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「30年前の台湾断交は『大国中心外交』を省察するための反面教師」=韓国

登録:2022-04-22 02:23 修正:2024-08-17 09:21
[インタビュー]チョ・ヒヨン元カナダ大使
チョ・ヒヨン元カナダ大使=本人提供//ハンギョレ新聞社

 1992年の韓国外交で最も重要な出来事は何かと問えば、ほとんどの韓国人は中国(中華人民共和国)との国交正常化をあげるだろう。中国は韓国にとって圧倒的な第1位の貿易相手国だ。だから、2022年を韓中国交正常化30周年として記念することは、韓国人と韓国社会にとって自然なことだと言える。

 しかし、36年間にわたって外交の現場を渡り歩き、2015年に退職したチョ・ヒヨン元カナダ大使(66)にとって、2022年は「中華民国(台湾)」と断交して30年となる年だ。1992年8月24日は韓中国交正常化の日であり、大韓民国と中華民国との断交の日でもある(政府は中華人民共和国との国交正常化の際に約束した「一つの中国」原則に則り「中華民国」ではなく「台湾」と呼ぶ)。

 誰もが「中国」を語る中、チョ・ヒヨン元大使は『台湾断交回顧:中華民国レポート1990~1993』(図書出版ソニン)と題する549ページにのぼる「レンガのような本」を世に送り出した。タイトルに「回顧」という単語があるうえ、「中華民国と外交関係を断絶してからもう30年になる」という文から始まるが、この本を回顧録と呼ぶのは難しい。むしろ韓国と台湾の断交を扱った専門研究書であり、1次文献と証言を丹念に集め、体系的に整理した膨大な資料集かつ文献リストに近い。「外交官の仕事は基本的に毎日読んだり聞いたり話したり書いたりすること」と考えてきた彼の詳細な記録、長年の資料収集、研究が土台となっている。

チョ元大使の近著『台湾断交回顧:中華民国レポート1990~1993』//ハンギョレ新聞社

 韓国が中国と手を組むために「新しい友人ができたからといって昔の友人を捨てるのは、東洋の倫理にそぐわない」と述べた盧泰愚(ノ・テウ)大統領(当時)の約束を捨て、事前通告もなく台湾の手を冷たく振り払った1992年、彼は在中華民国韓国大使館の1等書記官だった。1979年に外交部に足を踏み入れているから、10年以上の経歴を持つ実務者だった時だ。しかし、なぜ彼は外交官としての代表的な履歴と言える外交部報道官、スウェーデンやカナダの大使だった時代ではなく、30代の実務外交官時代の経験を「回顧」の対象にしたのか。

 「中華民国という国とやさしい友人たちはいつも心の片隅にあり、何か彼らに心の借りがあるという感じを消すことができなかった」と彼は本に書いている。台湾(の人々)に対する「心の借り」は、外交官として生きてきた「個人チョ・ヒヨン」に執筆を迫った最も強力な原動力だ。

 しかし、それがすべてではない。「退職外交官チョ・ヒヨン」がかすむ目をこすりながら敢えてこの本を書いたのは、台湾との断交の過程が「韓国外交の慢性病」を省察するための反面教師だと考えたからだ。

 「断交当時、実務外交官だった私が受けた衝撃は、言葉では表現できないほどでした。組織に対する裏切られたという思い、韓国外交に対する懐疑のせいで、『このような外交官生活を続けるべきか』と悩んだほどです。台湾の人々はどんな思いだったでしょうか。韓国と台湾の間に航空便が再び行き来するのに断交から12年もかかったほど、台湾の人々は大きく傷ついたのです」

 台湾は韓国の断交に対する報復として航空便の相互運航を中止した。韓国-台湾の定期路線の復活は、韓国国籍機が2004年12月、台湾国籍機が2005年3月になってからだ。断交の翌年には非公式な関係の樹立に合意し、互いに代表部を設置・運営(在台北韓国代表部は1993年1月、在韓台北代表部は1994年1月)しているが、それからさらに10年の歳月が必要だったのだ。それだけ心のしこりが大きかったことを示す傍証だ。

36年間外交現場を渡り歩き7年前に退職 
在中華民国大使館時代に断交を経験 
先日、研究書『台湾断交回顧』を出版 
「1次文献・証言がぎっしり詰まった資料集かつ文献リスト」 
「台湾に対する心の借りの意識が執筆の原動力 
断交の際、中華民国に対する尊重と配慮が大きく欠如」

 チョ元大使が問題視しているのは、「韓国-中国の国交正常化、韓国-中華民国の断交」そのものではない。「断交という(避けられない)選択というより、断交の過程で中華民国に対する尊重と配慮が大きく欠け、それまでに築いてきた共通基盤を破壊した」こと。一言で言えば「歴史に対する理解と戦略がなかった」ということだ。彼は、憲法前文に「法統を継承」すると明示されている「大韓民国臨時政府」が、日帝に立ち向かえるように積極的に支援した国こそ、ほかならぬ中華民国だったことを忘れてはならないと重ねて想起させる。しかも台湾は韓国にとって第5位の貿易相手(2020年現在)であり、「トランスジェンダーの長官がおり、女性議員が40%を超える、民主主義とガバナンスの面ではオランダやベルギーと肩を並べる強小国」だ。

 何より彼は「外交は『ゼロサム』ではない」と繰り返し強調する。彼にとって「外交」とは、「結局は、相手国との共通基盤を拡大し、懸案を解決する作業」であり、「その過程では相手の立場から考え、最大限尊重し、細心の配慮をするという姿勢が欠かせない」のだ。

 彼が問題視する韓国外交の「慢性病」とは次のようなものだ。「大国のいくつかと北朝鮮中心の外交を展開しているため、他の主要国や中小国との蓄積された交流と協力の実績を十分に活用できていないうえ、相手国に対する時宜にかなった配慮と投資を疎かにしているため、結果的に大国との関係はもちろん、ほとんどの二国間関係においても質的変化をまともに実現できずにいる」。政府はもちろん、多くのメディアや専門家が米国、中国、日本、ロシアの朝鮮半島周辺4国と北朝鮮にばかり主な関心を向けている現実に対する言葉のように聞こえる。

 では「外交官チョ・ヒヨン」が現在と未来の韓国外交に伝えたい言葉とは。一つ目に、「世の中に重要でない国はない」。二つ目に、「外交の現場と実務ラインで集めたものが外交においては最も重要だ。このような底辺の過程なしには、上からは御大層なものは出てこない」

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1039927.html韓国語原文入力:2022-04-21 18:17
訳D.K

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