尹錫悦大統領は4日、昨年末に北朝鮮の無人機が首都圏上空を侵犯したことについて「北朝鮮が再び我が領土を侵犯する挑発を起こしたら、9・19軍事合意の効力停止を検討せよ」と国家安保室に指示した。尹大統領が自ら「9・19合意の効力停止」に言及したのは今回が初めて。南北の偶発的な軍事衝突などを防ぐための最小限の緩衝装置としての役割を果たしてきた9・19軍事合意が、締結から4年3カ月あまりで存廃の岐路に立たされたことで、朝鮮半島をめぐる危機は高まりつつある。
尹大統領は4日午前、ソウル龍山(ヨンサン)の大統領室で国家安保室、国防部、合同参謀本部、国防科学研究所から北朝鮮の無人機への対応戦略についての報告を非公開で受け、このように指示した。大統領室のキム・ウンヘ広報首席が語った。キム首席は「(尹大統領が)北朝鮮の挑発に対する、比例的水準を超える圧倒的対応能力を大韓民国国軍に注文したもの」とし「確固たる安保準備態勢を強調したものであり、何より国民の命と安全を守る国軍の統帥権者として、その役割と責任を果たすためのもの」だと説明した。
尹大統領が9・19軍事合意の効力停止検討という強硬策に自ら言及したのは、2018年の南北首脳による合意で締結された9・19軍事合意が北朝鮮の相次ぐ武力示威で事実上無力化したと判断したことに伴うものと分析される。実際に北朝鮮は、先月26日に5機の小型無人機を軍事境界線(MDL)以南に侵入させたのをはじめ、昨年10月から12月にかけて東海(トンヘ)上と西海(ソヘ)上の北方限界線(NLL)北方の海上緩衝区域内に砲兵射撃を加えるなど、昨年10月以降、9・19軍事合意に15回違反している。大統領室は、このような中で北朝鮮の挑発意志をくじくには、圧倒的な対応しかないと考えている。大統領室の高官は、「単に無人機(の領空侵攻)だけでなく、ミサイル挑発を含め、事実上北朝鮮の合意違反が日常化する非正常な日々が続いてきた」とし、「今後、北朝鮮のさらなる挑発がないことを願う」と述べた。
だが、共に民主党は尹大統領による9・19軍事合意の効力停止検討指示について「むしろ北朝鮮に対し、9・19合意を飛び越えて韓国に対する敵対行為を行いうる余地を与えた格好にしかならない」とし「戦略的に誤った選択」(アン・ホヨン首席報道担当)だと批判した。
一方、尹大統領はこの日、北朝鮮の無人機への対応戦略について報告を受けた後、イ・ジョンソプ国防部長官に対し、監視偵察や電子戦などの多目的任務遂行のための合同ドローン部隊の創設▽探知の難しい小型ドローンの大量生産体系を年内に構築▽年内にステルス無人機の生産開発▽ドローンを捕える「ドローンキラー・ドローン」システムの迅速な開発などを指示した。軍当局はこれに沿って「合同ドローン司令部」を早期に創設する一方、年内に国防科学研究所がすでに保有する技術を用いてステルス無人機や小型ドローンなどを生産すると明らかにした。