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[インタビュー]トリマー資格試験で追い出された韓国の障害者、差別を断ち切る

登録:2022-04-20 10:24 修正:2022-04-20 11:40
ペットスタイリストのパク・ソンヒさん 
出産後、29歳で後天的聴覚障害 
国家資格証試験場から追い出された後、 
人権委に陳情…拒否条項を削除 
「うまく聞こえないだけで、動物とのコミュニケーションには問題ない」 
私が資格を取って、やりたい仕事をすれば 
また誰かが勇気を得られるかもしれない」
聴覚障害者のペットスタイリスト、パク・ソンヒさんが今月15日午後、京畿道烏山市の自分のペット美容店で本紙とのインタビューに答えている=烏山/キム・ミョンジン記者

 「毛がだいぶ伸びたね。きれいに切ってあげる」

 トリマー(ペット専門の美容師)のパク・ソンヒさん(44)が、客の預けたプードルを慣れた手つきで抱き上げると、見知らぬ人をしばし警戒していたプードルはたちまち尻尾を振った。聴覚障害者であるパクさんは今年2月、国家公認のトリマー資格証である韓国愛犬協会(協会)の「ペットスタイリスト」2級を取得した。障害者という理由で資格証実技試験場から追い出されてから、ちょうど1年たった。紆余曲折の末にトリマーの公認資格証を取ったパクさんは、今月11日、京畿道烏山市(オサンシ)にペット美容ショップ「ドッグミニョン」をオープンした。

 15日、ここで本紙とのインタビューに応じたパクさんは、「ついに夢を叶えた」と明るく笑った。パクさんは後天的障害者だ。昨年、人工蝸牛手術(耳の内側・外側に装置を取り付け音の刺激を電気信号に変換して音を聞かせる手術)を行った。今はゆっくり会話すれば、コミュニケーションが可能だ。

 「すみません。障害者は試験を受けることができません」。昨年2月、パクさんはペットスタイリスト資格証の実技試験場で障害者登録証を取り出し、試験監督に注意事項を尋ねたところ、受験資格を失った。

 パクさんは筆記試験は問題なく通ったと説明したが、監督官は「当時、間違いがあったようだ」とし、退室するよう言った。言葉を文章に変換するアプリを通じて状況を把握したパクさんは、カバンを持って試験場から出なければならなかった。試験公告にはこのような内容はなかった。協会のホームページにだけ「障害者は試験受験資格がない」と書かれていた。

 長い間夢見て準備した仕事ができなくなったパクさんは、「絶望的な気分だった」と話した。「試験場から出て大泣きしました。私はどうして障害が生じて、こんな扱いを受けて生きなきゃならないのか、生きたくない、という気さえしました」

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「非障害者の仕事の中には障害者でもできることが多い」

 パクさんは出産の過程で難聴が生じ、29歳で後天的に聴覚障害の判定を受けた。補聴器を着用しての日常生活は可能だったが、聴力が下がり続け、言葉の正確な意味を把握できないことが多くなった。聴覚障害が生じる前から結婚式のヘアメイクの仕事をしていたパクさんは、客とのコミュニケーションの問題のため、他の仕事を考えるようになった。自分で愛犬の毛を整えてあげながらペット美容に興味を持つようになり、専門学校に登録して資格試験を準備した。

 パクさんは試験受験を拒否された後も挫折しなかった。昨年2月、国家人権委員会(人権委)に陳情を出した。ニュージーランドにいた知人も「ここでは片足に義足をした体育の先生もいる」と激励してくれた。「私によって変化が生まれて、他の障害者の人たちは不合理な目に遭わなければいいと思いました。私が資格証を取ってやりたいことができるようになれば、これを見てまた誰かが勇気を得るかもしれませんし」

 昨年3月、障害者団体「障害の壁を取り壊す人々」も同様の内容の陳情を提起した。団体が人権委前で記者会見を開いた昨年3月23日、パクさんは人工蝸牛手術をした。耳の中に装置を入れなければならない手術なので長い間悩んでいたが、「もっとよく聞きたい」と思ったからだ。

 協会は人権委での記者会見の翌日、パクさんにメールを送り、「差別になり得ることを認知できなかった」とし、関連規定を削除すると明らかにした。同年5月、人権委関係者とパクさん、協会側が会い、規定削除などを書いた合意書を作成した後、人権委の陳情は合意終結処理された。試験を受けられるようになったパクさんは、昨年6月にペットスタイリスト3級、今年2月には2級に合格した。

 パクさんは「人よりうまく聞くことはできなくても、ペットとのコミュニケーションは誰よりもうまくできる」と笑った。トリマー試験を準備して仕事を始めたこの1年あまりの間に、犬を傷つけたり噛まれたりしたことは一度もないという。「人の言葉を聞きとるのが少し不便なだけで、動物たちとコミュニケーションすることには全く問題ありません。私が可愛がっていることが、動物たちにもわかるみたいです」。夢見てきたペット美容ショップを開いた後、パクさんはいつも一日がわくわくしているという。「マンション25棟に一人でビラを配りましたが、疲れるよりはわくわくしました。やりたかったことができて幸せ」

聴覚障害者のペットスタイリスト、パク・ソンヒさんが今月15日午後、京畿道烏山市の自分のペット美容店で本紙とのインタビューに答えている=烏山/キム・ミョンジン記者

 障害が生じて改めて、世界が非障害者中心に回っているということを全身で感じたというパクさんは、「障害者と非障害者を完全に別の集団とみなさないでほしい」と訴えた。「字幕のない生放送は見られないということをはじめ、障害者が経験する様々な不便さを知りました。オンライン・オフラインの空間で、非障害者だけを市民として扱うような(障害者に対する)嫌悪を見ると、「誰でもいつでも障害者になりうるのに」と思います。非障害者ができることの中には障害者でもできることが多いということを、人々に分かってほしい。また、この問題で悩んでいる障害者には、勇気を出してみようよと伝えたいです」

キム・ユンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1039518.html韓国語原文入力:2022-04-20 02:40
訳C.M

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