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梨泰院惨事の犠牲者リストを無断公開…遺族「もう一度傷つけられる」反発

登録:2022-11-15 09:46 修正:2022-11-15 12:59
「市民メディア・タンポポ」リスト公開 
遺族「改めて傷を与えること」 
キム・スンソプ教授「誰の位置からの正義なのか、一度考えて」
2日午前、「梨泰院惨事」現場近くのソウル龍山区梨泰院駅1番出口に設けられた追悼空間に犠牲者を追悼する犠牲者の写真と追悼文、菊などが置かれている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

 韓国の新生インターネットメディアが梨泰院(イテウォン)惨事被害者のリストを遺族の同意なしに公開し、物議を醸している。

 14日、インターネットメディア「市民メディア・タンポポ」は、遺族の同意なしに梨泰院惨事の犠牲者155人のリストをホームページに掲示した。この報道で同メディアは「犠牲者を匿名の陰に埋もれさせ続けることで波紋を縮小しようとすることこそ、むしろ災害の政治化であり、政治工学だ。名前だけでも公開することが真の哀悼と責任究明に寄与する道だと判断する」とし「遺族協議体が構成されておらず名前のみの公開も遺族に同意を得られなかった点に対しては深く了解を求める」と表明した。

 梨泰院惨事の遺族たちは、同意のないリスト公開に反発した。犠牲者のK君(17)の父親の叔父のチョン・インソンさん(62)は「遺族は政府に真の謝罪と真相究明を要求しているが、この時点で名簿を公開することは遺族にもう一つの傷を与えることになる」と話した。また、別の遺族は「追悼するのは良いが、遺族の同意なしに名前が上がってきたので当惑した」と話した。

 セウォル号の遺族であるチョン・ミョンソン4・16民主市民教育院長は本紙に対し「セウォル号惨事でも遺族の同意なしに犠牲者の遺影などが出て、自分の孫が犠牲になったことを知らなかった祖父母が大きなショックを受けるということがあった。遺族の同意なしに犠牲者リストを公開することは、犠牲者の名誉を汚したり遺族のトラウマを刺激する恐れがあるため、国民の知る権利だと主張するなら受け入れがたい」として「遺族の意見が最も重要だ」と述べた。

 政界と市民社会からも批判の声が出た。国民の力のパク・チョンハ首席報道官は、名簿公開は「明らかな2次加害」だと批判し「法的検討や対応策も考えうる」と答えた。共に民主党のアン・ホヨン首席報道官も「同意なしにこのようなリストが公開されるのは適切ではないと考える」と話した。

 民主社会のための弁護士会(民弁)「10・29惨事」真相究明および法律対応タスクフォース(TF)は、この日声明を出し、「遺族の同意のない名簿公開に深い憂慮を表わす。名簿公開の撤回を要請する」と明らかにした。全国言論労働組合も、遺族の同意なしに犠牲者リストを公開したことに対して記事削除を求めた。

 セウォル号惨事の生存者などのトラウマを研究したソウル大学保健大学院のキム・スンソプ教授は、自身のSNSに「トラウマを経験した人たちにとって必要なのは、統制できないこと、望まないことは起きないという安定感」だとし「名前公開で遺族たちが得られるものが何なのか、私は分からない。もしその公開が社会正義を実践することだと考えるのなら、その正義が誰の位置から眺めた正義なのか一度考えてほしい」と書いた。

 「タンポポ」の関係者は本紙に「過去の大型惨事や災害において名簿公開で問題になったことはなく、ワシントン・ポストなど海外メディアは年齢と国籍まで公開する」と話した。ただし「倫理的な問題が全くないとは思わない。遺族の個別の要請がある場合は(名簿公開を)熟考する」と付け加えた。この関係者はリスト入手の経緯については「言えない」と話した。

 「市民メディア・タンポポ」は15日に正式創刊を控えたインターネットメディアで、今回の名簿公開は「市民言論ザ・探査」と共に進めたと明らかにした。

パク・スジ、コ・ビョンチャン、クォン・ジダム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1067220.html韓国語原文入力:2022-11-150 8:22
訳C.M

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