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「尹政権、自由・人権強調する『価値観外交』は恣意的…サウジ皇太子とは会うのか」

登録:2023-06-17 07:45 修正:2023-06-17 09:49
ムン・ジョンイン教授、6・15南北会談23周年講演 
ハンギョレとのインタビューで尹政権の「価値観外交」批判
15日(現地時間)、ドイツのベルリン自由大学で延世大学のムン・ジョンイン名誉教授が講演している=ベルリン/ノ・ジウォン特派員

 「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が追求する『価値観外交』というのは、かなり恣意的(arbitrary)だと思う。自由、人権、民主主義を強調しつつも、経済的実用主義に従ってサウジアラビアの皇太子とは抱擁を交わすではないか」

 6・15南北首脳会談が23周年を迎えた15日(現地時間)、延世大学のムン・ジョンイン名誉教授はドイツのベルリン自由大学での講演と、その後のハンギョレとのインタビューで、尹錫悦政権のいわゆる「価値観外交」についてこのように指摘した。この発言は、聴衆からの「尹錫悦政権は日本などとの協力が示すように価値観外交を展開しているが、これを実用的だと考えるか」との質問に答える過程でなされた。ムン教授は、文在寅(ムン・ジェイン)政権で大統領統一外交安保特別補佐官を務めた国際政治と朝鮮半島問題の専門家だ。この日の講演はすべて英語で行われた。

 ムン教授は、尹大統領やキム・テヒョ国家安保室第1次長ら現政権のメンバーは「自由、人権、民主主義」を強調しているとし、「(自分たちは)日本と共通の価値観を共有しているため安保分野で協力すると言っているが、矛盾がみえる」と述べた。そして、尹大統領が「経済的実用主義」にもとづいて独裁国家であるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会ったり、事実上の一党独裁国家であるベトナムを訪問したりしたことを例にあげた。ムン教授は「事実上、尹大統領の価値観外交というのは、北朝鮮、中国、ロシアを標的にしているのではないか」とし「尹錫悦政権も価値観外交と実用外交を調和させる必要がある。米国の一部でもこれを『理想主義外交の結果』だと指摘している」と述べた。現政権は自由、人権、民主主義を強調しつつ北朝鮮や中国などに対する強硬発言を続けているが、その基準が一貫していないということを指摘したのだ。

 ムン教授は、ロシアの全面侵攻で始まったウクライナ戦争において現れている北朝鮮とロシアの関係をどのようにみるかという質問に、「金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がプーチン大統領に送った祝電には、ロシアとの『戦略的協力』を緊密にするという趣旨の話が記されている」とし、「ウクライナの主権と領土のかかった問題なのに、北朝鮮がロシアに対して一方的に支持を表明することは、自ら身動きを取りにくくするもの」と述べた。ムン教授は「なぜなら北朝鮮はロシアの必要不可欠な一部分になったように見え、北朝鮮にとっても(今後)これを正当化するのは非常に難しいから」だと説明した。12日のロシアの日に際して金委員長は、北朝鮮とロシアの関係は「大切な戦略的資産」だと述べ「善隣協力関係」を強調している。

 北朝鮮の核問題についての交渉や対話の扉を近いうちに開くのは、現実的に難しいとの見方も示された。ムン教授は、来年は米国の大統領選挙が予定されているため、直ちに米国が北朝鮮の核問題の解決のために積極的な行動に出る可能性は低いとの見通しを示し、「今年8月以降は、バイデン大統領が何らかのイニシアチブを選択する時間はないだろう」と述べた。

 ムン教授はこの日のハンギョレとのインタビューで、尹政権の「強対強」の対北朝鮮政策を指摘しつつ、「尹錫悦政権が就任してからの1年間で、30回にわたる弾道ミサイルの発射実験によって74発のミサイルが発射された。文在寅政権の5年間では、北朝鮮の弾道ミサイル発射実験は43回、ミサイルは67発。文在寅政権の5年間よりも、尹政権の1年間で行われたミサイル実験の方が多い」と述べた。

 ムン教授は「韓米合同軍事訓練を行い、訓練の頻度と強度を強調するため、自然と北朝鮮はそれに対する反作用としてミサイル発射実験を行う。悪循環に陥っている」とし「危機の安定化」作業の重要性を強調した。具体的には、ホットライン直通電話を再開して意思疎通のチャンネルを確実なものにするほか、北朝鮮は核ミサイルの発射実験を自制して、双方が緊張緩和に努めるべきということだ。韓米が軍事演習の回数を減らす必要性も強調した。ムン教授は「南北首脳会談23周年の今日、韓米が類例のない強烈な火力訓練を実施するというのは、あまりにも逆説的」だとし「これは過去の完全な否定ではないかという印象を与える」と語った。

 早いうちに交渉が実現するのは難しいだろうが、ムン教授はそれでも「外交的交渉」の重要性を強調した。そして「ひとまず条件なしに会い、調整し、(距離を)狭めていかなければならない」とし「韓国が(北朝鮮が望む通り)合同軍事訓練を中止すれば、北朝鮮も韓国、米国の話を聞かなければならない。7回目の核実験はしてはならず、弾道ミサイルの発射実験を中止し、西海(ソヘ)と東海(トンヘ)の非武装地帯での偶発的な軍事衝突を防ぐために努力しなければならない」と述べた。ムン教授は、朝鮮半島の非核化と北東アジアの平和の安定に向けた「北東アジア6カ国(米・中・日・ロ・韓・朝)安保首脳会談」または欧州連合(EU)も参加する「7者会談」も一種の解決策になりうると強調した。朝鮮半島の非核化問題は北東アジアの安保地形の変化なしには現実的に解決が厳しいため、6カ国の首脳が対面し、首脳会談で朝鮮半島の非核化、北東アジアの平和の安定を同時に論議できるようにすべきだということだ。ムン教授は「ただし、現実的には米中が取り組む可能性が低い状況なので、EUも参加させて『促進者』役を任せることが代案となりうる」と述べた。

ベルリン/ノ・ジウォン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1096331.html韓国語原文入力:2023-06-16 19:02
訳D.K

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