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韓国司法、強制動員被害の判決金「政府の無理やり供託」にブレーキ

登録:2023-08-16 09:44 修正:2023-08-17 10:53
「強制動員で第三者弁済はできない」…供託金不受理に対する異議申し立てを棄却
2019年10月30日、日帝強制動員被害者のイ・チュンシクさん(前列左端)とヤン・クムドクさん(前列左から2人目)が、ソウル瑞草区の民主社会のための弁護士会の大会議室で行われた日帝強制動員問題解決のための記者会見で発言している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 日帝強制動員の被害者に対する判決金(判決で決まった賠償金、訴訟費用など)を「第三者弁済」方式で執行するために裁判所に供託しようとした政府に対し、司法がブレーキをかけた。行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団(支援財団)は、強制動員の被害者に渡す判決金の裁判所への供託が拒否されたことに対して異議を申し立てたが、司法はこれを棄却する決定を15日に初めて下したのだ。政府は日本の戦犯企業ではなく韓国政府が用意した判決金を、供託制度を利用して執行することで強制動員判決金問題を終結させようとしたが、その計画に支障が生じたのだ。

 全州(チョンジュ)地方裁判所民事12単独(カン・ドングク判事)は15日、強制動員被害者の故パク・ヘオクさんの2人の子どもについての供託不受理決定に関する支援財団の異議申し立てを棄却したと発表した。先に全州地裁の供託官が「被害者が第三者弁済を拒否している」との理由で支援財団による供託を不受理としたことに対し、支援財団が異議を申し立てていたが、これも棄却されたのだ。

 裁判所は「この事件で債務者(日本企業)が賠償すべき損害は精神的苦痛による慰謝料であり、債務者に制裁を課すと同時に債権者(遺族)を保護する必要性が著しく大きい事案」だとし、「本事件は民法第469条第1項の但し書きに則り、第三者弁済が許されない場合に当たる。供託書を見れば、債権者が第三者弁済に関する反対意思を積極的に示しているということがよく分かる」と説明した。

 外交部と支援財団は、政府による強制動員解決策の発表当時から供託による第三者弁済の意思を明らかにしてきただけに、この日の全州地裁の決定も不服として抗告するものとみられる。ただし、供託を用いた政府の第三者弁済は法的に認められないとした今回の司法決定は、他の裁判所で進められている事件にも影響を及ぼす可能性が高い。支援財団が抗告または再抗告して最高裁まで行ったとしても、同じ結論が下されれば、法的に第三者弁済を実行する方法は事実上ない。

 強制動員被害者の代理人を務めるキム・ジョンヒ弁護士は「無理強いのようなやり方で被害者に弁済の受け取りを強要した政府の一方通行式の第三者弁済にブレーキがかかった」とし、「外交部と支援財団には賠償金を支給する法的資格がないということを裁判所が宣言したかたち」だと語った。

 ハンギョレが裁判所や強制動員被害者と遺族の代理人などに確認したところ、支援財団は今回の全州地裁の事件を含め、11人の強制動員被害者に対する供託申請を不受理とした供託官による処分に異議を申し立てており、光州(クァンジュ)地裁、水原(スウォン)地裁など7つの裁判所で判断を待っている。

 支援財団は大手法律事務所の「世宗」と「パルン」を選任するなど、供託手続きに力を注いできた。最初に供託不受理決定が下された光州地裁のヤン・クムドクさん(92)の事件では、元最高裁判事のミン・イリョン弁護士(世宗)、元部長判事のイ・ウォン弁護士(世宗)、李明博(イ・ミョンバク)元大統領の法律代理人を務めたカン・フン弁護士ら9人が事件を担当している。被害者が望んでいない供託を受け入れさせるために政府が行っているこのような司法手続きは、事実上国の税金でまかなわれ、費用もかなりの額になる。支援財団のシム・ギュソン理事長は「現在までのところは支援財団の予算で(訴訟に)対応している」としながらも「詳しい執行計画はいま公開できない」と述べた。

チャン・イェジ、パク・イムグン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1104448.html韓国語原文入力:2023-08-16 06:00
訳D.K

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