本文に移動

尹大統領が指名した統一部長官候補、「政府の南北統一案」すら否定

登録:2023-07-11 08:31 修正:2023-07-11 09:30
歴代の保守・進歩政権の統一政策も「浪漫的民族主義」と酷評
キム・ヨンホ統一部長官候補/聯合ニュース

 キム・ヨンホ統一部長官候補が過去に共著者としてかかわった本で、政府の公式の統一案「民族共同体統一案」に否定的な記述をしていたことが10日に確認された。歴代政権の対北朝鮮政策についても「浪漫的民族主義的思考」と述べて酷評していた。キム候補はユーチューブやメディアへの寄稿などで「金正恩(キム・ジョンウン)政権打倒」、「南北関係は敵対関係」との見解を示している。

 キム候補は、ノ・ジェボン元首相らとの2018年の共著『韓国自由民主主義とその敵』の138ページで、民族共同体統一案について「過去に韓国政府が打ち出した『民族共同体統一案』の場合も、統一韓国の政治体制はどのようなものになるべきなのかが不明確だ」とし、「統一国家を作っていく過程で南北が話し合って処理すると述べているのは、巨大な問題だと言わざるを得ない」と記している。

 民族共同体統一案は金泳三(キム・ヨンサム)政権時代の1994年8月15日に提示された、政府の公式の統一案だ。同案は自主、平和、民主を統一の3大原則とし、南北の和解協力段階と南北連合段階を経て一民族一国家の統一国家を完成させていくとしている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権も含め、歴代政権は民族共同体統一案を継承している。クォン・ヨンセ統一部長官は昨年8月の「2022朝鮮半島国際平和フォーラム」で、「民族共同体統一案は国際社会に提示する韓国の統一未来ビジョン」だと述べている。

 キム候補はかつての進歩・保守政権が推進してきた対北朝鮮政策も「浪漫的民族主義」と酷評していた。

 同氏は同書の146ページで「これまでの民族の立場や経済的、機能主義的アプローチにもとづいた(金大中(キム・デジュン)政権の)太陽政策だとか、(李明博(イ・ミョンバク)政権の)非核開放3000だとか、(朴槿恵(パク・クネ)政権の)朝鮮半島信頼プロセスのような対北朝鮮政策は、所期の成果を収めることができず失敗に終わってしまった」とし「失敗した過去の対北朝鮮政策をこれ以上繰り返すことなく、北朝鮮の全体主義体制の性格は明確に再規定したうえで、浪漫的な民族主義的思考から脱し、『分離を通じた統一戦略』を推進することこそ、朝鮮半島の平和を維持し、平和統一の時期を大きく早めることに寄与できるだろう」と記している。

 同氏は「分離というのは、韓国は北朝鮮と統一する意思がないから、別々に分かれて国と国との関係として南北関係をみようということ」と主張している。しかしこれは、南北関係を「統一を目指す過程で暫定的に形成された特殊な関係」と規定した南北関係発展に関する法律第3条と「大韓民国の領土は朝鮮半島とその付属島しょとする」と明示した憲法第3条に反する。

 専門家は、キム候補の統一観、北朝鮮観は南北の和解と協力を推進する主務長官として不適切だと指摘する。

 北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は、「キム候補の言う通りに民族共同体統一案を否定し、体制統一を追求すれば、結局は北朝鮮が韓国に吸収されるかたちになる。北朝鮮はさらに攻勢的になるだろうし、統一どころか分断が永久化するだろう」と述べた。国会外交統一委員会に所属する共に民主党のチョ・ジョンシク議員も「既存の大韓民国の統一政策と精神を否定する人物は統一部長官になってはならない」と述べた。

シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1099530.html韓国語原文入力:2023-07-10 18:52
訳D.K

関連記事