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梨泰院惨事の映像が流れ、あふれた涙と憤り…苦しみの中で法廷見守った遺族

登録:2024-07-24 09:21 修正:2024-07-24 11:14
遺族とともに見守った「梨泰院裁判」 
梨泰院惨事で業務上過失致死容疑などで起訴されたイ・イムジェ元龍山警察署長らに対する一審の最後の公判が開かれた22日午前、ソウル麻浦区のソウル西部地裁前で、梨泰院惨事の遺族が防止対策を取っていなかったことの責任を問い、デモをしている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 「CCTV(防犯カメラ)を見ると、22時10分に停止していた群衆が後ろから強く押されている、Tゾーンの方向へと(市民が)押されていっているのが見て取れます」

 梨泰院(イテウォン)惨事でずさんな対応を取ったとの疑いで起訴された龍山(ヨンサン)警察署の関係者たちに対する判決前の最後の公判が開かれた今月22日、法廷では2022年10月29日の惨事直前の映像が再生された。イ・イムジェ元龍山警察署長の弁護人が「(惨事は)他の人が押したために発生した」と主張するために示した映像だ。

 ハンカチを握りしめて座っていた遺族のパク・ヨンスさん(故イ・ナムフンさんの母親)は、映像が再生された瞬間、耐えきれずに法廷を飛び出してしばらく泣いていた。「画面のどこかにうちの子がいるだろうという気がして、とてもつらかったです。あの時を思い出し、関係した人と一緒に座っている空間そのものがつらいです」。パクさんは涙をふいて再び法廷に入った。裁判に犠牲者、遺族、生存者が存在していることを知らしめるため、席を空けることはできなかった。ハンギョレはこの日、パクさんに同行し、遺族の目に映った梨泰院裁判を取材した。

 裁判を傍聴する遺族は前日から緊張状態に置かれる。パクさんは、「法廷では(発言の機会がないと)抗弁できないので、被告人の弁護内容を聞きながら無言で憤りを表現する家族が多い。つらいことだ」と話した。この日の朝、気を引き締めてソウル中区(チュング)の「10・29梨泰院惨事記憶・疎通空間」を出たパクさんは、裁判が行われるソウル西部地裁の前に立った。法廷に入る前に他の遺族たちと共に、「なぜ群衆対策を立てなかったのか」と記したプラカードを手にした。「同じ遺族同士は苦しみはよく分かりますが、それ以外の人たちはよく分かっていないから、何とか市民に分かってもらいたいという気持ちがいちばん大きいです」

 ソウル西部地裁刑事合議11部(ペ・ソンジュン裁判長)の審理で行われたこの日の結審公判は、イ・イムジェ元署長の弁護団による検察の提示した証拠への反論から始まった。傍聴席で静かに陳述を聞いていた遺族がざわついたのは、イ元署長の弁護人の一人が事故現場を映したCCTV映像を見せた時だ。遺族はため息をついたり、ハンカチを目元に当ててとめどなく流れる涙をぬぐったりした。弁護人が、今回の惨事は「他人が押したせいで」発生したとする主張を展開すると、遺族たちは耐えきれず「無茶苦茶なことを言っている」と叫んだ。他の遺族と同様に目じりを涙で濡らしたパクさんは、「まるで(被害者が)無秩序な行動を取ったから惨事が起きたという主張ではないか。2次加害だと感じた」と話した。

 パクさんは、イ元署長の被告人尋問と最終陳述の際には「複雑な心境」だと語った。イ元署長はこの日、「龍山(ヨンサン)への大統領室移転」のせいで「殺人的な業務量ですべての職員が食事も取らずに働いていた」と述べた。「警察署長として無限の責任を感じる。あらゆる批判と非難を謙虚に受け止める。すべてを捨てる」と語った際には涙を流した。パクさんは「イ元署長も『人間だったんだな』と感じ、その言葉が心からのものであることを願った。初めて(謝罪が)心に響いた」と述べつつも、「結局は、159人の命をもって大統領の安全を守ったという言い訳に他ならない」と付け加えた。

 10時間近く行われたこの日の裁判が終わるころ、パクさんに発言の機会が来た。前日の夜、何度も確認した最後の発言文を、震える声で裁判官の前で読み上げた。「これから生きていかなければならない孫たちには、韓国に対する『不信』ではなく、韓国のいち市民として自負を持って生きていけると言えるおばあさんになりたいと思っています」

 検察はこの日、イ元署長に懲役7年を求刑した。判決は9月30日だ。

キム・ガユン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1150399.html韓国語原文入力:2024-07-24 06:00
訳D.K

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