韓国政府が福島原発汚染水の海洋放出が韓国にとって危険ではないという趣旨の「ユーチューブ広告」を流して物議を醸している中、関連予算に10億ウォン(約1億800万円)が配分されたことが確認された。
12日、ハンギョレが入手した文化体育観光部の文書「政策広告推進」には、「水産物安全管理」に関する政府政策を広報する目的で、7~8月の間に10億ウォンをかけてユーチューブやフェイスブック、インスタグラムなどに広告掲載を進める内容が含まれている。広告の形式は動画やカードニュース、ユーチューブチャンネルへの協賛など。
これに先立ち、政府は「大韓民国政府」の公式ユーチューブチャンネルに7日に掲載された動画「国内の最高専門家たちが語る福島原発汚染水の真実」(4分25秒)と、「大韓民国、今日の政策」のユーチューブチャンネルに10日付で掲載された動画「福島(原発汚染水を)海洋放出するというが、韓国の水産物は安全なのか」(1分)を活用し、ユーチューブ動画広告を流して物議を醸した。
ユーチューブの無料利用者が動画を再生する際、動画の前・後・中間などに広告映像が付くが、ここに「福島汚染水は危険ではない」という「政府広告」が出てきたのだ。
ハンギョレの取材結果、「政策広告の推進」文書に明示された通り、「水産物の安全管理」の名目でユーチューブ広告を制作・送出するのに10億ウォンの文体部予算が配分された。
同広告は水産物の安全性を強調し、「福島原発汚染水の海洋放出は韓国にとって危険ではない」と主張するのが主な内容となっている。「トリチウムは土壌や野菜はもちろん空気にも存在する放射性物質で、食べても基準値以下なら人体にあまり影響がない」、「コーヒーや牛乳を一杯飲んでも、卵を一つ食べても、すべて放射性物質が含まれているため、(人体は)被ばくする。(原発汚染水が海洋放出されれば)健康に問題が生じるという心配は全く要らない」 などの発言が流れる。
これに対し「なぜ韓国政府が乗り出して原発汚染水の海洋放出の正当性を広報するのか」「税金でなぜ汚染水の海洋放出に関する広告をするのか」「各種福祉を減らしておいてそのお金で汚染水広告を行うのか」という批判の声が、ソーシャルメディアやオンラインコミュニティなどであがった。
民主言論市民連合のチョン・スギョン政策委員長はハンギョレに「通常、政府が政策を広報するために予算をかけて広報物を制作するのは、市民が理解しにくい政策を易しく説明するためだ。福島汚染水の海洋放出がなぜこれに該当するのか、納得できない。海洋放出は韓国政府の政策ではなく、日本政府が決めたことだ、韓国国民がこれを理解しなければならないという理由はない」と述べた。
同日、国会で開かれた野党「共に民主党」の最高委員会会議でも政府のユーチューブ広告に対する批判が出た。同党のチャン・ギョンテ最高委員は「政府与党が刺身モッパン(飲食する光景を配信するコンテンツ)、水族館の水モッパンショーに加え、国民の税金をかけて(福島原発汚染水の)広告まで始めた」と批判した。民主党のソ・ヨンギョ最高委員は「大韓民国国民が払った税金で、大韓民国の予算で、ユーチューブに汚染水が安全だという有料広告をしている」と語った。
文化体育観光部関係者は同日、ハンギョレに対し「文化体育観光部にある政策広報費を活用してこの動画の制作と送出を行った。最終的に使われた費用は広告執行が終わった後に精算してみななければ分からない」とし、「文化体育観光部には政府政策を国民に正確に知らせる義務がある。福島原発汚染水の放出問題、水産物の安全と関連して政府政策を正確に知らせる必要がある」と、映像広告の趣旨を説明した。
同関係者は「動画は科学に基づいた事実を国民に正確に知らせる内容」だとし、「現在施行されている福島産水産物の輸入禁止措置に変わりはなく、今後も安全が確保されていない福島産水産物の輸入はないということを知らせるために広告を行った」と語った。