大統領室が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の東南アジア歴訪において文化放送(MBC)の取材陣を専用機搭乗から排除すると9日に発表したことに対し、メディア団体は「反憲法的言論弾圧」だとして強く反発した。
メディア団体は、今回の事案が言論の自由を根本的に否定するものであることから、大統領室の出入り記者団や使用者団体も含め、メディア界全体が共同で対応にあたるべきだと強調した。
放送記者連合会、全国言論労働組合、韓国記者協会、韓国女性記者協会、韓国映像記者協会、韓国PD連合会の6団体は10日午後、ソウル龍山区(ヨンサング)の大統領室前で記者会見を行い、緊急共同声明を発表した。
声明は「大統領室が権力批判を理由として特定のメディアに対して取材を制限し、専用機搭乗から排除することは、大韓民国の憲政史上類を見ない言論弾圧かつ暴力であり、憲法が規定した言論の自由に対する明白な挑戦」だと批判した。
また「大統領室の今回の措置は、大統領の海外歴訪での悪態、卑語使用による波紋、梨泰院で起きた悲劇的な惨事に対する無責任な対応など、自分たちの無能と失政がもたらした国政乱脈の責任をメディアへと転嫁し、一部の極右支持層を結集させるための低劣な政治的攻撃」だとし「今回の事案は陣営にとどまらない、言論の自由の保障という民主的基本秩序に対する正面からの挑戦」だと主張した。
大統領室は9日夜、MBC取材陣の大統領専用機への搭乗を認めないことを決めたとし、「このところMBCによって外交に関する歪曲、偏向報道が繰り返されてきたことを考慮し、取材上の便宜を提供しないことにした」と通告した。
これに対してメディア団体は「大統領専用機は国民の税金で運用され、取材費用はメディア各社が自費で負担している」とし「あたかも大統領専用機への搭乗を尹錫悦個人の私有財産利用という恩恵を施すものであると勘違いしている大統領室の時代錯誤的認識には、驚きを禁じえない」と指摘した。
また「尹錫悦大統領は反憲法的で反歴史的な取材制限措置を直ちに取り消し、国民の前で謝罪せよ」とし、「納得しうる措置を尹錫悦政権が取らないなら、我々は今回の事態を言論の自由と民主主義に対する重大な脅威と規定し、尹錫悦政権との全面対決も辞さない」と宣言した。
MBCもこの日、文書で立場を表明し、その中で「特定メディアに対する大統領専用機への搭乗拒否は、軍事独裁時代にも見られなかった前代未聞の出来事」だとし「大統領室による専用機搭乗拒否は言論の自由を深刻に制約する行為と考え、遺憾の意を表する」と述べた。
そして「国民の血税で作られた大統領専用機は公的監視の対象でもある」とし「気に入らないメディアには取材の便宜を提供しなければ済むという大統領室の立場は、公共財産を私有財産のように認識するなど、公的領域についての認識がないのではないかという懸念を呼び起こすのに十分だ」と付け加えた。