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[朴露子の韓国、内と外]西側メディアが目を向けない朝ロ密着の意味

登録:2023-10-03 20:13 修正:2023-10-04 09:28
単なる武器取引なら、果たして両国の首脳が直に会う必要があっただろうか? しかも国連制裁に違反する取引なのだから、首脳会談を通じて明らかにして誇示するよりは、厳重に隠れて行う方が合理的だったのではないだろうか。首脳会談で実際に武器取引が言及されたかどうかを判断するには資料が足りないが、目で確認できたこの会談の意味としては3点を指摘できる。
北朝鮮の金正恩国務委員長(左)とロシアのプーチン大統領が先月13日、ロシア・アムール州のボストーチヌイ宇宙基地で首脳会談を行っている/ロイター・聯合ニュース

 最近行われた金正恩(キム・ジョンウン)とウラジーミル・プーチンの首脳会談は、韓国でも欧州でも世間の注目を集めた。実際、金正恩とプーチンの会談自体はそれほど驚くべきことではなかった。ロシアの朝鮮半島外交で「バランス」を取るというプーチンは、政権初期にすでに平壌を訪問しており、4年前に金正恩に会ったこともある。

 両首脳の会談より私を驚かせたのは、その会談に対する欧米メディアの反応だった。大半のマスコミは、ロシアと北朝鮮の「武器取引説」をほぼ既成事実として受け入れた。むろん、北朝鮮がロシアと同じ口径の砲弾を大量生産しており、現在ロシアにとってそれが必要だということは事実だ。また、これまで北朝鮮が武器輸出で外貨を稼いできた点などから、そうした取引の可能性は否定できない。

 しかし、蓋然性のあることをまるですでに実現したことのようにみなす態度は、事実に基づくべきマスコミ報道の枠をはるかに越えている。そして西側メディアは、この首脳会談に関して次のような核心に迫る質問にまともに答えられなかった。単なる武器取引なら、果たして両国首脳が直に会う必要があっただろうか? しかも国連制裁に違反する取引なのだから、首脳会談を通じて明らかにして誇示するよりは、厳重に隠れて行う方が合理的だったのではないだろうか? 首脳会談で実際に武器取引が言及されたかどうかを判断するには資料が足りないが、目で確認できたこの会談の意味としては3点を指摘できる。

 まず最も確実なのは、韓国に対する警告メッセージだった。北朝鮮にとって韓米日間の軍事的密着の強化が「挑戦」と認識されていたとしたら、ロシアにとって韓国製の兵器が迂回輸出を通じてウクライナの戦場にすでに投入されている可能性や、今後ウクライナに提供される蓋然性は、現実的脅威として受け止められていただろう。具体的な不満の理由は少しずつ違うが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が韓米同盟に盲目的に「全賭け」していることや、ウクライナへの武器供給問題で米国に盲従する態度などに対して、朝ロは極めて批判的な認識を共有している。したがって、武器取引やロシアの先端兵器技術の北朝鮮流出といった無数の主張を生んだ今回の会談は、尹政権の外交路線がこれまで通り続くならば朝ロは共同で対応するという予告と解釈するのが正しいだろう。

 次に、一種の「価値観同盟」を誇示するものだ。価値観同盟とは、韓国の保守主義者が特に韓米関係を指してよく使う表現だ。しかし、北朝鮮とロシアをそれぞれ統治している保守的な党官僚や保安機関出身の官僚集団などにも、彼らなりに共有する価値観がある。韓米間で共有される最も重要な価値観といえば、おそらく私有財産制と私有財産を持つ個々人が享受できる権利、そして全体的システムの安定性を保障する「大枠でシステムのルールに合意する」与野党間の定期的な権力交代だろう。このような価値観は、ある面ではシステムの反対者にも一定の発言権を許容するが、一次的には財産家のリスク負担を減らすなど「財産のある個人」本位に規定されている。

 その反面、西側と歴史的に対立したり「追いつく」試みを繰り返してきた周辺的帝国であるロシアや、世界体制の中心部と対立してきた脱植民国家である北朝鮮にとっての主要な価値観は、国家の主権、すなわちシステム自体の生存だ。反対者たちは存在を許されず(北朝鮮)、減り続ける(ロシア)のはもちろんのこと、財産家たちも国家主権の存続を担保するという官僚集団の支配に絶対的に服従することが、朝ロの共有するシステムの作動ルールであり価値観だ。ロシアにとって米国は自国の帝国的影響権を脅かすやや強力なライバルであるのに対し、北朝鮮にとって米国は体制存続に対する潜在的脅威そのものだ。すなわち、理由はそれぞれ少しずつ違うが、両者とも米国のグローバル覇権の相対化と、自国のような非主流のアクターがもっと幅広く動ける新しい国際秩序の到来を望んでいる。金正恩がプーチンの「聖戦」に本人も「共にする」という意志を明らかにしたのは、単なる外交的レトリックというよりは、こうした根本的な共通志向の反映とみなければならない。

 三つ目の意味は、高すぎる中国依存度を下げようとする試みだろう。国際制裁と南北交易の中断によって、北朝鮮の交易全体に中国が占める割合は2022年に96.7%まで上がった。これは「絶対的従属」に近い状況だ。中国と北朝鮮の間で「血盟」のような政治的レトリックが交わされ続けているが、これはあくまでレトリックに過ぎず、実は「同床異夢」こそが朝中関係の実体を最も正確に指す成語だろう。自国の生存が最優先である北朝鮮は、核・ミサイル開発に絶対的意味を与えてきたが、北朝鮮の核がもたらす地域の安保秩序の亀裂、そしてこれを契機に強まりうる米国の介入などを警戒する中国は、北朝鮮の核に当初から反対してきた。2016~2017年の北朝鮮の核実験後、国連安全保障理事会が採択した対北朝鮮制裁決議案は、米国と共に中国が主導したものであり、これによって北朝鮮としばらく露骨な対立が生じていた。

 ウクライナ侵攻が遅々として進まず戦争の沼に陥ったロシアとしても、前例のない中国依存の高まりは様々な面で負担だ。結局、両国首脳の会談は、韓国に対するメッセージであり、中国に対するメッセージでもあり、朝ロが共有する価値観や志向に関する対外的な宣言でもあった。

 もちろん、韓米が代弁する極端な資本主義が人類の明るい未来とは関係がないように、朝ロの支配者の価値・志向は普遍的な人類解放や気候正義などと何の関係もない。しかし、朝ロの政治構造は当分変わる可能性がないため、北方の隣国である彼らが懸念することを少なくとも無視せず、外交路線を決定する際に一緒に考慮しようということだ。対米盲従、韓米同盟盲信、そして盲目的な北朝鮮への敵対が現在の朝ロ密着を招くのに大きな役割を果たしたのだから、「尹錫悦外交」に対する批判的省察と軌道修正が韓国にはまず必要だ。

//ハンギョレ新聞社
朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) |オスロ国立大教授・韓国学(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1110697.html韓国語原文入力:2023-10-03 18:57
訳J.S

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