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北朝鮮、韓国も作れなかった「早期警戒機」を初公開…実際に機能するのか

登録:2025-04-07 06:38 修正:2025-04-07 09:30
クォン・ヒョクチョルの「見えない安保」
北朝鮮の金正恩国務委員長が25日と26日、無人航空技術連合体と探知電子戦研究集団の国防科学研究事業を視察したと、朝鮮中央通信が27日付で報じた。写真は北朝鮮が初めて公開した空中早期警戒管制機とみられる航空機/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮官営「労働新聞」は27日付で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長が新型無人戦略偵察機の性能試験と自爆攻撃型無人機の打撃試験を視察したと報じ、空中早期警戒機の実物を初めて公開した。この日の「労働新聞」には金委員長など幹部たちが早期警戒機に搭乗する姿、機内で指示を下す場面、機が飛行する場面などが掲載された。2023年10月、北朝鮮が高麗航空の貨物機イリューシン(IL)76を空中早期警戒管制機(早期警戒機)に改造する動きが、米国の商業衛星写真に撮られたことで明らかになっている。

 北朝鮮の早期警戒機は、ロシア製IL76にレドームを搭載した形だ。レドームとはレーダーとドームを組み合わせた言葉で、航空機の外部に付着したレーダーアンテナの防水・防塵用カバーを意味する。旧ソ連は1970年代にIL76を改造して早期警戒機A50を作った。

 早期警戒機は、空中指揮管制システムを搭載し、早期警戒、航空機管制、戦場管理任務を遂行する航空機。空中で脅威になる異常兆候を発見すれば、これに対応する戦闘機を指揮する「空の指揮所」、「空の防空管制所」だ。地球は丸く、電波は直進するため、地上配置レーダーは目標が遠くなるほど探知しにくくなるが、飛行機にレーダーを付けて下にレーダーの電波を照射すると、電波がぶつかることなく広い地域を探索できる。 特に山岳地帯が多く、地上レーダーの電波が届くのに限界がある朝鮮半島の地形では、空中早期警戒機がさらに有用だ。

 早期警戒機を開発した国は、米国、中国、ロシア、スウェーデン、イスラエル、ブラジルなど、両手で数え上げられる程度だ。韓国は2011〜2012年、早期警戒機E737「ピースアイ」(平和を守る目)4機を米国ボーイング社から購入した。国内開発をするには先端技術が必要であり、高いためだ。ボーイングは外国に早期警戒機を売る際、1機あたり1兆ウォン(約1005億円)前後まで要求している。

北朝鮮の金正恩国務委員長が25日と26日、新たに開発・生産している無人航空技術連合体と探知電子戦研究集団の国防科学研究事業を視察したと朝鮮中央通信が27日付で報じた。写真は、北朝鮮が初めて公開した空中早期警戒管制機とみられる航空機を金委員長が眺めている様子/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮が韓国より先に早期警戒機を作ったというが、韓国軍当局の評価は低い。合同参謀本部のイ・ソンジュン広報室長は27日の定例ブリーフィングで、「改造された北朝鮮の早期警戒機は非常に鈍重で、迎撃にも脆弱だと判断している」と述べた。

 早期警戒機は滞空時間がカギだ。長く空中に留まれば留まるほど、隈なく監視できるからだ。早期警戒機は任務飛行中の航空機、非常時に備えた予備航空機、整備中の航空機を含め、少なくとも3機が必要だ。北朝鮮のように1機だけだと、任務遂行が可能なのは1日7〜8時間に限られるため、監視に空白が生じ、整備する暇もなく継続飛行すると故障しやすい。

 韓国はピースアイ4機のうち2機が交代で任務を遂行し、1台は予備機、1台は交代整備をする。ピースアイ1機の滞空時間は8時間ほどで、2機が交代で飛行すれば、1日16時間の空中監視が可能だ。防衛事業庁は2023年5月、早期警戒機4機を3兆900億ウォンをかけて2031年までに導入する航空管制機2次事業購入計画案を審議・議決した。空中における脅威に備え、24時間空中監視能力を備えるためには、早期警戒機を追加で4機確保しなければならないためだ。早期警戒機を8機備えてこそ、朝鮮半島の上空を24時間きちんと監視できるが、北朝鮮の経済状況を考えるとそれは不可能だ。

韓国空軍の早期警戒管制機「E737ピースアイ」が飛行している。早期警戒管制機は空中の目標を探知、分析し、味方の航空管制および指揮を遂行し、様々な脅威に効果的に対応できる=韓国空軍本部のホームページより//ハンギョレ新聞社

 実戦で早期警戒機を活用するためには、味方の戦闘機との連携システムが必要だ。早期警戒機が敵を発見しても、これを味方の戦闘機に直ちに知らせなければ、意味がないからだ。早期警戒機が敵の戦闘機の動きを捉え、自国の戦闘機に撃墜するよう知らせるシステムが「データリンク」だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領は先月25日、弾劾審判の最終意見陳述で、「巨大野党が主要国防予算を削減し、韓国軍を無力化している」と主張し、与野党の合意で減額した戦術データリンクシステムの性能改良事業予算の削減など5つの事業をその事例として誤って挙げた。ピースアイが収集した情報はデータリンク機能を通じて、空軍の中央防空管制所(MCRC)、F15K戦闘機、海軍のイージス駆逐艦、在韓米軍などとリアルタイムで共有される。

 北朝鮮にデータリンク技術があるかどうか不明なうえ、北朝鮮の戦闘機の中で最も最新機種であるミグ29は1980年代後半に導入された機体で、早期警戒機とデータリンクは不可能だ。北朝鮮が早期警戒機を作っても、これを戦闘機と連携させて実際の作戦を遂行することは難しい。ウクライナ戦争を機に、北朝鮮と密着したロシアがデータリンク技術を北朝鮮に渡し、北朝鮮の戦闘機の性能改良を支援する可能性はある。

2022年1月1日当時、ソ・ウク国防部長官が搭乗した空軍早期警戒管制機「ピースアイ(E737・左)」が戦闘機F15KとKF16の援護を受けながら、西海上空を飛行している=韓国国防部提供//ハンギョレ新聞社

 早期警戒機は、味方の戦闘機編隊の護衛を受けながら、後方から敵陣を監視しなければならないが、北朝鮮空軍戦闘機は古すぎて早期警戒機を援護する力が足りない。韓国軍当局が「北朝鮮の早期警戒機は迎撃に脆弱だ」と指摘したのはそのためだ。韓国はピースアイが飛行する時、F15KとKF16戦闘機編隊が横で援護飛行を行う。

 北朝鮮は1990年代の社会主義圏崩壊後、旧ソ連との友好関係が終わり、ミグ29を最後に新型戦闘機の導入が中断された。北朝鮮空軍は、ミグ29約30機を除けば、ミグ21、ミグ19など老朽化した戦闘機が大半だ。ミグ19とミグ21は1950年代に開発された戦闘機で、21世紀の航空戦を遂行するには古すぎる。ミグ19は第3世界の低開発国家でも淘汰され、ミグ21は韓国空軍がほぼ退役させたF5E/Fと同じ級の老朽機種だ。北朝鮮空軍は、KF16、F15K、F35Aなどを備えた韓国空軍の相手にならない。韓国軍当局は「もし戦争が起きたら、数時間以内に朝鮮半島の空から北朝鮮空軍は消える」と語る。

 北朝鮮がロシアの支援で早期警戒機にデータリンクシステムを備えても、韓国空軍の戦闘機を撃墜する戦闘機がない。北朝鮮が苦労して作った早期警戒機は、韓国空軍の主力機である戦闘機KF16を相手にできるくらいの戦闘機を確保すればこそ、ようやく軍事的意味を持つようになる。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/polibar/1189404.html韓国語原文入力:2025-03-30 19:15
訳H.J

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