乙)がソウル市長選に出馬して議員職を辞せば、銅雀乙の補欠選挙に出馬することもできるでしょう。

 もちろん、いずれの場合も当選の可能性は高くはありません。結局のところチャン・ドンヒョク代表の国民の力もハン・ドンフン前代表も、お先真っ暗というのが現実です。

 まとめます。チャン・ドンヒョク代表によるハン・ドンフン前代表の除名は、国民の力を1990年以前の民正党に戻すのと同じです。2018年のホン・ジュンピョ代表の自由韓国党に戻すのと同じです。かといって、国民の力がすぐに滅びるということもなさそうです。政治の二極化のせいです。民主党に対する憎悪で団結した国民の力の強硬な党員と支持層が支えているからです。国民の力の運命は果たしてどうなるのでしょうか。みなさんはどうお考えですか。

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1242683.html韓国語原文入力:2026-02-01 08:48
訳D.K

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