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[韓国総選挙]「政権審判論激しいのに政策ではなく野党審判を掲げた与党代表の失敗」

登録:2024-04-11 10:10 修正:2024-04-11 16:02
与党内でも「惨敗したハン・ドンフンは退陣すべき」 
政治的に追い詰められる
国民の力のハン・ドンフン非常対策委員長が10日、国会図書館に設けられた開票状況室で、固い表情を浮かべて開票速報を見守っている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 与党「国民の力」が4・10総選挙で野党「共に民主党」に大敗したことで、3カ月半のあいだ「ワントップ」で選挙を率いてきた国民の力のハン・ドンフン非常対策委員長が危機に陥っている。同氏は総選挙で民主党に過半数を明け渡すという、散々な成績表を手にした。国民の力は当面、敗北の責任をめぐって激しい内紛に見舞われるとみられる。

 ハン委員長は10日午後6時、国会図書館に設置された同党の開票状況室で地上波3社(KBS、MBC、SBS)の出口調査を見守った後、「国民の力は民意に従う政治のために最善を尽くしたが、出口調査の結果は失望だ」と述べた。ハン委員長は11日午前に総選挙の結果に対する公式の立場を表明する予定だ。

 党内はハン委員長に対する批判であふれている。ある初当選議員は「ハン委員長は責任を取って去るべきだ。政権審判論が激しいのに『犯罪者審判』を語ってばかりで、選挙戦略を大きく誤った」と述べた。選挙の過程で「政権審判論」が激しいにもかかわらず、政策やビジョンを語らず、逆に野党の審判を掲げるという過ちを犯したというのだ。

 選挙対策委員会の主な関係者も、「政権審判論がこれほど強いのに、せめて党が『伝達者』となって有権者の怒りを和らげる努力をすべきなのに、そのようなものは見えなかった。思ったよりもっと最悪の結果なので、ハン委員長も持ちこたえるのは厳しいだろう」と述べた。党の周辺からは「イ・ジェミョン(共に民主党代表)、チョ・グク(祖国革新党)は暫定的な犯罪者だということを国民はみな分かっているのに、なぜ支持率が高いのか、その裏を探ることをまったくしなかった」との批判の声が選挙運動期間のあいだ中あがっていたが、ハン委員長が省みることはなかった。

 ハン委員長は昨年12月に非常対策委員長に就任してからわずか3カ月半で政治的に追い詰められた。総選挙での勝利→党大会での代表戦出馬→党代表→大統領選という予想キャリアから大きく外れる可能性が高まった。ある初当選議員は、「ハン委員長が党大会で出馬するのは正しくない。選挙の過程でキャラクターの限界を示したし、政治的力量不足が実感されたため、党代表選挙は容易ではないと思う」と述べた。明知大学政治外交学科のシン・ユル教授は、「ハン委員長は選挙の勝敗とは関係なしに、しばらく政治から離れている必要がある。本人も消耗し続けてきたし、国民の立場からしても出続けていれば嫌気がさすだろう」と語った。

 ハン委員長が総選挙において保守の外延拡大で限界を露呈したことは、指導者として特に致命的な弱点になるものとみられる。

 同氏は尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領とのはっきりとした差別化に失敗したうえ、公式の選挙運動期間中には激しい表現を用いることで中道や無党派層の反発を買った。同氏は公式の選挙運動初日の先月28日に、「政治を犬のようにやる人物が問題」だと述べている。共に民主党のイ・ジェミョン代表と祖国革新党のチョ・グク代表の発言のことを、ゴミのような話だと述べてもいる。

 選挙戦の終盤では、責任逃れと哀訴の間で行ったり来たりした。ハン委員長は、1日には「政府は足りないが、その責任は私にあるわけではないのではないか」と述べたかと思えば、翌日の2日には「すべての誤りと責任は私にある」と述べている。

 同氏は党内の批判勢力を受け止められてもいなかった。党内では、中道層有権者の支持を得るためにはユ・スンミン前議員に選挙対策委員会で役割を担ってもらうべきだとの声が強かったが、ハン委員長は「考えたことがない」として一蹴した。選対委の関係者は「ハン委員長のファンダムは既存の国民の力の支持層を脱しないものであったし、外延拡大にはまったく役立たなかった」と話した。

 一方、国民の力は第20、21、22代総選挙で相次いで敗れたことで、深刻な後遺症に苦しめられるものとみられる。当面は、党内の主流派である親尹錫悦系と非尹錫悦系との責任をめぐる攻防が繰り広げられるものと思われる。改めて非常対策委員会体制を構築しなければならなくなるとの見通しが示されている。ある初当選議員は、「当面は非対委体制をとりつつ、深刻な混乱に陥ると思う」と述べた。

 国民の力が次に非対委を設置すれば、尹大統領就任後の23カ月でチュ・ホヨン委員会→チョン・ジンソク委員会→ハン・ドンフン委員会に続き、4つ目の非対委の発足となる。非対委委員長の候補としては、総選挙で再選したユン・ジェオク院内代表や復活したユ・スンミン前議員らの名が取り沙汰されている。

 政府と与党の対立も起きる可能性が高い。尹錫悦政権の独断とコミュニケーション不在、失政などが敗北の最大要因とされるだけに、垂直的な政府と与党の関係を克服したうえで、大統領室とは距離を置くべきだという要求が噴出するとみられる。国民の力はイ・ジュンソク元代表、キム・ギヒョン前代表が事実上、尹大統領の意向で交代させられるなど、龍山(ヨンサン:大統領室)の影から脱せられずにいた。

 嶺南(ヨンナム:慶尚道)地域選出のある議員は、「党は嶺南党に転落し、首都圏は全滅水準だから、党は深刻な混とんに陥ることになるだろう。尹大統領はもはや国政基調を維持できないほどの苛烈な審判を受けた」と述べた。選対委の関係者は「尹錫悦政権を審判するとの感情を党が防ぐには限界があった。党と大統領室との間で内紛が起こらざるを得ないと思う。選挙で生きて帰ってきた人も負けた人も、みな尹大統領のせいで負けたと言うのではないか」と述べた。

 慶煕大学公共ガバナンス研究所のチェ・ジンウォン教授は、「単に非対委を変えるだけでは解決できない状況に至った。政府与党分離論はもちろん、尹錫悦大統領の離党の話まで出てくるとみられる。再結党水準まで議論されるのではないかと思う」と述べた。

ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/election/1136120.html韓国語原文入力:2024-04-11 05:00
訳D.K

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