大統領警護処のキム・ソンフン次長が非常戒厳後、軍司令官と尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の通話記録が残っている盗聴防止機能付き電話(秘話フォン)の端末情報を削除するよう繰り返し指示したことに対し、警護処の実務担当者が「証拠隠滅の素地がある」という内容の公式報告書を提出し、これを拒否していたことが確認された。検察による拘束令状棄却でキム次長は今も警護処長職務代行として盗聴防止機能付き電話のサーバの押収を阻んでいるため、内乱の主な証拠が隠滅される可能性が高まっている。
23日のハンギョレの取材と野党「共に民主党」のユン・ゴニョン議員室が確認した内容を総合すると、キム次長は昨年の非常戒厳直後、盗聴防止機能付き電話を管理する警護処の職員に、非常戒厳に動員された軍司令官の端末データを削除するよう指示したが、拒否された。キム次長はその後も「保安強化のためのもの」と言って繰り返し類似の趣旨の指示を下していた。結局、警護処の職員たちは昨年12月12日、「処の保安電話のセキュリティ強化策の検討結果」と題する文書を作成し、キム次長に報告した。文書には、キム次長が昨年12月7日に「全端末内のデータ削除」を指示したという内容が記されており、「検討事項」として「刑法155条(証拠隠滅)に関する問題の素地」と記録されている。キム次長の指示は証拠隠滅に当たる可能性があるということだ。キム次長が違法な指示を繰り返していたことから、公式の報告文書を作成して拒否の理由を明示したものとみられる。
警察庁国家捜査本部非常戒厳特別捜査団(特捜団)は、データ削除指示は大統領警護法の職権乱用に当たるとして、特殊公務執行妨害容疑も適用し、今月13日にキム次長に対する3回目の拘束令状を検察に申請した。しかしソウル西部地検は「保安流出を懸念した措置であり、実際に削除した記録はない」というキム次長の主張を認め、拘束令状をまたも棄却した。
キム次長に掌握された警護処は、特捜団が試みている盗聴防止機能付き電話の記録の押収を依然として拒否するものとみられる。2日間隔で自動削除される盗聴防止機能付き電話の記録はフォレンジックなどの方法でよみがえらせることができるが、人為的に削除されたり、時間が経過したりすると復旧の確率が下がる。キム次長の強制捜査は盗聴防止機能付き電話の記録の確保と密接な関係があるが、検察が釈然としない理由で拘束令状を繰り返し棄却しているため、内乱の核となる証拠の確保の可能性が消えつつある。西部地検の関係者は「法と原則に則って現出された証拠を十分に検討し、令状を棄却した」と述べている。