米国のジョー・バイデン大統領は、就任するやいなやドナルド・トランプ前大統領が脱退したパリ条約への再加入を宣言するとともに、ジョン・ケリー元国務長官を米国の気候特使に任命するなど、「気候変動大統領」であることを内外に示した。彼にとってグラスゴーでの国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP26)は、国際社会において自らと米国の地位が評価される試金石となるが、米国内ですらグリーン予算の処理が難航するなど、乗り越えるべき山は多い。
世界1位の温室効果ガス排出国である中国の習近平国家主席は、昨年9月の国連総会でのオンライン演説で、2030年までに炭素排出のピークを越え、2060年までに「炭素中立(カーボンニュートラル)」を達成すると宣言した。しかしこうした目標を具体化した2030年の「国が決定する貢献」(NDC、温室効果ガス削減目標)の提出は先送りしている。今回の総会に習主席ではなく王毅外相が出席することが伝えられたことで、中国の「独自路線」は固まるだろうと懸念されている。国際エネルギー機関(IEA)の資料によると、2019年の中国の燃料燃焼部門の二酸化炭素排出量は約99億トンで、世界の排出量の29%を占めた。47億トンの米国の2倍、30億トンの欧州連合(EU)全体の排出量の3倍を超える規模だ。
そのうえ、天然ガス価格の高騰で世界がエネルギー難に見舞われたことで、化石燃料への依存度が高まるという逆説的な状況が起きている。こうした中で米英から「石炭削減」を迫られている「親化石燃料」諸国の遅々とした歩みが、気候危機への対応の足を引っ張っていると指摘されている。
中国の習主席だけでなく、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も出席しないという。石炭輸出で世界第2位のオーストラリアのスコット・モリソン首相は、無理やり呼ばれている格好だ。インドのナレンドラ・モディ首相が2030年のNDCを発表すると伝えられているが、これも大きな期待はできない状況だ。石炭火力発電への依存度が高すぎるため、具体的な計画は出せないだろうと懸念されているからだ。
サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの産油国のカーボンニュートラル宣言が相次いでいることは喜ばしいが、依然として具体的な削減計画は不十分だ。このため、COP26の議長国である英国のボリス・ジョンソン首相すら「今回の首脳会議は非常に厳しいものになると思われるが、下手をすれば失敗する恐れがあるのでとても心配だ。我々が必要とする合意を得られない可能性もある」と発言するほどだ。今年の会議を振り返った時、「気候悪党」は誰になるのだろうか。