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台湾総統選、中国への拒否感が戦争の危機感に勝つ

登録:2024-01-15 06:44 修正:2024-01-15 07:27
与党民進党の頼清徳候補の勝利の背景は
13日夜、台湾・台北で民進党の支持者たちが総統選で支持候補の勝利を確認し、喜んでいる=台北/AP・聯合ニュース

 台湾総統選が「民主主義の守護」を強調した与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳候補の勝利で幕を下ろした。2019年の香港事態後に強まった中国に対する拒否感が、両岸の対話断絶などから生じた戦争への危機感より強かったためだと分析されている。野党側の分裂と創立5年目の民衆党の善戦も、「8年政権与党」の政権延長に決定的な役目を果たした。

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反中感情の決定的なきっかけは2019年の香港事態

 民進党は、今回の総統選のスローガンとして「民主対独裁の対決」を掲げた。現在の台湾を「民主」と、台湾を脅かす中国を「独裁」と設定し、選挙で自分たちが勝ってこそ、台湾の民主主義を守ることができると強調した。民進党は台湾独立を綱領にして、米国などの民主勢力と協力して中国に対抗しなければならないと主張する。

 第1野党として8年ぶりの政権奪還を推進した中国国民党(国民党)は、「平和か戦争か」をスローガンとして打ち出した。自分たちが政権を担うことで、民進党政権の8年間で強まった戦争の雰囲気を平和の雰囲気に変えなければならないということだ。国民党は中国との対話と交流・協力の拡大を主張している。

 民主主義を主張した民進党の勝利によって、中国に対する拒否感が台湾社会を今でも支配していることが確認された。2022年に3期目が確定した中国の習近平国家主席は「武力の使用を絶対に放棄しない」と述べるなど、台湾に対する統一の意志をますます露骨に示しているが、さらに台湾は遠ざかる状況にある。

 台湾社会に反中感情が広がった決定的なきっかけは、2019年の香港事態だった。中国警察が香港市民を暴力で鎮圧する映像が数カ月間報道されてから、中国に対する拒否感が爆発し、20%に達していた統一に賛成する世論は10%台に下落した。支持率が低迷していた蔡英文総統は、香港事態後の2020年1月の総統選で「今日の香港は明日の台湾」というスローガンを掲げ、57%の得票率で再選に成功した。忠南大学平和安全保障研究所のチャン・ヨンヒ研究委員は、ハンギョレのインタビューで「2019年の香港事態の影響で、台湾総統選に親中国勢力は存在できなくなった」と述べた。

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6ポイント差の辛勝が語るもの

 中国の軍事的脅威に対する危機感も小さくない状況にある。戦争と平和の枠組みを掲げた国民党は今回の選挙で33.49%の支持率を得て、1位の民進党(40.05%)との差はわずか6ポイントだった。今回の選挙を控え中国は、台湾に対する軍事的圧力を強化し、中国との対話と協力を主張する国民党を支援した。民進党が政権を握れば台湾海峡で戦争が起きる可能性があるという主張まで飛び交った。

 しかし、そうした主張は、国民党に対する強力な支持にはつながらず、むしろ中国に対する拒否感を強める方向に作用したとみられる。台湾統一を最大の目標として掲げる中国は、目標を達成するためには、現在の台湾政策を全面的に再検討しなければならない状況に追い込まれることになった。

13日、台湾・新竹市で民衆党の支持者たちが総統選の結果を見て歓声を上げている=新竹/AFP・聯合ニュース

 政治工学的には、2つの野党の候補一本化の失敗が民進党の勝利に決定的な役割を果たしたとみられる。国民党の侯友宜候補と民衆党の柯文哲候補は昨年11月に野党一本化を試みたが、意見の違いを埋めることができず、一本化に失敗した。

 台湾は、2000年から政府与党は8年以上は政権を取れない流れがあり、民進党政権の8年に対する国民の疲労も小さくなかった。前回の2020年の総統選挙で蔡英文総統は57%の圧倒的な支持率で勝利したが、今回の選挙での頼清徳候補の得票率は40%にすぎなかった。反面、2つの野党は今回の選挙で合わせて60%の支持を得た。

 野党側の候補一本化や協力が行われていたとすれば、違う結果になった可能性はなくはない。特に、今回の選挙で第3の候補として出馬した民衆党の柯文哲候補が26%の支持を得た点は、示唆するところが大きい。1996年の総統直接選挙制の導入後、30年近く維持されてきた国民党と民進党の2党構造が、結党5年の民衆党によって事実上崩されたことになるからだ。既存の政界に対する台湾国民の失望がかなりのものであることを示している。民衆党の主な支持層が20代と30代の青年層であるため、若年層の支持が少なくない民進党の支持層もかなりの部分が吸収されたものとみられる。

台北/チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1124234.html韓国語原文入力:2024-01-14 11:47
訳M.S

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