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[ルポ]韓国、崩壊した患者搬送システム「10カ所の病院が拒否…結局家に帰した」

登録:2021-12-15 09:18 修正:2021-12-15 12:47
新型コロナ 救急隊員が語る最前線 
病室不足→救急車が長時間待機→再び家へ 
「病院を調べると言った保健所からは連絡もない…」 
患者搬送・治療に対する「信頼崩壊」が大きな問題 
一般の重症患者も病院を探してたらい回しに
新型コロナの重症患者が900人を超え、病床不足による患者搬送システムに加重負担がかかっている。今月14日午後、ソウル恩平区の市立西北病院で119消防隊員たちがコロナ患者を病棟に移している=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 「来ないでくれと言ったのにどうして来たんですか! うちも病室がないんです!」
 「どうすればいいんですか。他からも来るなと言われているのに」

 忠清エリアで消防救急隊員として10年間勤務してきたAさんは、最近患者を病院に搬送するたびに、医師とぶつかる場面が多くなった。「ソウルや首都圏じゃなくても患者が急増しているのを実感します。とても困ったことに、熱が37度を超えただけでも病院では患者を受け入れてくれないんです。連絡すれば来るなと言われて。患者を病院で受け入れてくれなければどこにも連れて行けない。救急車の中で何時間も待つ場合は数え切れないほどです」

 政府が新型コロナウイルス感染者の急増に関連し特段の対策を検討している中、患者-保健所-消防救急隊員-病院とつながる医療システムが限界に達している。患者の搬送の最前線で毎日戦っている消防救急隊員たちは、医療システムの崩壊とともに「信頼崩壊」状態に至っていると訴える。

 「119に電話してくる人たちは、すごく攻撃的で怒っているんです。理由を聞いてみると、数時間我慢して保健所の『病院を調べている』という言葉を信じていたけれど、それが1日たち、2日がたったら受け入れるわけにいかないでしょう。国民の立場からすれば、政府の指針で病院を手配する段階が崩壊しているんです。信頼を失ったということです。今はこの信頼が失われたことが最大の問題です」(京畿道西部地域の消防救急隊員Bさん)

 14日午前0時現在、病床待機者は1481人に上る。在宅治療患者は2万5846人。今月5~11日の間に、病床不足のため病院に搬送できずに命を落とした患者は17人だ。

 病床不足で患者の搬送システムは文字通り崩れている。病室が足りないため病院では患者を受け入れられず、患者を搬送する救急隊員は病院を探して道路で時間をむだにし、結局患者を再び家に戻すという状況だ。首都圏から光州(クァンジュ)や慶尚北道の栄州(ヨンジュ)まで患者を搬送したケースもあるが、それでも病室を見つけることができれば運がいい方だ。Bさんは「最近の患者激増の前には、保健所が手配するのに3~4時間かかったとしても、地域が遠くても病院は手配できた。でも、今は3~4日かかることもある。患者が我慢できないのは当然の状況」と述べた。京畿道の別の救急隊員のCさんも「以前は病院に待ち時間を聞くことができた。だが今はそれさえも確認が不可能だ」と語った。

 病院は、新型コロナの症状がある場合、隔離室を通じて患者を受け入れて検査する。ここで感染患者が増えることで隔離室を消毒するのにも長い時間がかかり、ただでさえ足りない隔離室はさらに減る。病院ごとにコロナ患者を受け入れる基準も一定ではない。咳、痰、のどの痛み、呼吸困難など、明確な呼吸器症状のある患者とは違い、腹痛、頭痛、下痢、筋肉痛などに対しては病院ごと、当直医ごとに判断が異なるという。ソウル地域の救急隊員のDさんは、「だから相対的に基準が緩い病院に患者が集中し、その病院の混雑度が高まり、結局すべての病院が先を争って基準を上げるという状況になる」と話した。「同じ病院、同じ症状なのに、先週受け入れた患者を今週は受け入れないという状況が発生する」とDさんは述べた。

 新型コロナと関係のない一般患者も危険な状況だ。ソウルのある救急隊員のEさんは「呼吸困難の激しい患者が病室を見つけられず、救急車の中だけで待機する状況が発生する。救急車の酸素ボンベには限界があるので、ほかの救急車が酸素ボンベを持ってくるのを繰り返しながら数時間待つこともある」と言う。「待ち時間が長くなると患者に心停止が来るのではないかと不安になる」とEさんは話した。

 重症患者にはこのような状況はもっと過酷だ。病室を見つけられない重症患者の家族が、心肺蘇生を止めてほしいと求めたことまである。Bさんは「慢性疾患を患っている70代の患者に心肺蘇生をしながら搬送した。『積極的に助けてほしい』と頼んでいた家族が、10カ所以上病院で断られるのを見て『もうこのまま家に戻してほしい』と言った。こういうことがよくある」と話した。患者は死亡した。病院も「限界に達した」と訴える。コロナが疑われる重患者が発生した場合、地方自治体の保健所に病床を申請し、119番を呼ぶように言うしかないという話だ。

 新型コロナ患者の搬送時間が長引くことで、一般の救急状況にすばやく対処する能力は顕著に低下した。ソウルの救急隊員は、「救急患者には1分1秒が重要。救急車にコロナが疑われる患者を乗せれば30分、感染確定者なら1時間消毒する。病院に行くまでの時間を合わせると、3時間ほど救急車が出動できなくなる」と話した。この場合、他の地域の救急隊が出動することになる。その分出動距離が長くなり、時間がかかることになる。救急隊員らは「心停止患者などの場合、出動からゴールデンタイムの5分を確保できないこともある」と懸念を表した。

イ・ジュビン、パク・ガンス、キム・ユンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1023351.html韓国語原文入力:2021-12-15 07:11
訳C.M

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