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尹大統領、独自核武装論を展開する南北対決主義者を統一部長官候補に指名

登録:2023-06-30 01:43 修正:2023-06-30 07:18
新しい統一部長官候補者に指名された誠信女子大学政治外交学科のキム・ヨンホ教授が29日、人事聴聞会準備事務所が設けられたソウル鍾路区の南北会談本部に到着し、長官候補としての立場について述べている/聯合ニュース

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が29日、統一部長官候補に誠信女子大学政治外交学科のキム・ヨンホ教授(64)を指名し、統一部次官には外交部出身のムン・スンヒョン駐タイ大使(59)を起用したことで、統一部長官と次官をいずれも外部の人物が務めることになった。統一部長官と次官に外部の人物が抜擢されるのは、金泳三(キム・ヨンサム)政権時代の「クォン・オギ長官、キム・ソグ次官」体制以来25年ぶり。特にキム・ヨンホ候補はこれまで「金正恩(キム・ジョンウン)政権打倒」を主張し、数回にわたって独自の核武装を強調する「南北対決主義者」である点で、北朝鮮政策と統一政策を展開する統一部を形骸化する人選だという指摘もある。

 キム候補はこれまでマスコミへの寄稿やユーチューブなどを通じて敵対的な対北朝鮮観を示し、独自の核武装と朝鮮半島における米国戦術核の再配備を主張してきた。キム候補は2019年4月18日、インターネットメディア「ペン・アンド・マイク」への寄稿で、「金正恩政権が打倒され、北朝鮮の自由化が実現し、南北の政治体制が『一つの体制』になった時、統一の道が初めて開かれることになる」と主張した。2018年9月13日、同じメディアに寄稿した文では「南北関係は敵対関係」だと主張した。今年2月20日のユーチューブ・チャンネルでは「米国は韓国に戦術核兵器を再配備することを積極的に考慮すべきであり、韓国も米国にそれを強く要求しなければならない時期」だとし、朝鮮半島における米国戦術核の再配備の必要性を強調した。

 「南北関係は敵対関係」であり、「金正恩政権打倒」で統一の道を開くべきだというキム候補の主張は「強圧的吸収統一論」といえる。これは「吸収統一を追求しない」という尹錫悦政権の公式方針に反する。戦術核の再配備も政府の立場とは相反する。クォン・ヨンセ統一部長官は昨年10月、国会国政監査で与党の一部で主張する戦術核の再配備について「政府の立場ではない。賛成しない」と述べた。

 尹大統領は露骨な敵対的対北朝鮮観を持つキム・ヨンホ候補者を長官に起用したのに加え、駐米大使館政務公使などを務めた正統外交官のムン・スンヒョン駐タイ大使を次官に内定した。これは尹大統領が統一部の機能と性格を大々的に変え、事実上「北朝鮮人権部」に変えるというシグナルとみられる。統一部がこれまで主導してきた南北対話と交流よりは、国際社会と共に北朝鮮人権問題を浮き彫りにさせ、北朝鮮に圧力を加えることに注力するという見通しも示されている。尹大統領は同日、大統領室統一秘書官に国内外の人権問題を研究してきた韓信大学のキム・スギョン教授(社会福祉学)を内定したというが、これもまた同じ脈絡だといえる。

 北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は、「対話と協力による平和統一を目指す統一部ではなく、対立と対決を通じて吸収統一を目指す『対決部』または『北朝鮮吸収部』の出発を知らせる人事だ」と評した。

 外部出身の長官と次官を迎える統一部は困惑する雰囲気だ。「聯合ニュース」によると、ある職員は「統一部に業務とアプローチ方式、構成員のマインドなど組織アイデンティティを完全に変えろという要求かもしれない」と語った。

 キム候補は同日、記者団に対し、「原則を持って北朝鮮の核問題の解決と南北関係改善のための基盤づくりに努める」と述べた。また「北朝鮮政権が打倒されてこそ統一できるという考えには変わりがないのか」という質問に「一部ではそのような報道もあるが、私が書いた文があるので、文をよく読んでもらえれば、その文脈を理解できるだろう」と答えた。また「対北朝鮮強硬派として知られているが、統一部長官として交流と協力をする役割をうまく遂行できるか」という質問には「懸念に対しては聴聞会の過程で詳しく申し上げる」と答えた。

シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1098137.html韓国語原文入力:2023-06-30 00:55
訳H.J

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