「尹錫悦大統領は立派な方だ。もっとも改革的な大統領でもある」
ハン・ドクス大統領権限代行兼首相が26日の国民向け談話で「与野党が合意して案を提出するまで憲法裁判官の任命を保留する」と表明した中、ハン権限代行の3カ月前のインタビューが改めて注目を集めている。内乱を首謀した容疑がかけられている尹大統領と、やはり内乱罪の被疑者であるハン権限代行の普段の関係がうかがわれる内容だからだ。
ハン権限代行は9月30日に公開された「朝鮮日報」のインタビューで、「尹大統領はどうか」と問われ、「立派な方だ。もっとも改革的な大統領でもある」と答えている。「人気にこだわらないからか」という記者の問いには、「国家か人気かと言われれば、(尹大統領は)当然国家であり、国民であるはず」と答えている。今年9月は、医学部増員問題に触発された医政対立と医療の空白の長期化に伴って、尹大統領の支持率が政権発足後の最低値である27%にまで下落した時期だったにもかかわらず、ハン権限代行はそれについての問題意識や解決策を提示するのではなく、尹大統領を「もっとも改革的」だと持ち上げていたのだ。
「尹大統領は国民より夫人を優先していると批判されている」との質問には、「政府のことは法と手続きに則ってなされる」として「大統領は記者会見でも謝罪した。このくらいで国民は理解してくれるべきではないか」と答えている。
ハン権限代行の述べた謝罪とは、尹大統領が5月の「尹錫悦政権2年・国民報告および記者会見」で、(大統領夫人)キム・ゴンヒ女史のブランドバッグ受け取り事件について「私の妻の賢明でない行いで国民の皆さまにご心配をおかけした部分について謝罪申し上げている」と発言したことを指す。様々な批判にさらされているキム女史を尹大統領が一方的にかばっているという批判が高まっていた中で、ハン権限代行は「大統領は謝った」との理由をあげて反論しているのだ。
ハン権限代行はこのインタビューで、戒厳令についても述べている。「韓国社会は反知性的か」と問われ、ハン代行は「『選択的真実』という言葉が出てくるのはよっぽどのこと」だとして、「『戒厳令』のような怪談やフェイクニュースの弊害が繰り返されないよう、制度的装置を設けなければならない」と語っている。今年8月に野党「共に民主党」のキム・ミンソク最高委員は、尹大統領の「反国家勢力」発言とキム・ヨンヒョン警護処長(当時)の国防部長官候補起用について「弾劾に備える戒厳令準備作戦」だと主張していた。
かつてハン権限代行が「怪談」だとみなした戒厳令は、尹大統領によって今月3日に実際に宣布された。しかし、国会前に駆けつけて身一つで戒厳軍を阻んだ市民、非常戒厳に動員された兵士たちの消極的な抗命、国会の迅速な非常戒厳解除決議のおかげで、戒厳は失敗に終わった。
ハン権限代行は現在、内乱容疑で告発されている被疑者でもある。野党側は、ハン代行が3日の非常戒厳宣布時に、戒厳の手続き上の穴を塞ぐために国務会議を招集したのではないかと疑っている。
今月11日の国会での緊急懸案質問では、民主党のイ・ソヨン議員に「(非常戒厳を阻むために尹大統領を)引き留めでもしたのか」と問われ、ハン権限代行は「今考えてみれば、せめてそのくらいはすべきだったと思う」と答えている。だが、2日後に再度開かれた国会の緊急懸案質問では、「首相が被疑者の身分だということは、内乱・戒厳の同調者になりうるということだ」と民主党のチョ・ジョンシク議員に指摘され、「私はそのようなことはしていない。(同調者かどうかは)私が積極的に捜査に協力し、捜査当局が決定すべきことだと思う」と述べている。
一方この日、民主党のパク・チャンデ院内代表はハン権限代行の談話について、「内乱代行であることを認めた談話であった」として、「権限を代行する資格も、憲法を守る意志もないことが明らかになった」と批判した。