北朝鮮は10日、戦術核運用部隊の訓練を一度に公開し、貯水池から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射したと主張した。これまで国内外のいずれにおいても、海ではなく内陸の貯水池からSLBMが発射された事例はない。韓国の北朝鮮の核への対応策である「キルチェーン」が発射の兆候を読み取れないよう、SLBM発射のプラットホームを拡大したものとみられる。
北朝鮮の朝鮮中央通信は、労働党創立77周年にあたるこの日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が先月25日から今月9日までの半月間、北朝鮮軍の戦術核運用部隊・長距離砲兵部隊・空軍飛行隊の訓練をすべて現場指導したとして、関連の写真数十枚を公開した。
北朝鮮は特に、先月25日の早朝、北部の貯水池の水中発射場で、戦術核弾頭の搭載を模した弾道ミサイルの発射訓練が実施されたと主張し、貯水池とみられる所からSLBMが噴きあがる写真を公開した。当時、韓国軍当局は、北朝鮮が平安北道泰川(テチョン)一帯で、車両形態の移動式発射台(TEL)から短距離弾道ミサイル(SRBM)を発射したと推定した。軍当局は、北朝鮮が貯水池からミサイルを発射する気配にまったく気づけず、発射後に軌跡だけを把握し、ミサイルが地上から発射されたと判断した。
国内外のSLBM開発過程をみると、海上のバージ船から発射→水中のバージ船から発射→潜水艦発射の段階を踏む。軍当局はこれまで、北朝鮮は潜水艦発射の段階に達することはできず、造船所や潜水艦の基地などがある咸鏡南道新浦(シンポ)一帯の海上・水中からSLBMの発射実験を実施していたと分析していた。
しかし、北朝鮮がこの日公開した写真によると、内陸の貯水池にある水中バージ船から「コールドローンチ」方式で発射したものとみられる。コールドローンチは、ミサイルを水面上に押しあげた後に点火する方式で、SLBM発射に必要な技術だ。
北朝鮮が有事の際に潜水艦だけでなく内陸各地の貯水池からSLBMを発射した場合、韓国軍当局が事前探知して打撃するのはより一層困難になる。航空大学のチャン・ヨングン教授は「韓国が北朝鮮のミサイル発射の兆候を捕えたら直ちにキルチェーンで対応するとしていることから、兆候を隠すために様々なアイデアを出しているようだ」と述べた。北朝鮮は昨年9月と今年1月、鉄道網をプラットホームに用い、位置を変え列車からミサイルを発射したことがある。今回のように内陸の貯水池からミサイルを発射するとなると、有事の際に韓国のキルチェーンの作動は難しくなる。貯水池から発射されたミサイルは「北朝鮮版イスカンデル」と呼ばれる短距離弾道ミサイル「KN-23」の改良型である可能性があることがわかった。