ヨ・インヒョン前国軍防諜司令官は「12・3内乱時に主要人物の逮捕は指示していない」と否定しているが、当時の防諜司令部の捜査責任者は、野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表、与党「国民の力」のハン・ドンフン代表(いずれも当時)らの逮捕を同司令官から指示されたと証言した。
防諜司令部のキム・デウ前捜査団長(海軍准将、在宅起訴)は27日、中央地域軍事裁判所で行われたヨ前司令官の内乱重要任務従事容疑の公判に証人として出廷し、ヨ前司令官が戒厳当日にウ・ウォンシク国会議長、イ・ジェミョン代表、ハン・ドンフン代表ら17人の主要人物の名簿を口頭で読み上げ、彼らを逮捕して首都防衛司令部のB-1バンカー(地下施設)に移送せよと指示したと証言した。
キム前捜査団長は軍検察による証人尋問で、「ヨ前司令官は『(キム・ヨンヒョン)長官から名簿を受け取った。書き取れ』と言って一人ひとり読み上げた。その人員を捕らえて拘禁施設、首都防衛司令部のB-1バンカーに移送しなければならないと指示された」と述べた。
ヨ前司令官が読み上げた名は、ウ・ウォンシク(国会議長)、イ・ジェミョン(民主党代表、当時)、ハン・ドンフン(国民の力代表、当時)、チョ・グク(祖国革新党代表、当時)、パク・チャンデ(民主党院内代表)、チョン・チョンネ(国会法制司法委員長)、イ・ハギョン(国会副議長)、キム・ミンソク(民主党首席最高委員)、チョ・ヘジュ(元中央選挙管理委員会常任委員)、ヤン・ギョンジュ(民主労総委員長)、キム・オジュン(放送人)、キム・ミヌン(ろうそく行動代表)、キム・ミョンス(前最高裁長官)、ヤン・ジョンチョル(元民主研究院長)の14人。
キム前捜査団長は、14人の容疑はどのようなものかを尋ねたところ「容疑は知らない」と言われたとして、「容疑は後で具体的に下りてくるだろうと思ったが、名簿そのものが政治家だったから、最初に読み上げられた時から変だなとは感じた」と語った。
ヨ前司令官は、主な政治家の逮捕を指示した事実はないと否定している。ヨ前司令官は先の軍事裁判の公判で、「キム・ヨンヒョン前長官から位置確認を指示されたが、名簿にあった人物の住所、携帯電話番号も分からなかった。ウ・ウォンシク、イ・ジェミョン、ハン・ドンフンを事前に逮捕するためではなく、位置確認のためだった」と主張している。そして「逮捕という用語を用いたり逮捕を要請したりしたことはなく、単に位置確認を要請したに過ぎない」と主張している。
キム前捜査団長はヨ前司令官のこの主張について、「戒厳宣布時の合同捜査団の任務は戒厳事犯を逮捕すること」だとし、「司令官は『捕らえて移送せよ』と言った。『逮捕して移送せよ』という意味だと捉えた」と語った。また、防諜司は民間人の逮捕が制限されているため、警察や軍事警察とともに合同捜査団を設置して行うべきだと考えた、とも述べた。
キム前捜査団長はまた、警察と国防部調査本部の人員派遣が遅れていたため、防諜司の捜査官だけでも早く出動するようヨ前司令官に催促されたと証言した。また、防諜司の捜査官だけでも出動するよう指示された際、「直接逮捕したり接触したりしてはならない」という指針が下されたと主張した。
この日の公判では、ヨ前司令官が戒厳解除後に「逮捕名簿」の存在そのものを隠ぺいしようとしていたことも明らかになった。キム前捜査団長は「ヨ前司令官に、名簿は最初からなかったことにせよと指示されたのか」と軍検察に問われ、「そうだ。その指示には従わないと言った」と語った。同氏は「ヨ前司令官に私は『名簿はあるか』と聞かれた。『なくせないのか』と言われた。『出動時に捜査官たちに名簿を渡したので、全員知っている、隠すことはできない』と答えた」と語った。
キム前捜査団長は、普段は指示が具体的で詳細だったヨ前司令官が、戒厳時には言葉を控え漠然と指示していたとして、「具体的に指示すればするほど過ちにかかわってしまう恐れがあるから、核となる指示だけをしたのだろう」と述べた。同氏は「取り調べを受けて、ヨ前司令官は(戒厳宣布を)事前に知っていたと判断した」と語った。