本文に移動

「一触即発」意気込む南北…剣の刃を渡るような365日(2)

登録:2024-01-11 00:25 修正:2024-01-11 09:47
朝鮮半島、一年中危機…8月が最も懸念される 
トランプ前大統領が返り咲いた場合、韓米関係の一大激変は避けられず
ドナルド・トランプ前大統領が1月7日、アイオワ州での選挙遊説で、ジョー・バイデン大統領を真似してからかっている/ロイター・聯合ニュース

(1から続く)

 これは数十年間、朝鮮半島上空を徘徊してきた戦争危機説が、朝米関係中心のものから南北関係中心へと移りつつあることを意味する。にもかかわらず、南北当局は戦争防止と危機管理に力を注ぐというより、「指一本でも触れたらタダじゃおかない」と相手をにらみ付けることに余念がない。舌戦と武力示威の攻防戦で始まった今年1年の不安な情勢が1年中続く恐れも大きい。特に韓米の「核作戦演習」が予定される8月に、朝鮮半島危機はピークに達する見通しだ。昨年下半期から「目には目を、歯には歯を」流の軍事的対応を示してきた北朝鮮も、「核戦争訓練」で対抗する公算が高いためだ。韓米と北朝鮮は、相手に最大限の恐怖を与えてこそ平和が守れると信じているが、この過程で人間の判断ミスや誤認、そして機械の誤作動で戦争が起きることもあり得る、というのは戦争史の教訓だ。

 今年、世界各地で実施される選挙も注目される。朝鮮半島情勢と関連しては、特に2つの選挙が重要だ。一つは1月13日に予定される台湾総統選挙だ。民主進歩党(民進党)が政権交代に成功すれば、東アジアおよびこれと連動する国際情勢の不確実性も高まるだろう。台湾危機は、国交正常化以来最悪の状態に陥った韓中関係には「さらなる負担」として働く可能性が高い。韓中関係が悪化した最大の原因は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が台湾問題と関連し、米国の立場を徹底的に擁護してきたことにあるためだ。一方、台湾問題と関連し、中国の立場を最も強く支持してきた北朝鮮は、台湾危機をチャンスとみなすだろう。北朝鮮がロシアとウクライナの戦争の長期化をチャンスとみなしたように。一方、国民党が政権奪還に成功すれば、両岸関係は改善され、それは東アジア情勢にも大きな影響を及ぼすことになるだろう。中国の台湾侵攻準備説を前面に押し出すことで同盟国を糾合してきた米国の戦略が、あまり通じなくなるからだ。

 今年の世界の最大の関心事は、11月に行われる米大統領選挙だと言える。ドナルド・トランプ前大統領の出馬の可否および当選可能性に、世界の人々の注目が集まっている。トランプ前大統領の在任当時、最も大きな影響を受けた朝鮮半島も例外ではない。トランプ前大統領は政権1年目の2017年、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と終始乾坤一擲の勝負を繰り広げ、朝鮮半島危機を増幅させた人物だ。2018~2019年には米国大統領としては初めて北朝鮮の指導者と3度も会い「世紀の談判」を行った。韓国に対しては在韓米軍の撤退を「営業用の切り札」とし、武器販売と防衛費分担金の引き上げに積極的に乗り出した。そのような彼がホワイトハウスに戻ってきたら、朝鮮半島情勢にはどのような影響を及ぼすだろうか。

 ひとまず、「シーズン2」はシーズン1とは大きく変わった状況で展開される。最大の変化は北朝鮮で起きている。過去の北朝鮮は米国と近づくことを切に望んでいた。金正恩委員長が2017年に戦争危機を辞さないほど「国家核武力の完成」に向けて疾走したのも、最大限に力のバランスを取ってトランプ大統領と談判したかったからだった。だが、2019年を経てトランプ政権に弄ばれ、裏切られたと結論付けた北朝鮮は、親米から反米へと転じた。また、トランプ前大統領にとって北朝鮮の経済難と対北朝鮮制裁は、金正恩委員長の譲歩を引き出す有力な切り札だった。ところが、これさえも変わった。北朝鮮は制裁を、自力更生と自給自足を実現できる「良いチャンス」とみなしており、またかなりの成果を出しているという自信をのぞかせているからだ。さらに北朝鮮は、「不可逆的な核保有国」を法制化し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)をはじめとする核ミサイル能力を倍増させ、「非核化の終末」を宣言した状況だ。

 金正恩委員長とトランプ前大統領の会談が実現すれば、おそらく北朝鮮の核・ICBM凍結と韓米合同演習および米国の戦略資産の展開の中止が議論されるだろう。いわゆる軍備統制モデルだ。トランプ前大統領はこのような取引が北朝鮮のICBM完成を阻止し、朝米関係改善を通じて中国との競争で有利な立場に立つのに役立つと自慢するだろう。このような可能性より確実なこともある。トランプ前大統領が尹政権に防衛費分担金の引き上げを強く要求するという点がまさにそれだ。非常に金がかかるとして、合同演習の縮小や中断を指示することも、在韓米軍の撤退に言及することもあり得る。このような状況がかみ合えば、韓国国内で独自核武装論も強く浮上するだろう。トランプ前大統領が大統領に返り咲く可能性を排除できないなら、私たちは今年、この問題について一つひとつ考えなければならない。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1123423.html韓国語原文入力:2024-01-09 01:12
訳H.J

関連記事