尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は10日、国会で行われた就任式で「自由、人権、公正、連帯の価値を基盤とし、国民が真の主人である国、国際社会で責任を果たし尊敬される国を、偉大な国民のみなさまと共に必ず作っていく」と語った。政治的分裂の原因として反知性主義をあげた同大統領は、社会と経済の二極化を解消するために自由を繰り返し強調した。
尹大統領は「私はこの国を、自由民主主義と市場経済体制を基盤として国民が真の主人である国へと再建し、国際社会で責任と役割を果たす国にしなければならないとの時代的使命を持って、今日この場に立った」として、このように述べた。
同氏は、民主主義の危機の原因は「反知性主義」だと述べた。「国家間、国家内部の過度な集団的対立によって真実が歪曲され、各自が見たい、聞きたい事実だけを選択したり、多数の力で相手の意見を抑圧したりする反知性主義が民主主義を危機に陥れ、民主主義に対する信頼を害している」というのだ。「反知性主義」とは米国の歴史学者リチャード・ホフスタッターが用いた概念で、『アメリカの反知性主義』と題する著書で建国以来米国では知識人に対する嫌悪が日常になっていると言及している。
尹大統領は、このような問題を解決するためには「普遍的価値」である「自由」が重要だと述べた。同氏は「人類の歴史を振り返ってみれば、自由な政治的権利、自由な市場が息づいていた場所は、常に繁栄と豊かさが花開いた」と述べ「繁栄と豊かさ、経済的成長はまさに自由の拡大」と付け加えた。尹大統領は「自由市民となるためには、一定水準の経済的基礎、そして公正な教育と文化へのアクセスの機会が保障されなければならない」とし、「誰もが自由市民になるためには、公正な規則を守らなければならず、連帯と博愛の精神を持たなければならない」と語った。
尹大統領は「行き過ぎた二極化と社会対立が自由と民主主義を脅かしているだけでなく、社会発展の足を引っ張っている」とし、社会・経済的二極化の解決法として「飛躍と速い成長」を強調した。尹大統領は「飛躍と速い成長は科学と技術、そして革新によってのみ成し遂げられるもの」とし「科学と技術、そして革新は私たちの自由民主主義を守り、私たちの自由を拡大し、私たちの尊厳ある暮らしを持続可能にするだろう」と述べた。
北朝鮮に対しては、対話の扉を開いておくとしつつ「非核化」を前提にした。尹大統領は「私は、朝鮮半島だけでなくアジアおよび世界の平和を脅かす北朝鮮の核開発に対しても、その平和的解決のために対話の扉を開いておく」とし、「北朝鮮が核開発を中止し、実質的な非核化へと転ずるなら、国際社会と協力して北朝鮮経済と北朝鮮住民の生活の質を画期的に改善しうる大胆な計画を準備する」と述べた。そして「北朝鮮の非核化は朝鮮半島に持続可能な平和をもたらすだけでなく、アジアと全世界の平和と繁栄にも大きく寄与するだろう」と付け加えた。
これに先立ち、尹大統領は同日午前0時に、ソウル龍山(ヨンサン)の大統領執務室に設けられた国家危機管理センターの状況室で合同参謀本部の報告を受け、公式の業務を開始した。軍統帥権の引き継ぎ後、瑞草洞(ソチョドン)の家に戻った同大統領は、午前9時50分に瑞草洞の住民たちの歓迎を受けながら、キム・ゴンヒ夫人と共に初出勤の途についた。
この日の就任式には、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領夫妻や朴槿恵(パク・クネ)元大統領、李明博(イ・ミョンバク)元大統領夫人のキム・ユノク氏らが出席した。尹大統領は就任式後、執務室で米国のカメラ・ハリス副大統領の夫ダグラス・エムホフ弁護士、日本の林芳正外相など祝賀使節と面会した。