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鴨緑江・豆満江で見た「変化を望んでいるが、変化できない北朝鮮」(3)

登録:2023-10-05 09:07 修正:2023-10-05 11:30
[朝中国境1334キロを行く]
鴨緑江上流の両江道の道庁所在地である恵山市。川辺には古い住居と倉庫が、丘には新しく建てられた高層マンションが立ち並んでいる=イ・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

(2から続く)

塔山公園と圏河の有料望遠鏡

 鴨緑江(アムノッカン)・豆満江(トゥマンガン)を含む朝中国境のすべてを観光資源化しようとしているのは中国の中央・地方政府だけではない。国境地帯の中国人たちも「お金」を稼ぐチャンスを逃さない。

 鴨緑江上流の白頭山(ペクトゥサン)南側の山麓にある吉林省長白朝鮮族自治県には渤海時代の煉瓦塔「霊光塔」(1988年中国国務院指定「全国文化遺物重点保護単位」)がある塔山公園がある。ここからは対岸の両江道(リャンガンド)の道庁所在地である恵山市(ヘサンシ)が一望できる。当然ながら、塔山公園で恵山市が最もよく見える場所には、高性能望遠鏡3台を設置し、20元を払えば1台を15分間使わせてくれる商売をする人がいる。人が多い時は、言い値が望遠鏡の使用料になる。資本主義的な計算法だ。

 朝中の豆満江沿いの最大の交易窓口である琿春市圏河国境通過地点の隣にいる中国人露天商も、望遠鏡5台を鉄条網のそばに設置し、1台3元の使用料を取っている。対岸の北朝鮮の羅先市元汀里(ナソンシ・ウォンジョンリ)を詳しく見たければ「金」を払えということだ。圏河と元汀里をつなぐ4車線道路は中国国務院指定の「辺境経済合作区」である琿春と朝中政府共同開発管理経済特区である「羅先経済貿易地帯」とをつなぐ唯一の道だ。

 長白県の朝鮮族のタクシー運転手は「恵山市が先に開放されていたなら、あっちの人たちの方が私たちより豊かに暮らしていただろう」とし、「早くから改革開放の道を選んだ中国政府に感謝している」と語った。「お金」と呼ばれる「チャンス」に対するこの姿勢の違いが、鴨緑江と豆満江を境に中国の鬱蒼とした山と豊かな国境の村、北朝鮮の裸の山と貧しい国境の村を劇的に対比させる風景を作る動力の一つだろう。

朝中の豆満江沿いの最大交易窓口である琿春市泉河国境通過地点の中国人露天商は望遠鏡5台を鉄条網のそば設置し、1台3元の使用料を取っている。対岸の北朝鮮羅先市元汀里を詳しく見たければ「金」を払えということだ=イ・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

防川、朝中ロ3カ国の複雑な計算

 西海(ソヘ)に接する鴨緑江下流から始まり、1334キロに及ぶ朝中の国境は、東海(トンヘ)に至らず豆満江下流の防川と豆満江里(トゥマンガンリ)で止まる。中国が東海に到着するためには、北朝鮮の豆満江里とロシアのハサンをつなぐ「朝ロ友好橋(鉄橋)」の向こうにある朝ロ国境の豆満江をさらに15~17キロほど進まなければならない。中国は1860年の北京条約でロシア帝国に60万平方キロにのぼる沿海州を奪われた後、今日に至るまで東海への道を開けずにいる。

 羅先市豆満江里と琿春市防川(中)、ハサン(ロ)の前を流れる豆満江の真ん中(北緯42度25分、東経130度38分11.9秒)にあるという朝中ロ国境交差地点と同様、3国の計算は複雑で微妙だ。ロシアはもちろん、北朝鮮も中国に東海港への接近を許していない。北朝鮮は果たして、南平と咸鏡北道清津(ハムギョンプクト・チョンジン)を結ぶ4車線高速道路(84キロ)を建設するという中国和龍市の計画に呼応し、東海港に至る道を中国に開くだろうか。これも朝中鴨緑江大橋の開通と同様に、朝中関係と北朝鮮開放の尺度になるはずだ。

1334キロに及ぶ朝中国境の東端、中国吉林省琿春市防川の龍湖楼から眺めた豆満江と朝中ロ3カ国の国境交差地点=イ・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の首脳会談(9月13日)の翌日、カザフスタンのアルマトイで出会ったロシアの実業家は「今や我々の友人は君たち(韓国)ではなく、北朝鮮だ」とし、「金正恩(委員長)が友人だなんて、映画よりも劇的で非現実的な状況の展開だ」と冷笑交じりに語った。延吉で会った中国人国際政治学者は「金正恩(委員長)は、軍事協力はロシアと、経済協力は中国と進めるという新たな並進路線を選んだようだ」と評した。彼は「朝中ロ三角協力が現実化するかどうかは、根本的には中国の選択にかかっている」とし、「中国はまだ米国との全面対決を望んでいない」と話した。三角協力に対する中国の思惑が複雑だということだ。

 このような中、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は先月20日(現地時間)、第78回国連総会の一般討論演説で「ロ朝の軍事取引は大韓民国の安全保障と平和を直接狙った挑発」だと非難した。「外国」のロシアより「同族」北朝鮮を後に呼ぶことで、北朝鮮に対する敵対意識を強調したわけだ。中国と対立し、ロシアは敵視し、北朝鮮は「主敵」とみなすことで、この30年間の北方政策の成果を自ら破壊する尹錫悦政権に、朝鮮半島の平和と南北共同繁栄の方策を期待するのは、卵を見て時夜を求むのと同じくらい意味のないことかもしれない。

丹東・琿春/イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1110714.html韓国語原文入力:2023-10-04 10:11
訳H.J

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