韓国の全国最大の検察庁であるソウル中央地検の「捜査時計」が、それぞれ異なる速度で回っている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の配偶者であるキム・ゴンヒ女史のドイツモーターズ株価操作疑惑事件や、告発教唆関連者である「国民の力」のキム・ウン議員の公職選挙法違反事件などは、検察の定期人事などを理由にこれと言った進展もなく「継続捜査中」だ。一方、共に民主党と前政権関連者など野党関連捜査は、担当の部長検事が辞意を示したにもかかわらず、全部処に捜査対象を拡大するなど、定期人事の前に一つでも多く掘り出そうとする明確な意志がうかがえる。
文在寅(ムン・ジェイン)政権当時の女性家族部の大統領選政策開発公約事件を捜査しているソウル中央地検公共捜査2部は17日、共に民主党の政策研究室の主要関係者を参考人として呼び、4時間ほど取り調べた。女性家族部に公約資料を要求した理由や、他の部処にも同じ要求をしたのかなどを尋ねたという。捜査チームは最近、チョン・ヨンエ前女性家族部長官とキム・ギョンソン前次官も呼んで取り調べた。また、女性家族部以外の部処にも公文書を送り、大統領選公約資料を要請された事実があるかどうかを確認している。
検察の定期人事が差し迫った場合、通常は後任のために捜査を行わないのが一般的だ。その上、この捜査を指揮していたキム・ギョングン部長検事は最近、辞職の意思を示した。先月ハン・ドンフン法務部長官が任命したソウル中央地検のソン・ギョンホ地検長やパク・キドン3次長検事ら指揮部の判断の下、前政権関連捜査のスピードを上げているものとみられる。
一方、キム・ゴンヒ女史に関わるドイツモーターズの株価操作疑惑を捜査しているソウル中央地検反腐敗強力捜査2部(チョ・ジュヨン部長)は、キム女史を起訴するかどうかを決めないまま6カ月という時間を費やした。捜査チームは昨年12月、クォン・オス前ドイツモーターズ会長など主要加担者14人を裁判にかけたが、キム女史の処分は先送りしている。検察内外では、前政権の捜査にエンジンをかけた状況で、キム女史を嫌疑なしの処分にした場合の悪影響を避けるため、処分を先送りしているのではないかという見方もある。ハン・ドンフン長官は先月、国会で「すでに捜査が非常に多く行われている」と述べた。検事長出身の弁護士は「野党関連捜査が多く行われている状況を考えれば、検察が大統領夫人を嫌疑なしの処分にするのは負担になりうる」と話した。
尹錫悦大統領就任直前の先月初め、高位公職者犯罪捜査処が選挙介入疑惑の起訴意見で検察に渡した国民の力のキム・ウン議員の捜査も、公共捜査1部で止まっている。検察内部では、定期人事とチェ・チャンミン部長検事が辞意を明らかにしたためだというが、同じ状況である公共捜査2部が前政権捜査に拍車をかけているのとはかなり様子が違う。
これについて、ソウル中央地検公報検事は19日、「個別に進行中の事件の捜査を比較するのは適切ではない」と述べた。