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集団行動で救急室を空けた専攻医、世界医師会基準違反の可能性

登録:2024-03-11 01:46 修正:2024-03-11 14:53
政府による専攻の辞職制限はILO条約違反の素地
専攻医の医療現場からの離脱が長期化する中、3月7日にソウル市内のある大学病院で、看護師が患者と話している/聯合ニュース

 専攻医たちが救急室と集中治療室すら空けて集団行動に打って出たのは、世界医師会(WMA)の基準に反するか、国際労働機構(ILO)が認める必要不可欠な業務の維持違反に当たる可能性が高い、と指摘する声があがっている。

 大韓医師協会(医協)も所属するWMAは2012年の総会で、「集団行動に参加する医師は、患者に対する倫理上または職務上の義務を免除されるわけではない」との内容を盛り込んだ「医師による集団行動の倫理的影響に関する声明」を採択している。この声明は「集団行動に関与する場合、NMA(各国の医師会)は、公衆への被害を最小限にとどめるよう行動し、ストライキ期間中の必要不可欠な医療や救急医療および治療の継続を保証すべきてある」とも述べている。専攻医は1万人以上が医療現場を離脱しており、2020年の集団診療拒否とは異なり、救急室や集中治療室などでも業務を維持していない。

 専攻医の集団行動は、ILOが労働者のストの際に制限あるいは禁止しうることを認めている必須サービスに当たる可能性もある。ILO結社の自由委員会は、個別事案の決定例で繰り返し「その中断が人口の全部または一部の生命、個人の安全または健康を危険にさらすような不可欠の業務」は、限定的に団体行動を制限しうると判断している。ただし、韓国はストを労働者個人ではなく労働組合の権利としてのみ解釈しているが、専攻医協議会は労組ではないうえ、集団行動も専攻医個人が辞表を出すかたちであるため、ストとみなせるかについては解釈が分かれる。ILOは弁護士のような自営業者の集団行動もストと認めている。

 一方、専攻医の辞職を妨害するなどの政府の方針は、ILO条約に違反する可能性がある。専攻医の辞職を拒否したうえで一括して再契約するとの政府の方針については、蔚山大学医学部の複数の教授がILOへの提訴を検討している。国会批准を経て2022年4月に発効した強制労働に関する条約(第29号)は、自ら任意に申し出ていないすべての労働やサービスを対象としている。ただし、戦争、大規模な火災や洪水、地震などにより全体または一部の住民の生存や幸福が危険にさらされる緊急状況などにおいて強要される労働は例外として認めているが、専攻医の集団行動はこれには当たらない、との主張だ。政府内でも例外判断をめぐって意見が割れているという。

チョン・ジョンフィ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1131673.html韓国語原文入力:2024-03-10 21:41
訳D.K

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