12月3日の非常戒厳宣布で内乱首謀者の疑いが持たれている尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、25日に指定された高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の2回目の出頭要請に応じなかった。検察の2度にわたる出頭要請にも応じなかったことまで合わせると、今回で4度も取り調べを拒んだことになる。法曹界では、尹大統領が調査に応じない意向を明確にしたことを受け、迅速な強制捜査に踏み切るべきという声があがっている。
尹大統領は、公捜処が出頭を要請した同日午前10時、政府果川(クァチョン)庁舎に姿を現さなかった。公捜処の関係者は記者団に対し、「(尹大統領が)出頭要請に応じなかった」と述べた。公捜処は同日、尹大統領の出頭を前提に、終日にわたり取り調べを進められるほどの質問事項を用意していたが、尹大統領は同日午後まで出頭はもちろん、弁護人選任係と欠席理由書なども公捜処に提出しなかった。これに先立ち、公捜処は16日にも、18日に出頭するよう尹大統領に通知したが、尹大統領はこれに応じなかった。
尹大統領の取り調べが繰り返し不発に終わったことで、公捜処は3度目の出頭要請をするか、または逮捕状を請求するかをめぐり頭を悩ませている。当初、オ・ドンウン公捜処長は尹大統領の逮捕について、国会などで「十分な意志がある」と公言したが、最終決定を控えては慎重な態度を示している。現職の大統領を逮捕した前例がないうえ、裁判所が現職の大統領の地位を考慮し、逮捕状などを棄却する可能性もあるためだ。公捜処関係者は「(逮捕状請求は)通常、一般の刑事手続きでは3回取り調べに応じなかった場合に請求するが、(今回は)様々な考慮事項が多い」とし、「通常の手続きに従うかどうかなどを検討している状況」だと語った。
法曹界では、尹大統領が捜査に応じる意志がないことは明らかであるため、公捜処は直ちに逮捕状を請求し取り調べに乗り出すべきだという声があがっている。尹大統領は、公捜処が大統領室総務秘書官と付属室などに送った出頭要請書をいずれも受け取っていない。
尹大統領側は捜査に応じない意思を公に示している。尹大統領側のソク・トンヒョン弁護士は前日、記者団に「弾劾審判が(捜査より)優先されるべきだ」とし、捜査については、「密室という表現を使えば、敏感に受け止められるかもしれないが、(非常戒厳は)問答で大統領が立場と事情と行為を捜査官に説明するような事案ではない」と述べた。さらに、「権限が停止されただけで、(尹大統領は)厳然たる現職の大統領だ」とし、「朴槿恵(パク・クネ)元大統領の場合も(憲法裁で)弾劾で地位を失った後に捜査が進められたと聞いている」と語った。弾劾審判の結論が出るまで捜査に応じないという意志を示したものといえる。しかし、朴元大統領の容疑は、現職大統領の不訴追特権が適用される賄賂罪などだった。現職大統領でも裁判にかけられる内乱罪の容疑者である尹大統領とは全く状況が異なる。
慶煕大学法科大学院のソ・ボハク教授は「内乱罪の主要容疑者たちが、内乱の中心が尹大統領だと名指ししているにもかかわらず、尹大統領が自発的に調査に応じる可能性はないものとみられる。逮捕状または拘束令状の請求など強制捜査が必要な状況」だとし、「公捜処が強制捜査について断固として決断できなければ、公捜処もまた国民の審判を受けることになるだろう」と語った。