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「ネックレスをもらったか」「誰に?」…人からもらった「尹前大統領夫人の貴金属」

登録:2025-10-04 06:43 修正:2025-10-04 10:11
尹錫悦前大統領夫人のキム・ゴンヒ女史が2022年6月29日(現地時間)、スペイン・マドリードのあるホテルで開かれたスペイン同胞晩餐懇談会に出席し、歓談している=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 8月12日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領夫人のキム・ゴンヒ女史の拘束前被疑者尋問(令状実質審査)の真っ最中だったソウル中央地裁321号法廷。「納得がいかない」と言い訳を並べていたキム女史の話を遮り、チョン・ジェウク令状担当部長判事が質問を投げかけた。「ところで、ヴァンクリーフ(&アーペル)のネックレスをもらったのは本当ですか」。キム女史は問い返すように答えた。「誰にですか」。キム女史が拘束令状の発付を自ら招いた決定的な場面だった。

 混乱していたからだろうか。大きな問題になった「ヴァンクリーフ&アーペル」のネックレスの出所さえもすぐに答えられないほど、キム女史をめぐる金品授受疑惑があふれ出し、特検政局を席巻した。2022年9月、チェ・ジェヨン牧師がキム女史に渡した300万ウォン(約31万4300円)の「ディオール」のバッグの100倍以上の約4億3000万ウォン(約4500万円)。キム女史がこれまで受け取ったと疑われる金品の総額だ。キム女史側に金品を渡そうとした疑いで捜査を受けている供与者だけで少なくとも5人。ミン・ジュンギ特別検察官(特検)チームは、彼らの供述と証拠を多数確保し、賄賂性の立証に捜査力を傾けている。

キム・ゴンヒ女史が8月6日、ソウル鍾路区のKT光化門ビル・ウェストに設けられたミン・ジュンギ特検チームで被疑者として取り調べを受けて帰宅している(左)。2022年6月、ソウル龍山公園でロボット犬が大統領執務室の警護用としてテスト運用されている(右)/聯合ニュース

 キム女史に「直接」金品を渡したという初めての告白が出たのは、キム女史の令状実質審査の前日である8月11日。「ロボット犬」事業を営むソ・ソンビン氏が5400万ウォン(約560万円)相当の「ヴァシュロン・コンスタンタン」の時計をキム女史に渡したと認めた。ソ氏はキム女史に頼まれ、この時計を「VIP割引」の適用を受けて3500万ウォン(約370万円)で代理購入したが、実際は時計代として500万ウォン(約52万円)しかもらっていないと陳述した。これが事実ならばキム女史は数千万ウォンの「簿外所得」を手に入れたものと推定される。ソ氏は尹錫悦政権初期に大統領警護処と随意契約を結び、「ロボット犬」による警護をテスト運営することにした人物。ただし、特恵疑惑で物議となり計画が白紙となったため、事実上見返りはなかったとソ氏側は主張する。

 翌日に開かれたキム女史の令状実質審査法廷では「自首書」も登場した。瑞煕建設のイ・ボングァン会長がキム女史に6200万ウォン(約650万円)台の「ヴァンクリーフ&アーペル」のネックレスと2200万ウォン(約230万円)台の「グラフ」のイヤリング、2600万ウォン(約270万円)台の「ティファニー」のブローチを贈り、自身の長女の夫であるパク・ソングン前首相秘書室長(弁護士)の公職任命を頼んだという内容だった。これに先立ち、キム女史側は「ヴァンクリーフ&アーペル」の模造品をキム女史の実兄の義母の家に置いて、特検チームの家宅捜索で発見されると、NATO訪問当時には模造品を着用したと主張してきた。ところが、イ会長がキム女史側に渡した後に返してもらった本物の「ヴァンクリーフ&アーペル」のネックレスを特検チームに提出したことで、キム女史の陳述は信憑性を失った。これに加えてイ会長が計4000万ウォン(約418万円)相当の「ヴァンクリーフ&アーペル」の貴金属4種をさらに購入した情況まで明らかになり、キム女史のさらなる金品授受疑惑がふくらんだ。特検チームは、イ会長の自首書をもとに捜査を続けながら、パク弁護士とハン・ドクス前首相に対し当時キム女史側の不当な人事介入があったかどうかを調べている。

キム・ゴンヒ女史に贈られたという疑惑が提起され、真偽をめぐる議論を呼んでいるイ・ウファン画伯の絵「点から No.800298」=2022年にこの作品をオークションに出した台湾の「ethereal auctioneers」のホームページよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 これらの貴金属はいずれもキム女史の親戚の家と事務室を家宅捜索する過程で発見された。この中でイ・ウファン画伯の絵「点から No.800298」は発見当時から話題になったが、最近キム・サンミン元部長検事が1億4000万ウォン(約1470万円)相当のこの絵を購入し、キム女史の実兄であるキム・ジヌ氏に渡した事実が明らかになった。特検チームは、キム元検事がキム女史の好みを把握し、実兄のキム氏に絵を渡しており、彼らの間で現金取引の内訳を確認できなかった点などを根拠に、この絵が賄賂性の贈り物だとみて、賄賂容疑で捜査を行っている。キム女史がこの絵を受け取ってキム元検事の公認を後押しし、公職を提供したと疑っているのだ。キム元検事はこれに対し「キム氏の要請を受けて代理購入しただけ」だと主張している。特検チームはまた、キム女史の親戚が運営する療養院などの金庫に保管されていた純金4~5匁(200万ウォン相当)の「金の亀」の像を発見し追跡していたところ、イ・ベヨン前国家教育委員会委員長がこれを請託目的でキム女史に渡した手がかりをつかみ、捜査を拡大している。

 キム女史は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)側から6220万ウォン(約650万円)相当の「グラフ」のダイヤモンドのネックレスと、それぞれ802万ウォン(約84万円)、1271万ウォン(約134万円)相当の2つの「シャネル」のバッグなどを受け取った疑い(特定犯罪加重処罰法の斡旋収賄)で、8月29日に起訴され裁判を受けている。キム女史はすべての貴金属について「もらっていない」とか「返した」という立場を貫いている。特検チームのあらゆる証拠が明らかになる公開法廷でも、キム女史がこのような確固たる態度を保てるかどうか見守りたい。

キム・ガユン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1222125.html韓国語原文入力:2025-10-03 20:34
訳H.J

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