内乱事件の捜査を担当したチョ・ウンソク特別検察官(特検)が18日夜、キム・ヨンヒョン前国防部長官を追加起訴し、超高速捜査に乗り出した。キム前長官が条件付き保釈を拒否したことで、「拘束期間満了」による釈放が予想され、その後は積極的な証拠隠滅がなされると懸念される中、「内乱ナンバーツー」に対する強制捜査で捜査の第一歩を踏み出したのだ。
チョ特検がキム前長官に適用した容疑は、地位を利用した公務執行妨害と証拠隠滅教唆。キム前長官は、非常戒厳前日の昨年12月2日、大統領警護処に嘘をついて予備の盗聴防止機能付携帯電話(秘話フォン)を受け取った後、ノ・サンウォン元司令官にこれを渡した疑いが持たれている。また、自分に随行していた警護処の職員のY氏に対し、自分のノートパソコンと携帯電話を壊して国防部長官公館の文書をすべて破棄するよう指示した疑いも持たれている。これらは検察の非常戒厳特別捜査本部などの捜査を通じて明らかになった内容であり、内乱謀議の情況と非常戒厳前後の時期の足取りを立証する物証は相当部分消えたものと推定される。
チョ特検は、キム前長官の積極的な証拠隠滅が懸念されるとして、任命されて6日で捜査を開始し、急いでキム前長官を追加起訴したものとみられる。内乱事件を担当するソウル中央地裁刑事25部(チ・グィヨン裁判長)は、キム前長官の拘束期間満了10日前の16日、裁判所が指定する日時と場所に出席し、証拠を隠滅せず、許可なしに出国しないという内容などが盛り込まれた誓約書の提出▽住居制限▽保証金1億ウォン(約1千万円)▽違反時の保釈取り消しと保証金の没取および過料などの条件付き保釈を決めた。ところが、キム前長官は「様々な保釈の条件を課すのは保釈制度の本来の趣旨を歪曲し、事実上の拘束延長と変わらない結果」だとして、執行停止申立てを行うなど、強く反発した。「証拠隠滅をしてはならない」という保釈条件まで拒否したことから、実際に釈放された後の証拠隠滅の懸念を高めた。「内乱のナンバーツー」であるキム前長官が、不拘束状態で裁判を受けている尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領と自由に接触し、口裏を合わせられる可能性が高くなったのだ。裁判所と検察がキム前長官の釈放をめぐり手をこまねいている中で、すでに確認された捜査結果をもとに特検がキム前長官を追加起訴した。チョ特検は、検察非常戒厳特別捜査本部所属の検事9人の派遣を受け、キム前長官の起訴を準備し、18日には警察庁国家捜査本部非常戒厳特別捜査団からキム前長官の捜査記録を提出してもらった。キム前長官側は「特検の準備期間中の追加起訴は違法」だと反発しているが、チョ特検は捜査を開始した後に追加起訴したと明らかにしているため、キム前長官側の異議申し立ては説得力がないものとみられる。
今やキム前長官の拘束の判断は「チ・グィヨン裁判長」に渡った。チョ特検はキム前長官を追加起訴した後、裁判所に保釈決定の取り消しと追加拘束令状の発付を要請した。裁判所が保釈を決めておいた状態でキム前長官の拘束状態を維持するのは矛盾であるためだ。ソウル地域のある判事は「キム前長官が今からでも保釈条件を履行すればひとまず釈放される状況」だとし、「釈放後に再拘束をするのか、裁判所が保釈を取り消して特検の拘束要請を受け入れるのか、見守らなければならない」と語った。
ただ、キム前長官とほぼ同じ時期に拘束期間が満了する軍司令官などに対しても、このような形の追加起訴と拘束令状の請求が行われるかどうかは不透明だ。追加起訴のためには現在裁判を受けている事件と異なる犯罪疑惑を適用しなければならないが、すでに明確に疑惑が特定されたキム前長官と軍司令官の状況は異なる可能性があるためだ。