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中国、尹大統領の「両岸関係に対する立場」曲解か…意図的な外交欠礼が疑われる

登録:2024-05-28 08:38 修正:2024-07-25 11:11
「一つの中国の立場」堅持してきた尹大統領 
中国は「一つの中国原則」として発表 
「原則」は「力による現状変更の試み」を含む 
尹錫悦大統領が26日、ソウル龍山の大統領室庁舎で、中国の李強首相と握手している=大統領室提供/聯合ニュース

 26日の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と中国の李強首相との首脳会談で、両国は韓中外交・安保対話の新設などに合意し、経済問題で具体的な協力策を示したが、中国側の発表にある「一つの中国原則」という表現が微妙に波紋を呼んでいる。

 中国外交部は発表の性格を持つ26日夜の報道で、尹錫悦大統領が「韓国は『一つの中国原則』を堅持しており、このような立場は変わっていない」、「過去のように揺らぐことなく韓中関係の発展に努める」と述べたと伝えた。

 韓国政府は中国と台湾との両岸関係について「一つの中国を尊重する立場」を基本として維持している。だが、一つの中国の「立場」と「原則」では、微妙だが大きな違いがある。

 中国式の表現である「一つの中国原則」は、中国と台湾は一つの国家であり、中華人民共和国のみが唯一の合法的な政府であり、さらには、中国はいかなる手段を使っても台湾統一を実現するという意味を含んでいる。中国は自国と国交関係を結ぶ各国に対し、これを「原則」として守り、台湾を国家として認めないよう求めており、ロシアをはじめとする中国に近い国々は「一つの中国原則を順守する」と公に発言している。

 これとは異なり韓国の「一つの中国の立場」は、中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であることを尊重するという意味に限定される。韓中国交樹立共同声明は、「大韓民国政府は中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認し、ただ一つの中国のみが存在し、台湾は中国の一部だという中国の立場を尊重する」という文言でまとめられている。そのため、中国の「力による現状変更の試み」には同意していない。米国の「一つの中国政策」も似たような立場だ。

 中国側の発表文どおりなら、尹大統領が従来の「一つの中国の尊重」という立場を変え、中国の要求どおり「一つの中国原則」を支持したという意味になる。これについて外交部は27日、「韓国政府は1992年の韓中国交樹立以来、一つの中国を尊重する立場を維持し、今回の会談でもそのような趣旨の発言があった」とし、「それと共に韓国側は、台湾海峡の平和と安定は、朝鮮半島はもちろん、北東アジアの平和と繁栄にとっても重要だということを強調した」と述べた。中国側の発表とは違いがあるが、韓中協力を強調している中、韓国が中国側にこれについて抗議する可能性は低いとみられる。

 韓国外交当局の説明どおりなら、中国外交部は韓国首脳の表現を中国式に変えるという「意図的な外交欠礼」に当たる発表をしたことになる。しかも台湾問題の敏感さを考慮すれば、非常に意味深長な「外交欠礼」でありうる。

 中国は何を意図しているのだろうか。台湾で先日、独立志向の強い頼清徳総統が就任して以降、中国は台湾問題に非常に敏感になっている。他国に対して「一つの中国原則」を受け入れるよう強く要求しており、台湾を包囲する封鎖演習をおこなってもいる。

 しかも、尹錫悦大統領は昨年4月の米国への国賓訪問を前におこなったロイター通信のインタビューで、台湾についての「一線を越える発言」で中国と衝突した当事者だ。このインタビューで尹大統領は、「結局、力による現状変更の試みのせいで台湾海峡の緊張が起きた」、「韓国は国際社会と共にそのような変化に全面的に反対する。台湾問題は単なる中国と台湾の問題ではない。北朝鮮問題と同様にグローバルイシューだ」と述べた。この発言に対して、中国外交部の報道官は「台湾問題についての口出しは容認しない」と強く反発し、それが韓中関係悪化の大きな原因となってきた。中国はその後、韓中関係改善の条件として、台湾問題について明確な立場を明らかにするよう韓国に要求し続けてきた。26日の韓中首脳会談で「問題の当事者」である尹大統領が中国の立場を支持する発言をおこなったとすれば、中国政府が国内世論に向けて重要な外交的成果として掲げうる。

 しかし、このような中国の意図に韓国が引きずられることは、国際的に韓国の外交的立場を困難なものにする恐れがある。漢陽大学国際大学院のムン・フンホ名誉教授(中国学)は、「台湾問題についての一線を越える発言で中国を刺激したかと思えば、中国と少し関係が改善する兆しが見えると中国の要求どおりに引きずられすぎて台湾を完全に無視するという格好で、明確な座標なしに極と極を行き来するのは問題」だと指摘する。ムン教授は「李強首相の今回の訪問の主な目的の一つは、台湾問題について韓国から明確な立場を引き出すこと」だとしつつ、「台湾問題は今回の一度で終わるものではなく、国際情勢と連動しているため、韓国は明確な原則と座標をもって対応すべきだ」と強調する。

 26日に駐韓中国大使館が配布した会談結果発表文の非公式の韓国語翻訳本には、「尹大統領は一つの中国原則を堅持すると述べた」という文言はない。中国外交部は国内世論と海外読者を分けて考慮したのだろうか。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1142189.html韓国語原文入力:2024-05-27 11:58
訳D.K

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