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「n番部屋」性搾取物、85円のカップ麺もらって転売も…被害者の苦痛には無感覚

登録:2022-05-24 10:13 修正:2022-05-25 02:42
[n番部屋一般加担者一審判決文全数分析] 
数千件の性搾取物を購入 
「所持しただけなのに」悔しさ吐露
ネットフリックスのドキュメンタリー『サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く』スチールカット//ハンギョレ新聞社

 メッセンジャーアプリのテレグラムで行われた性搾取は、チョ・ジュビンなど数人の主犯だけの犯行ではない。2020年3月にチョ・ジュビンが検挙された当時、「n番部屋」と「博士部屋」をはじめとする130のテレグラム性搾取チャットルームには、26万人(推算)にのぼる「顔のない加担者」がいた。性搾取物を所持・販売・再流布した人たちは、チョ・ジュビンらが性搾取犯罪を続けられるようにした原動力だった。昨年末にチョ・ジュビンらに対する最高裁の判決は終わったが、法廷では顔のない加担者の裁判がいまも続いている。本紙は、チョ・ジュビンの後ろに隠れたn番部屋の一般加担者378人の一審判決文366件を全数分析した。

 昨年12月、ソウルのある法廷。黒いコートを着たA氏(34)が被告人席に姿を現した。両手を前に合わせて判事の前に立ったA氏は、児童・青少年の性保護に関する法律違反(わいせつ物所持)の疑いが持たれている。A氏は「n番部屋」で作られた児童・青少年性搾取物1317件をパソコンと携帯電話にダウンロードして所持し、裁判に付された。今年2月、一審は懲役5カ月に執行猶予1年を言い渡した。悔しさを吐露したA氏は控訴した。

 B氏(38)も同じ容疑で起訴された。彼は2019年6月から翌年5月まで「n番部屋」と「博士部屋」で流布された児童・青少年性搾取物2786件をダウンロードした。B氏は「誠実な社会人として生きてきたが、好奇心から罪を犯した。被害者に心から申し訳ない気持ちだ。自責し、反省し、後悔している」と述べた。一審で懲役1年に執行猶予2年を言い渡されたB氏は、判決を受け入れた。

「所持犯」の処罰は強化されたが

 n番部屋と博士部屋の一般加担者378人のうち、277人(73.3%)が性搾取映像をダウンロードして所持し、起訴された。最も多い犯罪の類型だ。SNSを通じて流通される性搾取物の広告を見て犯罪に至った人が多かったが、むしろn番部屋事件の捜査が始まった後、「好奇心で」ダウンロードした人もいた。性搾取物の需要者は処罰されないという誤った認識が蔓延していることを示している。

 A氏とB氏のように性搾取物を数千件保有していても、「単純所持」事件には大半が懲役刑の執行猶予が宣告された。韓国性暴力相談所のキム・ヘジョン所長は「n番部屋事件以前には、所持者に平均200万~300万ウォンの罰金刑が下された。懲役刑を処断刑としたのは、司法府も所持罪をこれ以上軽くみなさないという意味だ。ただし単純所持の場合、数千件の児童性搾取物を所持していても執行猶予にしかならない点は、限界として指摘したい」と話した。

 実際、本紙が分析した判決文の相当数は「一度の犯行(ダウンロード)」「所持期間が短い」という量刑減軽事由を採択していた。キム所長は「デジタル性犯罪は、一度被害が発生すれば事実上完全な回復が不可能だ。加害者の立場としては圧縮ファイルを一回ダウンロードしただけだとしても、その中に数千件の性搾取物が含まれていたならば、数千回の被害が発生したことになる」と述べた。無限の複製の可能性が開かれているデジタル性犯罪で、「単純所持」という減軽理由は限定的に適用されなければならないということだ。

85円のカップラーメンで再販売された性搾取物

 性搾取物の所持からさらに一歩進み、販売したり流布したりした一般加担者は378人中44人(11.6%)だった。彼らは「簡単に」ダウンロードした映像を、他の人に「簡単に」広めた。代価としてビットコインなど仮想通貨を受け取ったケースもあったが、「文化商品券」をもらったり、甚だしきに至っては850ウォン(約85円)のカップラーメン交換券をもらうなどで性搾取映像を渡したケースもあった。デジタル性犯罪の需要者が、被害者の苦痛にどれほど鈍感であるかを示す事例だ。裁判所は再流布者24人に懲役刑の実刑を、20人には懲役刑の執行猶予を言い渡した。

 33人は博士部屋の運営陣の指示を受けて加害行為に加担した。2019年12月に行われた「被害者リアルタイム検索チャレンジ」が代表的だ。博士部屋の運営陣は、違法撮影の映像物を広めるために、博士部屋の参加者を対象にリアルタイム検索チャレンジを行った。被害者の名前を含めた特定キーワードがポータルサイト「ネイバー」のリアルタイム検索ワードに上がるようにするために、運営陣が指定した時間に博士部屋の参加者に集団で特定キーワードを検索させたのだ。リアルタイム検索ワードチャレンジに加担した人たちは、わいせつ物所持および配布幇助の容疑で起訴された。彼らに実刑が下されたケースはなかった。罰金刑が3人、懲役刑の執行猶予を言い渡されたのが30人だった。

 デジタル性搾取物は、一度オンラインに広がれば完全な削除が不可能だ。絶えず所持・配布犯罪が発生し、法廷に立つことになるのもそのためだ。捜査網は細かくなってきている。警察は2020~21年に性搾取物流通などを集中的に取り締まり、5200人を検挙、342人を拘束した。警察庁は「偽装捜査を積極的に活用し、国際協力も強化している」と話した。

チェ・ミニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1044075.html韓国語原文入力:2022-05-24 07:03
訳C.M

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