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ソウルで発掘された朝鮮戦争の民間人犠牲者遺骨、布をかぶせ6年間放置されていた

登録:2023-11-23 01:19 修正:2023-11-23 07:27
国防部「国軍の戦死者ではない」2017年に中断 
一度さらされて再び埋められた遺骨は腐食が速い 
ソウル牛耳洞の民間人犠牲者、初の公式発掘 
2017年に朝鮮戦争の民間人犠牲者の遺骨発掘作業が中断されたため、遺骨にかぶせられた不織布=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

 1950年の朝鮮戦争から73年を経て、朝鮮戦争の民間人犠牲者の9~10体の遺骨が、ソウル江北区牛耳洞(カンブック・ウイドン)で先月公式に発掘された。ソウルは朝鮮戦争期に民間人虐殺が最も多く発生した場所の一つとして知られているが、集団埋葬地が発掘されるのは今回が初めて。

 今回の発掘は、国防部の遺骨発掘鑑識団が存在を確認したにもかかわらず、国軍の戦死者ではなく民間人であるとの理由で発掘・収拾を中断し土で覆って以来、6年ぶりに実施された。発掘機関同士の情報共有、協力システムを構築する必要があると指摘する声があがっている。

箱の中に高齢女性、10歳に満たない子どもの遺骨

 ソウル江北区役所は、先月16~20日に江北区牛耳洞338番地一帯で朝鮮戦争期の民間人犠牲者と推定される9~10体の遺骨を発掘・収拾し、現在は鑑識をおこなっていることを21日に明かした。同区役所は真実・和解のための過去事整理委員会(真実和解委)からの2200万ウォン(約252万円)の補助金で遺骨発掘を実施した。

10月にソウル江北区牛耳洞338番地で発掘された遺体が最初にあらわになった時の様子=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

 そもそも牛耳洞の遺骨の存在が初めて確認されたのは、6年前の2017年11月16日。江北区を流れる仁寿川(インスチョン)の擁壁工事をしていた労働者たちが遺骨を発見し、彼らの通報を受けて江北警察署科学捜査隊が確認し、5~6体の遺骨、靴、装弾子(クリップ)などを発掘した。

 韓国軍の戦死者の遺骨と誤認した警察は、現場を国防部の遺骨発掘鑑識団に引き渡した。その後、同年12月6日までの発掘過程で、さらに女性と子どもの遺骨および遺品が確認された。国防部は民間人犠牲者だと推定し、発掘を中断した。6・25戦死者発掘法上、軍には民間人の遺骨を発掘する権限がない、というのがその理由だった。

 国防部から改めて現場を引き渡された江北警察署はその後、行政安全部過去事支援団および江北区役所と協議し、現場を保存するため不織布をかけ、その上から土をかぶせた。警察が「偶然」発掘・収拾した5~6体の遺体は、鑑識を経て現在は世宗(セジョン)追悼の家に安置されている。今回発掘された遺骨も合わせると、牛耳洞338番地で発掘された遺骨の数は15~16体分になる。

ソウルで軍と警察によって殺された民間人犠牲者は5千人あまり

10月19日、ソウル江北区牛耳洞338番地の現場で、調査員たちが遺骨発掘作業をおこなっている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

 発掘作業を受託した三韓文化財研究院のハ・ヨンジュン責任調査員は、「面積70平方メートルの発掘地から出た骨片は200点で、太ももの骨が最も多く、頭骨は5~6個が割れた状態で出てきた」、「3体の子どもの遺骨と、箱に入った入れ歯と一緒に出てきた高齢女性が目についた」と語った。木箱に入れられた2体は、6年前に国防部の遺骨発掘鑑識団が土をかぶせていったものと推定される。

 江北警察署による2017年の現場鑑識の結果、1950年10月ごろに国軍に指揮された大韓青年団の団員と警察によって、人民軍の駐留時期の人民軍の協力者とその家族であるとの疑いをかけられて集団虐殺された犠牲者であることが確認された。真実和解委は、朝鮮戦争期にソウルで軍や警察によって殺された民間人犠牲者は5千人あまりにのぼるとみている。昨年に発表された釜慶大学産学協力団の報告書によれば、全国の遺体埋葬に関する調査の対象地となっている381カ所のうち、ソウルにあるのは「牛耳洞338番地」が唯一。

ソウル江北区牛耳洞338番地の遺骨発掘現場の10月の様子。掘削機で地面を掘っている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社

「トラックに人が乗せられてきて射殺されるのを見た」

 彼らはどのような人たちなのだろうか。朝鮮戦争前から牛耳洞で暮らしていたウォン・ヨンボンさん(89)はハンギョレに、「中学1年生くらいだった1950年10月ごろ、警察が朝鮮戦争の前に北から共産党を嫌ってやって来て暮らしていた情報提供者の音楽の先生(当時45~50歳)の一家5人を、仁寿川周辺で射殺するのを目撃した」と語った。遺骨には音楽の先生夫婦と先生の義母、7歳以下の2人の息子のものが含まれている可能性があるとみられる。

 事件当時9歳で、牛耳洞に住んでいたアン・サンウクさん(82)もハンギョレに「トラックに人が乗せられてきて、今の軽電鉄の事務所のある発掘現場で射殺されるのを目撃した。射殺される場面を密かに目撃したら見つかって、殴られ、地下室に夜遅くまで閉じ込められていた」と証言した。

 牛耳洞のような遺骨の放置や発掘の遅れなどの問題が再発しないよう、国軍の戦死者と民間人犠牲者の遺骨を発掘する機関同士の円滑な協力システムの構築が必要だと指摘する声もあがっている。国防部の遺骨発掘鑑識団は常設の独立部隊となっているが、民間人の遺骨発掘は一時的な機関である真実和解委、または遺族会や市民団体がおこなってきた。

 遺骨発掘の専門家である忠北大学のパク・ソンジュ名誉教授は「一度さらされて再び埋められた遺骨は、腐食がはるかに速く進む」とし、「遺骨を放置せずに収拾するコントロールタワーが必要だ」と述べた。実際に今回発掘された遺骨は、ひどく砕けたり割れたりしていたという。

入れ歯と高齢女性の遺骨が入っていた木箱。2017年11~12月に作業をおこなった国防部遺骨発掘鑑識団が、作業中断に際して箱に収めたものとみられる=三韓文化財研究院//ハンギョレ新聞社
ソウル江北区牛耳洞338の遺骨発掘現場。10月11日撮影。発掘前にドローンで撮影したもの=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社
10月11日にソウル江北区牛耳洞338の遺骨発掘現場で執り行われた開土祭。朝鮮戦争戦後民間人犠牲者全国遺族会のキム・ボギョン会長が追悼の辞を読み上げている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社
10月、ソウル江北区牛耳洞338の現場から発掘された骨の整理作業が行われている=三韓文化財研究院提供//ハンギョレ新聞社
コ・ギョンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1117302.html韓国語原文入力:2023-11-22 03:00
訳D.K

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