本文に移動

[寄稿]対話と交渉を偽の平和だと主張する者たちへ

登録:2023-07-11 01:16 修正:2023-07-11 07:10
周辺国は現状維持を好む。平和協定という「法的な平和」は4者間の包括協定によって実現したとしても、平和体制という「事実上の平和」は軍事的な信頼の構築の当事者である南北が合意し、履行しなければならない。不安定な停戦体制が続けば、朝鮮半島は「大国の政治」が衝突する地政学的悲劇の舞台に過ぎない。 
 
キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授
4日午前、休戦70年朝鮮半島平和行動の会員たちがソウル龍山区の戦争記念館前で記者会見を行い、政府を糾弾するスローガンの記されたプラカードを掲げている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「南北は平和協定を締結して互いに対する武力の使用を放棄し、あらゆる分野で関係を正常化する道を進まねばなりません」

 こう述べたのはいったい誰だとお思いだろうか。これは反国家勢力ではなく、まさに保守中の保守、盧泰愚(ノ・テウ)大統領による1991年9月の国連総会での演説だ。この演説で彼は「南北は軍事的信頼の構築にもとづき、実質的な軍備縮小を推進」しようとも提案した。全世界が見守る外交の舞台で大韓民国の大統領が平和協定を提案してから32年がたったが、なぜ反国家勢力などという言葉が謳われているのか。

 「新たな恒久的平和体制の追求は、南北が主導しなければならない」

 誰の言葉だろうか。保守与党のルーツである金泳三(キム・ヨンサム)大統領が1996年4月に済州で米国のビル・クリントン大統領と共同で発表したものだ。この済州宣言で韓米両国は、平和体制を論議するための南北と米中が参加する4者会談を提案した。金泳三大統領は世論に敏感で、南北関係を国内政治に利用したが、少なくとも平和に関する時代的使命は否定しなかった。成果にはつながらなかったものの、4者会談は1997年から6回にわたり本会談が行われた。平和体制に関する韓米両国の合意の歴史は非常に長い。

 終戦宣言は平和協定へのかけ橋だ。終戦宣言について文在寅(ムン・ジェイン)政権は、実質的な措置を含めるべきだという北朝鮮の主張と、非核化の速度と連係させるべきだとする米国の主張との間にあって、米国の主張にはるかに近かった。韓米両国の合意を重視したため、国連軍司令部の機能変化を含む停戦体制の変更は議論の対象ではなかった。当然にも北朝鮮の立場とは異なり、そのため成果もなかった。終戦宣言を親北朝鮮とみる主張は事実ではない。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権はあらゆる外交安保政策から「平和」を消し去った。「檀君(タングン)以来」初めて見る見慣れない風景だ。北朝鮮は核武装を続け、南北関係の悪化も長期化し、米中関係も厳しい中、近い将来に(南北の)交渉の再開を期待するのは困難だというのは認める。しかし盧泰愚政権や金泳三政権は、南北関係が良好だったから平和体制を提案したわけではない。戦争を経験した朝鮮半島において平和は時代の課題であり、憲法精神であり、多数の国民のコンセンサスだ。一部の極右勢力を除き、誰が戦争を望もうか。平和を作る意志がなければ、当然平和を守ることも難しい。すでに経験してきた悲劇をなぜ繰り返そうとするのか。

 平和体制を放棄すれば、北朝鮮の核問題はどうなるのか。この30年間というもの、平和体制についての論議は北朝鮮の核問題をめぐる交渉の枠組みの中で行われてきた。北朝鮮が核を放棄しうる条件と環境を整えるためには安全保障を提供しなければならないが、その核心こそ関係正常化と平和体制だからだ。これは1994年の朝米枠組み合意から2005年の9・19共同宣言、2018年の南北、朝米首脳会談に至るまで、一貫したものだ。平和体制を放棄すれば、当然対話と交渉によって北朝鮮の核問題を解決する可能性もなくなる。残るのは軍拡競争であり、核戦争の恐怖だけだ。

 平和体制論議の主要な当事者である韓国が放棄すれば、周辺国は誰も停戦体制の現状変更を試みないだろう。周辺国は現状維持を好む。平和協定という「法的な平和」は4者間の包括協定によって実現したとしても、平和体制という「事実上の平和」は軍事的な信頼の構築の当事者である南北が合意し、履行しなければならない。不安定な停戦体制が続けば、朝鮮半島は「大国の政治」が衝突する地政学的悲劇の舞台に過ぎない。

 外交の扉は閉ざされ、交渉へと向かう橋は落とされ、戦争の言説ばかりがあふれている。平和を望むなら戦争を準備せよという剣で争っていた時代の格言は、核武装の時代にはふさわしくない。対話と交渉を偽の平和だと主張する人々が望むのは戦争だ。しかし、暴力は平和ではない。平和は平和的手段によってのみ持続可能だ。さらに、平和は政争の対象ではない。市民は日常の平和に慣れて平和の存在を忘れたりもするが、平和が脅かされれば変わる。世論は二重的だ。情勢を悪化させる北朝鮮に対する批判世論は強いが、同時に情勢を安定的に管理すべき政府の責任も重要視する。過去の選挙でイデオロギー的レッテル貼りが起こした北風が、いつも逆風として作用したのはなぜか。大韓民国の国民の方がはるかに賢いからだ。

 終戦でもなく平和でもない、「戦争を一時的に中断」した停戦に合意して70年を迎える7月に、平和とは何かを問う。平和は戦争ではない。与野を問わず力による平和を主張する人々には、盧泰愚大統領の1989年の国連総会演説を聞かせたい。「朝鮮半島で刀を溶かしてすきを作る日、世界には確実な平和が訪れるだろう」

//ハンギョレ新聞社

キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1099368.html韓国語原文入力:2023-07-09 19:22
訳D.K

関連記事