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[インタビュー]「スマホ依存、大麻より知能に2倍も有害な環境」

登録:2024-01-12 06:43 修正:2024-01-12 09:32
ドーパミン人類(2)ドーパミンを得て集中力を失う 
『盗まれた集中力』著者、ヨハン・ハリ氏のインタビュー
先月6日未明、オンライン会議プログラムを通じてハンギョレとインタビューしているヨハン・ハリ氏=画面のキャプチャー//ハンギョレ新聞社

ドーパミンは主に新しいものを探索したり成し遂げたりする過程で「喜び」の感覚と感情を支配する神経伝達物質だ。おいしい食べ物を食べたり、ゲームやショッピングをしたり、わいせつな写真や動画を見たりする時も、補償作用のようにドーパミンが分泌される。似たような刺激が繰り返されれば、脳はドーパミンの生産を減らすか、ドーパミンに反応する受容体の数を減らす。同じ快感を得るためには、より多くの刺激を求めざるを得ない。「中毒」へと至る道だ。

 世の中のすべての刺激の集合所であるスマートフォンとドーパミンは緊密に結びついている。「スマートフォンは危険ではない」と油断している間に、私たちはドーパミンを得て、代わりに多くのものを失った。スマートフォン中毒の実態と、はまらざるを得ないアルゴリズムの秘密、治癒策を4回にわたってみてゆく。

ドーパミン人類//ハンギョレ新聞社

 「韓国の集中力危機は特に深刻だと思います。韓国は技術的な要素と技術的でない要素がいずれも集中力の喪失に影響を及ぼしています」

 集中力崩壊現象の理由と危険、解決策などを取り上げた『盗まれた集中力(Stolen Focus : Why You Can't Pay Attention)』の著者である英国のジャーナリスト、ヨハン・ハリ氏は、集中力低下という問題が全世界に広がっていると診断した後、これは個人の問題ではなく現代社会システムが作り出した「流行病」だと指摘する。

 ハリ氏は著書の中で、集中力低下の原因として膨大な情報とマルチタスク▽情報通信(IT)企業の注意力操縦と略奪▽睡眠不足▽読書の崩壊など12のことを提示した。

 先月6日、ハンギョレのオンライン・インタビューに応じたハリ氏は、韓国の長い労働時間と激しい競争などが集中力の危機問題を深刻化させていると分析した。

あなたは集中力を払っている

 ハリ氏は集中力低下の原因として、多くの仕事をやり遂げるために同時に複数の作業をする「マルチタスク」を真っ先に指摘する。「私たちは日常的に『私に何をきいたっけ』、『WhatsApp(メッセンジャーアプリ)から何とメッセージが来るだろう』、『テレビで何と騒いでいるだろう』、『フェイスブックでまたどんなメッセージが来たのだろう』」として素早く様々な作業を行き来します。私たちはこれが可能だという大衆的幻想を持っていますが、私たちの脳は一度に一つ以上のことをすることはできません」。ハリ氏は私たちが同時に様々なことをしようとする瞬間、ミスが多くなり、創造力が低下するとし、「それは大麻を喫煙するより知能に2倍も有害だ」と指摘した。

ヨハン・ハリ氏の著書『盗まれた集中力』=出版社アクロス提供//ハンギョレ新聞社

 ビックテック企業(大手情報技術企業)は、マルチタスクの隙を素早く突いてくる。ハリ氏は「シリコンバレーの天才たちがこぞって研究しているのは、ほかでもなく『どうすれば人々がソーシャルメディアのようなアプリを頻繁に開き、長くそこに留まるか』だ」と説明した。また「ビッグテック企業は皆さんがアプリでスクロールを始める度に広告などを流してお金を稼ぎ、ひいてはアプリであなたの行動をスキャンし、あなたが何にもっと興味を感じるかを把握する」として、「フェイスブックのようなサービスは無料で提供されているようだが、あなたの情報を提供してあなたの集中力を代償に支払っている」と付け加えた。

 睡眠不足を集中力低下の重要な原因として挙げるハリ氏は、韓国の長い労働時間と激しい競争、過熱した教育熱とストレスが睡眠の質と量をより一層落とすと分析する。

 ハリ氏は「韓国人たちは世界で最も長い労働時間とこれによるストレスを持っている」とし、「まともに眠れなかった人は(快楽と補償を調節する脳の神経伝達物質ドーパミンを追いかけて)ティックトックのような(短くて刺激的な映像を)求める確率も高くなる」と語った。ストレスと睡眠不足がデジタル中毒につながり、また集中力の低下につながるという分析だ。

 特に長時間労働と関連しては「昼夜を問わず、いつでも電話やEメールで応答できる従業員を生産的な従業員とみなす韓国の文化」を見直す必要があると指摘する。長時間労働は創造力を低下させるとし、「AI時代に私たちが望むのはロボットのように仕事をする従業員ではなく、創造力を持って仕事に臨む人」だと強調した。

 ハリ氏はスマートフォンの効用性を認めており、スマートフォンをなくすべきだとは主張しているわけではない。ただし、この技術は私たちの集中力を低下させるように設計されたため、「損ではなく、得をすることができるように」規制しなければならないと強調する。また「週4日制」のように集中力を取り戻せる社会環境づくりも必要だと提案する。

 ハリ氏はビッグテック企業が集中力を治癒し、損なわないようにアプリのデザインを変えるよう誘導すべきだと語った。「そのためにビッグテック企業を公共所有に転換したり、購読モデルにするなどの方法が必要だ」としたうえで、「コレラにかかるのを防ぐために下水道を公共所有したように、私たちは情報パイプを共有しなければならない。なぜなら、子どもたちの集中力がコレラにかかることを望まないからだ」と話した。

 インタビューの最後にハリ氏は、それでもまだ韓国に希望の光を見出した。「韓国は真っ先に危険を知らせる『炭鉱の中のカナリア』のような存在です。韓国はこのトレンド(デジタル技術の発達と注意力の喪失)の多くの部分で、最先端にあります。非常に小さな変化さえあれば、早い改善を経験できるでしょう。こんなふうに人生を送ることに懸念を抱いているのなら、私たちはもっと議論を深める必要があります」

コ・ビョンチャン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1123882.html韓国語原文入力:2024-01-11 12:22
訳H.J

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