カン・ギョンファ前外交部長官が、国際労働機関(ILO)事務局長選挙に出馬した。カン前長官が当選すれば、ILOの103年の歴史で初の女性事務局長となる。
外交部と雇用労働部は1日、報道資料を発表し「駐ジュネーブ代表部を通じてILO事務局にカン候補者の登録書類を提出した」と、カン前長官が立候補したことを伝えた。1919年に設立され、世界の労働者の基本的な労働権の保障の先頭に立ってきたILOは、187の加盟国を持ち、国際機関では唯一の政労使3者機関だ。
カン長官以外に、この日までに候補登録を済ませたのは4人。中でも最も目立つのはオーストラリアのグレッグ・バインズ現ILO事務局次長だ。同氏はこれまでにオーストラリア公務員労組の指導部やILO理事会議長を務めている。同氏は1980年代に労働現場に入り、政府官僚まで歴任した「労働界」の人物だ。フランスのミュリエル・ペニコ現OECDフランス代表部代表もかつて労働相を務め、カン長官と同じく女性候補だ。南アフリカのムトゥンジ・ムアバ国際使用者連盟(IOE)理事は過去にILO使用者グループの報道官を務めており、ジルベール・ウンボ国際農業開発基金総裁はトーゴの首相を務めた。
カン前長官は、労働問題を直に扱った経験はないが、国連人権高等弁務官事務所の副代表や国連事務総長政策特別補佐官を務めるなどの10年にわたる国際機関での経験に加え、3年8カ月にわたって外交部長官を務めたため、国際社会での認知度は比較的高い。政府は「カン候補者は、韓国政府および国連内での長年の様々な経験にもとづき、コロナ禍での雇用回復や経済危機の克服、政労使3者主義を通じた共生と連帯の精神の拡散など、ILOの最重要議題を主導するリーダーシップ、資質、力量を備えていると評価される」と述べた。そして「これまで国際舞台において開発途上国支援および女性の人権の保護に努めてきたカン候補者の経験と専門性を生かし、女性を含む世界の脆弱な立場にある労働者などに対する差別の解消と暴力やハラスメントの根絶、コロナ禍における共存と包容的回復などにも大きく貢献するだろう」との期待を表明した。加えて、カン前長官が当選すればアジア初、かつ初の女性ILO事務局長が誕生するとし、「省庁横断的なタスクフォースを設置し、カン前長官の立候補活動を積極的に支援する計画」と明らかにした。
今年2月に退任したカン前長官はその後、梨花女子大名誉碩座教授に任用されており、国連女性機関(UN Women)で役割を担うとの観測も流れていた。
ILO事務局長選挙は、来年1月頃と予想される候補者に対する公開聴聞会と、理事会の構成員のみが参加する3月中旬の非公開聴聞会を経て、3月25日の理事会で投票が行われる。投票には28カ国の政府の代表と、各14人の労働者・使用者代表の計56人が参加する。過半数の票を得た候補が当選し、過半数の得票者がいなければ、最下位の得票者を除いて再投票を繰り返すことで当選者を決める。
当選者の任期は5年で、ILO史上、唯一労働界の経歴のみで事務局長の座に就いたことで話題となった英国出身のガイ・ライダー現事務局長の任期満了直後の来年10月1日からとなる。