与党「国民の力」の3月8日党大会に向けた競争の本格化に伴い、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の離党論や弾劾論まで飛び出し、内部での論争が激化している。尹錫悦派である党主流派候補のキム・ギヒョン議員側が、「アン・チョルス代表不可論」を浮き彫りにするために「未来の権力」と「現在の権力」の衝突の可能性を主張していること対し、非尹錫悦派の候補らは「党員に対する脅迫をやめろ」として強く反発している。
キム議員は11日に京畿道龍仁市(ヨンインシ)の江南大学校で開催された「京畿中南部保守政策討論会」で、ライバルであるアン・チョルス候補を念頭に「大統領選(出馬)に色気を示す人は(党代表になってもらっては)困る」とし「現在の権力と未来の権力がぶつかると、どうしても口にするのもはばかられる弾劾が懸念される。大統領の任期がまだそれほどたっていないのに、そのような混乱はあってはならない」と述べた。アン議員が与党代表になれば、次期大統領選候補としての地位を固めるために尹大統領と必然的に衝突し、弾劾で尹大統領を追い出すこともありうるという主張だ。
キム候補のこのような「弾劾論」は、10日の予備選挙で尹錫悦派の最高委員候補だったイ・マンヒ、イ・ヨン、パク・ソンジュンの各議員が相次いで脱落し、イ・ジュンソク(前代表)派のホ・ウナ議員やキム・ヨンテ元最高委員らが全員生き残った直後に飛び出した。尹大統領と尹錫悦派の露骨な「非尹錫悦派たたき」のせいで逆風に見舞われたことから、キム候補は弾劾論で「尹錫悦派の民意」を結集しようとしていると分析される。
非尹錫悦派の候補らは、キム議員の後援会長だったシン・ピョン弁護士が述べた「尹大統領離党論」やキム議員の「弾劾論」はいずれも「危機感を助長する脅迫戦略」だとして批判した。尹大統領の助言者として知られるシン弁護士は先日、「アン議員が党代表になった場合、尹大統領は離党して新党を結成するだろう」と主張し、党内に波紋が広がった。事態が落ち着きをみせた途端、今度はキム議員が弾劾論を持ち出した格好だ。
アン議員は12日、フェイスブックに「いったい2人はどういった精神状態であのような妄想をするのだろうか」、「党員にも失礼な発言」だと述べて、キム議員に謝罪を求めた。別の党代表候補であるチョン・ハラム氏は同日、ホ・ウナ議員、キム・ヨンテ元最高委員、大統領選挙で尹錫悦陣営の青年本部首席報道担当だったイ・ギイン氏とともに行った非尹錫悦派候補の記者懇談会で、「与党の党大会でなぜ大統領の離党、大統領弾劾などという決して登場してはならない話が出てくるのか。本人の支持率(を上げること)に焦りがあったとしても、政治には禁じ手というものがある」とキム議員を批判した。記者懇談会に同席したイ・ジュンソク前代表も「キム・ギヒョン候補はかつて蔚山(ウルサン)市長時代、朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾論議があった時、誰よりも先頭に立って弾劾に賛成するとの立場を表明した人」だとし「今このようなやり方で脅迫することで、果たして国民の支持が得られるだろうか。すでにそこで落第点」だと述べた。
キム議員は、野党が先日あげたイ・サンミン行政安全部長官弾劾訴追決議について「尹大統領を狙った予行演習」だとし、自分の弾劾論は荒唐無稽な憶測ではないと反論した。キム議員は12日、フェイスブックに「アン・チョルス候補はこれまで民主党と同じ脈絡の主張を展開し、イ・サンミン長官の解任を要求している」とし、「今は政権初期なので大統領の顔色をうかがうこともあるだろうが、代表になればイ・サンミン長官弾劾のように大統領に刃を向ける可能性があるという懸念は、十分にしうるのではないか」と記した。また、「尹錫悦には資格がない。1年もすれば尹錫悦に投票した自分の指を切りたくなるだろう」と述べた昨年の大統領選候補としてのアン議員の発言を取り上げて「アン候補の10年間の政治人生を見れば、状況によって言うことを変えることがひときわ多かった。そのようなアン候補が党の主導権を握ったら、また新たな状況論理を掲げて尹大統領と反目しないなどと確信できるだろうか」と書き込んだ。
キム議員の「弾劾論」が党大会の構図に及ぼす影響については、観測が分かれている。与党のある重鎮議員は、「党代表は『未来の権力』のうちの一人が担うもの。そのような人物が多ければ多いほど、私たちに対する支持につながるだろう」とし「なぜ弾劾の話を持ち出すのか。キム候補は次第に泥沼にはまっていっているようだ」と語った。別の重鎮議員は「伝統的な党員には(大統領の)弾劾がかなりトラウマとして残っている」とし「(キム候補の)メッセージは受信者に正確に向けられており、受信者のトラウマに正確に触れたものであるため、キム候補には打撃はないだろう」と述べた。