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台風11号で公式が破綻…「海水温上昇」さらに強い台風が朝鮮半島にやって来る

登録:2022-09-07 02:33 修正:2022-09-07 07:58
台風11号「ヒンナムノー」の通過に伴う豪雨で浸水した慶尚北道浦項市南区仁徳洞で6日午後、台風に流されて来たコンテナ施設が車に覆いかぶさり、まるで戦場のようになっている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 慶尚北道浦項(ポハン)をはじめ、南部地方に集中的に被害をもたらした台風11号「ヒンナムノー」は、従来の台風の公式を破綻させたという評価を受けている。これまでに経験してきた台風とは発生場所や強さなどが異なるからだ。気候変動により海水面の温度が高まっていることで、朝鮮半島に影響を及ぼす台風は今後、さらに強力になりうるとの見通しが示されている。

 台風11号は6日午前4時50分ごろ、慶尚南道巨済(コジェ)に上陸し、午前7時10分に蔚山(ウルサン)沿岸から東海に抜けた。上陸時の台風11号の中心気圧は955.9ヘクトパスカルで、強さでは1959年台風14号(サラ)、2003年台風14号(マエミー)に次いで3位。台風は中心気圧が低いほど強い。台風11号は朝鮮半島に上陸する前に、台風の強さを表す等級で最も高い「超強力」(韓国では強い順に超強力、非常に強い、強い、中)に達したこともある。

 台風11号は従来の台風と発生地点からして異なる。先月28日夜9時、台風11号が熱帯低気圧から台風へと発達した場所は、東京の南東1280キロの海上だった。その緯度は北緯26.9度で、北緯25度以上で超強力に達するほど強い台風が発生したのは今回が初めて。韓国に影響を与える台風は主に北緯5~20度で発生し、特に強い台風は北緯5度以上の北西太平洋の低緯度の暖かい海で発生するケースが多いが、このような公式が破綻したのだ。

 台風11号が従来の台風より相対的に高緯度で発生しえた背景としては、海水面温度があげられる。台風は水温が26度以上の場所で発生し、高い海水面温度は台風発達の主要なエネルギー源だ。気象庁のウ・ジンギュ予報分析官は「北緯25度より上で台風が強く発達する可能性が低い理由の一つは、海面温度がそれを支えられないためだ。北緯25度以上であれば海水面温度は27~28度ほどだが、これは台風11号のように強い台風を作り出すには足りない。今回台風が発達して西進した地域は海面温度が高かった」と述べた。気象庁の北西太平洋海水面温度分析図によれば、先月31日午前9時に台風11号が位置していた沖縄の東南東約250キロメートル付近の海上の水温は29~30度に達した。平年より1~2度高い数値だ。ウ予報分析官は「気候変動による影響である可能性がある」と語った。

 台風11号が北緯30度を越えてからも強い勢力を保ったことも、珍しいケースだと評価される。気象庁のハン・サンウン総括予報官が5日のブリーフィングで「予報官として生きてきて、このような台風は初めて見る」と述べたほどだ。通常、台風は北緯30度付近までやって来れば、海水面温度の低さなどの影響で勢力が弱まるが、台風11号は違った。この台風は北緯30度付近でも「非常に強い」を保ったが、中心気圧を見るとむしろ勢力はさらに強まっていた。4日午前9時には北緯26度で中心気圧940ヘクトパスカル、4日午後3時には北緯27度で935ヘクトパスカル、5日午前9時には北緯29.8度で930ヘクトパスカル、5日正午には北緯30.2度で930ヘクトパスカルだった。

 台風11号が強い勢力を保ったまま朝鮮半島に上陸できたのも、海水面温度の影響だ。気候変動と3年連続のラニーニャ現象が海面温度を高めたのだ。ラニーニャが発生すれば東から西へと吹く貿易風が強まるため、東太平洋の暖かい海水がアジア大陸側の西太平洋へと移動し、これに伴って西太平洋の水温が上がる。ソウル大学地球環境科学部のホ・チャンフェ教授は「東シナ海の海水面温度が非常に高かったことによる影響とみられるが、気候変動のせいだと言わざるを得ない」と語った。済州大学台風研究センター長のムン・イルチュ氏も「台風11号が停滞した後に北上しつつ勢力を拡大したのは、東シナ海の水温が高いためだが、過去40年間で東シナ海の夏の水温は1.5度以上高まっていると最近分析している」とし、「西太平洋の温度を高めるラニーニャ現象の影響もある」と語った。

 気候変動により、朝鮮半島周辺の海水面温度はさらに高まる見通しだ。先月31日、気象庁は「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第6次評価報告書で用いられた新たな気候変動シナリオに沿った朝鮮半島周辺海域の将来の展望についての分析結果を発表し、近い将来(2021~2040年)に朝鮮半島周辺海域の海水面温度は現在(1995~2014年)より約1.0~1.2度上がるとの見通しを示した。遠い未来(2081~2100年)には、画期的に炭素排出量を削減したケースでは1.8度、削減努力なしに炭素排出を続けたケースでは4.5度上がると予想される。

 気候変動で海水面温度が高まり、豊富な水蒸気が供給されれば、台風はさらに強まるものとみられる。世界気象機関(WMO)とアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が共同で設立した「台風委員会」は、2020年に発行した「気候変動による台風の変化報告書」で「気候変動によって台風はますます強くなるだろう」と述べている。慶北大学のカン・ナミョン教授(地理学科)は「気候変動によって海水面温度が高まることで台風はさらに強くなるということに疑いの余地はない」と語った。

キム・ユンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/1057775.html韓国語原文入力:2022-09-06 17:37
訳D.K

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