「昨年11月、国立中央医療院の記者懇談会の時に、保健福祉部が重症患者病床は200~300床あると言いましたが、福祉部から院長たちに電話をするんです。『そちらの病院の集中治療室の病床はいくつ可能ですか?』『20床です』それを(そのまま)書き込んで(合算して)発表しました。私たちは現場で重症患者を毎日(他の病院に)送らなければなりませんでした。ここで総括したんです。実際に(病院に)聞くと、あと10床しか残っていないんです、首都圏全部合わせて…」(国立中央医療院の管理者)
この2年間、新型コロナウイルス感染症対応の最前線にいた国立中央医療院(NMC)が、5カ月の研究の末に最近まとめた「新型コロナ対応総括白書」に示された病床不足の実態だ。本紙が26日に単独入手した白書には、新型コロナと関連した国家の医療対応体制の成果と限界、提言などが盛り込まれていた。特に、国立中央医療院の関係者23人と外部の政策決定者などを網羅した計27人と面談した「新型コロナ対応評価研究」の部分を見ると、政府がすでに1年前に病床不足の原因を把握していながらも根本的な対策を講じなかったため、先月の段階的な日常回復後に繰り返された病床不足の事態を招いたという指摘は避けられないようだ。
韓国の病床は他の先進国に比べて過剰供給されているとはいえ、全病床の約90%を民間医療機関が占めており、公衆保健危機の状況下で政府が動員できる病床は非常に限られている。白書で言及された国立中央医療院の医療スタッフの話は、「公共医療体制脆弱国」である韓国の医療対応体制の限界を明確に示している。
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民間病院、空き病床の支援を受けながらも…「重症患者を受け入れないために言い訳」
「中央事故収拾本部から(コロナ病床が必要だと)連絡しても、4~5日経っても(民間病院は)返事をしない。(政府は民間病院の新型コロナ)重症患者用病床をすでに確保しており、病床を空けている状態でそこ(病院)に補償金を渡し続けているが、(民間病院は金だけ受け取って)実際には(患者を)受け入れない」「『うちの病院は(コロナの)重症患者を治療しなければならないから(重症でない患者を)受け入れられない』と言い、いざ重症患者を依頼すると『重症患者の割合が高すぎて患者を受け入れられない』などの理由を挙げて患者を受け入れない」。このため、全体の病床の約10%にしかならない公共病院がコロナ患者の約90%を担当するという悪循環が繰り返されてきた。白書はこうした事例を挙げ、「ほとんどの民間病院は病床不足の危機的状況で新型コロナ患者の診療に非常に消極的で、政府は損失補償金の支援と一部の病床に対する行政動員命令以外に民間病院を統制する手段がほぼなかった」と評価した。
情報通信技術(ICT)大国の名にふさわしくなく、病床や医療スタッフの情報が体系的に管理されていないことも、病床危機の一因となっている。使用可能な隔離病床や重症患者病床に投入できる医療スタッフについての情報が体系的に収集されていなかったため、危機的状況でこれを活用することが難しかった。国立中央医療院の関係者らが「政府が公式に発表した(新型コロナ)病床数と、実際に使用可能な病床数が異なっていた」、「必要な情報が整理されておらず、総括する人もいなかったため、重症患者の看護師に対する分布を把握する機関がなかった」などと評価したのもこのためだ。
民間病院の責任回避とこれに対する政府の管理体制の不備で病床不足問題が深刻化したが、民間病院所属の専門家の意見が過大に代表され、公共病院に負担を集中させる形で病床対策が打ち出されたという不満も提起された。白書は「国内のコロナ患者診療はほとんどが公共病院で行われたが、医療に関する政策決定には私立大学病院の教授個人や、彼らが多数を占める学会の意見が過大に代表される傾向があった」と書いた。これは「実際の患者診療の経験、公共病院の厳しい環境が政策にきちんと反映されにくい状況に寄与」し、「専門家個々人を動員する方式だったため、意思決定の責任を明確に問うのも難しい構造」だったということだ。コロナ医療対応を総括した国立中央医療院は、新型感染症中央臨床委員会を設置し、入退院および診療指針などを提案したが、正式な地位は認められなかった。
劣悪な新型コロナ医療体制だが、それでも27人の面談者が選んだ主な成果の一つは、国立中央医療院が新型コロナではない一般患者、特に脆弱階層の必須医療をあきらめなかったという点だ。国立中央医療院は必須の医療供給を担当する「国家中央病院」として、中東呼吸器症候群(MERS)や新型コロナのような感染症患者以外にも、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者やホームレスなどの脆弱階層を治療する役割を果たしてきた。医療スタッフのBさんは白書で「一番問題になる患者はホームレス、外国人など診療費の償還能力がない患者」だとし「この患者たちは本当に転院が難しく、そのような(患者を受け入れてくれる)病院は非常に極少数」だと話した。このため白書は「MERSとは違い、病院全体を完全には空けず、非コロナ患者に外来と入院サービスの提供をある程度維持した決定」を非常に重要な成果として挙げた。
そのような点で、24日に国立中央医療院やソウル医療院など主要な公共病院の病床を空け、新型コロナ患者だけをケアする専門病院に指定するという政府の方針は、一般診療の空白に対する懸念を抱かせる。白書は「現在は病床確保の指針が下されると、患者の転院に関する全ての負担を公共病院が抱えることになる」とし「初期の混乱が解消した後は、病床の大部分を占める民間医療機関も役割を果たせるようにすべきであり、(長期的には)何より全体の医療資源のうち公共病院の役割と比重を増やす『体系としての公共性』の強化戦略が必要だ」と指摘した。
チョン・ギヒョン国立中央医療院長はエピローグで「もうすぐ新規感染者1万人、2万人という時代が来るだろう」とし「無条件の遮断と隔離、そして(病院数基準で)全国の5%にすぎない公共病院をむやみに搾取することでは、予測可能で持続可能な公衆保健危機対応はできない」と明らかにした。